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インフルエンサーマーケティング2.0No.2

いつものインフルエンサー選択は、間違っている?
~インフルエンサー6タイプと購買行動の関係性~

2018/09/20

第1回では、ユーチューバーやインスタグラマーといったインフルエンサーが、人々の購買行動に強い影響力を持ち、企業のマーケティング手段として着目すべき存在であることをお伝えしました。一方で、一口にインフルエンサーといっても多種多様です。インフルエンサーのマーケティング活用を考えるとしても、どんなインフルエンサーを選べばよいのでしょうか?オリジナル調査で得られた知見を解説していきます。

<目次>
▼インフルエンサー分類の課題
▼三つの指標「3R」~ファン目線によるインフルエンサーのタイプ分け
▼インフルエンサー6タイプの特徴
▼タイプによって異なる購買行動への影響力
▼インフルエンサーはリーチより人柄

インフルエンサー分類の課題

インフルエンサーマーケティングについて検索すると、インフルエンサーのさまざまなタイプ分類を見ることができます。

例えば、「メガインフルエンサー」「マイクロインフルエンサー」などは、フォロワー数による影響力のタイプ分け。いわばインフルエンサーをメディアとして捉え、どれくらいリーチできるのかの量的判断の目安になっています。

また「ジャンル特化型」「オピニオン型」「有名人型」「クリエーター型」など、発信の内容や当人の属性によるタイプ分けもよく見かけます。こちらは、インフルエンサーをコンテンツとして捉えていて、自社ブランドとの相性など質的な判断の材料になるでしょう。

これらのタイプ分けからは有益な示唆を得ることができますが、いくつかの課題はあると考えます。

これらインフルエンサーの中で、購買行動への影響力が高いのはどのタイプなのでしょうか?インフルエンサーをマーケティングに活用するのであれば、これらタイプの違いが実際の購買行動へどのように影響しているか分かれば、もっと実際的な選定ができるかもしれません。

三つの指標「3R」~ファン目線によるインフルエンサーのタイプ分け

購買行動へ影響を与えるのは、インフルエンサーの“メディア”としての規模なのか、“コンテンツ”なのか、あるいはその両方なのか?を調べるに当たり、Rを頭文字にした三つの指標を設定しました。

1番目は「Reach」(到達力)です。そのインフルエンサーをどれくらい“みんなが知っていて有名”かどうか。2番目は「Relevance」(関連性)で、“世界観が自分に合う”かどうか。3番目は「Resonance」(共鳴)は“人柄がよい・人望がある”かの度合です。

前述の“メディア”視点は「Reach」で押さえ、“コンテンツ”視点は、「Relevance」≒投稿内容の魅力か、「Resonance」≒投稿者自身の魅力かに分けて評価しようという考えです。

そして、この3R評価は、 “インフルエンサーファン”※の目線で行います。インフルエンサーを通じて人々を動かすのであれば、ファンの実際の評価を購買行動への影響とひも付けた方がより実態を把握できるといえるでしょう。

※.調査対象とした“インフルエンサーファン”の条件
・主要SNSいずれかを1日1回以上閲覧
・「インフルエンサー」認知(言葉だけでなく、「なんとなく概念を理解」のレベル)
・「インフルエンサー」のページや動画を週1回以上閲覧している
・「インフルエンサー」の紹介する商品やサービスに興味を持ったことがある

インフルエンサー6タイプの特徴

回答結果を集計した結果、さまざまなインフルエンサーを八つのタイプに分類できました。

ここでは主要な6タイプの特徴について説明いたします。具体的なインフルエンサー名は割愛しますが、あなたの好きなインフルエンサーはどのタイプか想像してみてください。

タイプ①
Reach突出型 構成比15%

イラスト:西村太一(電通)

チャンネル登録者数が数百万に達するインフルエンサーです。投稿内容は若者向けの「やってみた系」の投稿が多いです。同じタイプ同士でコラボし、さらにリーチを拡大する試みもよく見られます。

タイプ②
Resonance突出型 構成比9%

タイプ② Resonance突出型 構成比9%

私生活、家族、友人、方言など、素の自分を生かした体当たり的投稿が特徴のインフルエンサーです。その飾り気のない素朴な姿勢が、人柄の良さをにじみ出し、フォロワーを引きつけていると考えられます。

タイプ③
Relevance突出型 構成比28%

タイプ③ Relevance突出型 構成比28%

ファッション、メーク、ゲームなど、専門分野を持ったインフルエンサーです。中にはその分野のオピニオンリーダーとして活躍する人もいます。強みを生かした独自のセンスやノウハウでフォロワーをけん引しています。

タイプ④
Reach×Resonance型 構成比7%

タイプ④ Reach×Resonance型 構成比7%

マスメディアでの有名人、動画投稿で有名になった人、両タイプが混在しています。豊かな感情表現や子どもにも分かりやすい話し方が特徴的です。①と遜色ないフォロワー数の大物インフルエンサーも含まれます。

タイプ⑤
Relevance×Resonance型 構成比14%

タイプ⑤ Relevance×Resonance型 構成比14%

家電、ヘアメイク、勉強など独自のテーマ特化型の投稿が多いです。②と似ていますが、家族や友人などを巻き込んだ投稿も多く、より親しみが感じられるのが特徴です。

タイプ⑥
Reach×Relevance型 構成比12%

タイプ⑥ Reach×Relevance型 構成比12%

有名人でクセのあるインフルエンサーが多いです。トレンドリーダーとしての一面と、ギャップ感(本業と家庭、おしゃれさとオタク性の共存など)が特徴です。専門性だけではなく、強い個性が人々を魅了しているといえるでしょう。

タイプによって異なる購買行動への影響力

では、これら6タイプと、購買行動への影響を見ていきましょう。

赤線部は、インフルエンサーが投稿したモノに対して購買行動が喚起されるかどうかの質問。興味関心→調べる→購買といったファネルに応じた影響の有無を質問しています。数値は、回答者が肯定した割合です。特に高いところに赤のハッチングをかけました。

ご覧のようにタイプ④⑤⑥がいずれの質問でも高い値を示しています。突出型よりも「Reach」「Relevance」「Resonance」いずれか二つの要素が組み合わさった“複合型”の方が、購買行動への影響力が強いといえます。

次いで青枠は、企業のPR投稿への抵抗感についての質問です。数値が小さいほど、ファンはPR投稿であることを気にしないことを意味します。青のハッチングをかけました。

ここでは、タイプ②「Resonance突出型」が16.2%と抵抗感を最も感じさせないタイプです。次いで、タイプ④⑤といった、「Resonance」が絡んだ“複合型”も抵抗感が少ないです。

インフルエンサーはリーチより人柄

以上の分析を踏まえると、各タイプの性質は図4のように整理できるでしょう。

タイプ③⑥(緑色)はトレンド情報が期待されるインフルエンサータイプ。タイプ③⑤(赤色)は専門分野の情報が期待されるインフルエンサータイプ。タイプ②④⑤は投稿情報より人柄重視で、PR投稿への抵抗感が少ないインフルエンサータイプです。

私が着目したいのは、タイプ②④⑤の「Resonance」系インフルエンサーのマーケティング活用における懐の深さです。

「Resonance」要素が関わることにより購買行動への影響力にも、PR投稿への抵抗感軽減にも良い効果が認められます。

「Resonance」系インフルエンサーはその人柄も合わせてファンとなった濃いフォロワーが集まっています。仮に普段の投稿と異なったPR投稿だとしても、少々のことではがっかりしない、一種の耐性があると考えられます。

逆に「Relevance」系は、フォロワーの関心が明確でターゲットを絞りやすい半面、企業のPR投稿とフォロワーの期待が合致しないと、高い効果が望めません。運用上のデリケートさに留意する必要がありそうです。

インフルエンサーを、購買行動への影響力、PR投稿への抵抗感という、マーケティングの観点で見てみると、一風変わった結論が出てきました。

企業のインフルエンサー選びに際して、インフルエンサーの人柄がファンにどう評価されているか着目する必要がありそうです。


【調査概要】
調査時期:2017年12月~2018年2月
調査会社:電通マクロミルインサイト
調査手法:インターネット定量調査(2017年12月実施)
サンプル構成:15~49歳の全国の男女1600名