インフルエンサーの推奨が効果を持つ商品ジャンルとは?
2018/09/13
生活者の購買行動や企業のブランド形成において高まり続けるインフルエンサーの存在感とそのビジネスポテンシャルを背景に、電通はインフルエンサーに関する受容性調査を行いました。本連載では、4回に分けてそのリサーチ結果を各担当者が紹介していきます。
インフルエンサーを活用したプロモーション手法は先進的な取り組みとして活性化していますが、まだそのポテンシャルに見合った広がり方をしていないとも感じます。このマーケティング施策の有効性の理解が、この連載を通じて深まればと思います。
第1回は、俯瞰的な視点から、インフルエンサーをめぐる社会的な理解、一般的なコミュニケーションの効果などについて論じていきます。
<目次>
▼「インフルエンサー」のコミュニケーション効果について
▼ユーチューバーやインスタグラマーの影響力の差異
▼商品ジャンル別の購入寄与率
▼インフルエンサーとブランドは「すみ分け」ている
「インフルエンサー」のコミュニケーション効果について
スマートフォンの普及とともに誰もが何かをシェアするようになり、写真や動画を活用した有力な発信者が数々現れるようになりました。ユーチューバー、インスタグラマーなど近年注目されるようになった存在はその筆頭でしょう。インターネット上で影響力を持つ彼・彼女たちは、総じて「インフルエンサー」と呼ばれています。
今回実施した調査(概要は文末)の対象者はインフルエンサーへの関与が高い人々であることは考慮するべきだとしても、10~40代に総じて強い影響力を持っていることがポイントです。
さらには、世代差も如実に表れており、特に若年層ほどその影響は大きくなる傾向が認められました。上記設問を7段階で聴取した際、TOP3(とてもあてはまる、あてはまる、まああてはまる)の回答を行った人の割合をまとめたのが図1です。青色のマーキングは全体平均よりも5ポイント以上低く、反対に赤いマーキングは全体平均よりも5ポイント以上高いことを示します。
最もそのスコアが高く出た10代女性の回答傾向を見てみると、インフルエンサーが紹介した対象について、「身近さの醸成」から「商品購入」に至るまで、各パーチェスファネルのどこにおいても8割前後がインフルエンサーから大きな影響を受けているようです。
男性全体では身近さの醸成が78.0%、ブランド好意形成が77.4%、商品購入意向の醸成が75.8%、商品購入機会の増加が71.3%となっています。総じて最もスコアの低かった40代男性は、左から76.0%、73.5%、68.0%、68.0%となっており、購入意向の醸成から購入機会にかけ落ち込みが目立つ結果となりました。
なお、インフルエンサーに好意的な人々(インフルエンサーファン)のボリュームを人口構成比に直すと図2のようになります。若年層ほどその世代の人口に対する割合が大きいことが見て取れます。
ユーチューバーやインスタグラマーの影響力の差異
今回の調査では、今注目されるユーチューバー、インスタグラマーの影響力を確かめるべく、テレビタレント、ユーチューバー、インスタグラマーのうち、どの人たちが生活者に影響を与えているかを性年代別で比較しました。その結果をまとめたのが図3です。
全体としては第1位:ユーチューバー(30.4%)、第2位:テレビタレント(29.9%)、第3位:インスタグラマー(16.3%)という順位になっており、ユーチューバー≧テレビタレント>インスタグラマーという結果を得たことになります。
またここでの特徴として、男性はユーチューバー、女性はインスタグラマーにより影響を受けやすい傾向があるということが分かりました。特に女性20~30代にとって、インスタグラマーは強い影響源となっています。
なお、このスコアは、厳密な意味でのそれぞれの人気の多寡を示している(テレビタレントよりもユーチューバー!)というわけではなく、むしろ世の中での言葉としての勢い、社会記号としての強さを表していると捉えるべきものであることを注記しておきます。
商品ジャンル別の購入寄与率
インフルエンサーの情報発信は、その人自身のライフスタイルの紹介やトレンド情報の拡散といった意味合いを超えて、人々の購買行動にも影響を与えるようになっていることを先ほど論じました。では、そのようなインフルエンサーの推奨はどのような商材であればより効果的になるのでしょうか。
図4の縦軸は「インフルエンサーの投稿を参考にする商品の割合」、横軸は「インフルエンサーの紹介していた商品の購入経験の割合」を意味しており、各商材ジャンルがどこにマッピングされるかを示しています。右上にいくほどインフルエンサーの投稿が参考にされ、実際に購入にも結び付いている商品ジャンルということになります。
結果を見ると、メイクアップ、スキンケア、ボディーケアといった女性に人気の商材が上位を占め、またスマホアプリのような若年層向けに人気の商材も目立っており、アパレルやレストラン、グルメといったジャンルがそれに続きます。インスタグラムではファッション、ビューティー、フードが強いといったメディアの性質もここには関連しているでしょう。
一方で高額商品や購買に検討を要する商材については、インフルエンサーと掛け合わせる上で工夫が求められる商品分野だといえそうで、今後のこの分野のさまざまな環境変化や施策のトライアルにも注目しておく必要があります。
インフルエンサーとブランドは「すみ分け」ている
先ほどの図表4にも表れていたように、インフルエンサーの推奨が効力を持ちやすい分野は以下のようになります。
「インフルエンサーの発信」をかなり参考にするもの
第1位:メイクアップ製品(28%)
第2位:スキンケア製品 (28%)
第3位:スマホアプリ (26%)
第4位:ボディーケア製品(26%)
第5位:ヘアケア製品 (24%)
※TOP2回答の合計その一方で、企業/ブランドが発信する情報を参考にするジャンルもあり、おおむね、スペックが選択の重要性を占めるジャンルといえそうです。
「ブランド公式サイト・アカウント」をかなり参考にするもの
第1位:自動車 (36%)
第2位:生活家電 (34%)
第3位:デジタル家電(32%)
第4位:情報デバイス(31%)
第5位:ホテル・旅館(29%)
※TOP2回答の合計
個別のジャンルから俯瞰して、インフルエンサーとブランドのコミュニケーションを対比させてみると、以下のような結果を得ることができます。
・インフルエンサーの投稿を信頼する :37%(計)
・どちらともいえない :29%
・メーカーやブランドの投稿を信頼する :35%(計)
※同じ商品・サービスについて、インフルエンサーが投稿した場合と、メーカー・ブランドが投稿した場合の信頼度合について聴取
※小数点第1位四捨五入で表示しているため、整数表記では合計が101%となる
このような拮抗した結果は、インフルエンサーマーケティングのソリューションとしての重要性を意識しながらも、私たちはそれが全てを解決する万能策というふうに考えてはならないことを示します(もちろん、それはあらゆるコミュニケーション施策においても同様です)。
高度化・複雑化した今日のコミュニケーション環境においては、統合化されたコミュニケーションプランニングが要請されるため、インフルエンサーだけでは完結させることができず、従来のブランド側からの情報発信も掛け合わせて行うことも依然として大切です。単純な A or Bではなく、A and Bの複層的なバリエーションに向き合うことが、現代のコミュニケーション環境において求められることに他ならないのです。