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「やらないこと戦略」

DMCラボ・セレクション ~次を考える一冊~No.80

2018/09/28

「やらないこと戦略」

働き方改革では、制度改革や増員など体制面の改革、RPAなどのITによる省力化などが組織として行われていますが、それに加えて個人が一人一人のやり方で改革を行っていくこともとても重要です。

そんな、一人一人の仕事の効率化とパフォーマンスアップの一助となるのが、今回取り上げる「やらないこと戦略 最大限にクリエイティビティを上げる時間管理術」(CCCメディアハウス刊)です。

やらないこと戦略

「やる・やらない」を小さなことから人生の選択にまで当てはめ考える

本のタイトルになったエピソードは第2章にある、時間とリソース管理に関するワークショップで、そこに参加していた女性士官が書き出した戦略です。

「1、2、3、……と、まず優先事項のリストを作る。それから4以降をすべてカットする」(P22)

4以降の「やらないこと」は頭から排除し、優先度の高い三つに集中して時間を使い、結果を出す。

いわれてみれば簡単なことですが、その三つはなにか?を抽出していく手法についても本書では述べられています。そしてこの手法を目の前の小さなやること・やらないことだけでなく、プロジェクト全体、あるいはさらに人生の選択について当てはめていくことで決断を下し人生をより良い方向に変えて行く術とする方法が記されています。
 

また、この考えに沿ったiOS版アプリ“ToDon’tList”が実際に用意され(AppStoreからダウンロード可能)、やるべきこととやらないべきことの管理を実にシンプルな形で実装されています(やるべきこと四つ目を入力すると自動で「やらないことリスト」入り。しかも、3カ月「やらないことリスト」に入りっぱなしの項目は予告なく削除されてしまいます。実にすがすがしい!)。

自分のハッシュタグを作る?

人生の中で重要なことは何かについてさらに考えていくのは続く第3章。

目標の設定の仕方、心からしたいことの見いだし方、自分の一番得意なことと苦手なことを分別し、自分の守備範囲を設定すること。

これらを元に、人生のライフプランを設定していく方法が、チャートを使う形で紹介されています。

特に私の印象に残ったのは、そうして作ったライフプランを実現していく方向に日々の仕事をもっていくために「自分のハッシュタグ」を設定するという考えです。

「自分のハッシュタグ」とは、InstagramやTwitterなどで使うハッシュタグのようなひとかたまりのワードのつながりで自分のしていることを表現するということ。決め方は、

・誰かがあなたの仕事についてSNSに投稿するとする。そこにどんなハッシュタグをつけてほしいか。

・そのハッシュタグは独自のものでありながら、人に理解される一般性もあるか?

(P63)

など、いくつかのチェック項目(具体的にはP66をお読みください)をパスしているか、というもの。

自分のハッシュタグを設定し、判断基準とすることで自分の取り組むべきこと、取り組むべきでないことが明確になり、自分の進むべき方向へ進んでいけるという指標になるということです。

そして、第4章では戦術レベルと言いますか、日々の仕事を進めるのに役立つ実践的な知恵が詰め込まれています。例えば、

SNS投稿をする前に振り返る「だから何?」テスト(P87)

簡潔かつ明確なメールを書くための「5文のメール」(P91)

のように、考え方だけではなく、具体的メソッドが数多く紹介されており、本を読んで分かった気になって終わり、ということになる可能性を下げています。

また、自動化できるものは自動化する(P109)では、Photoshopでのバッチ処理やメールの自動振り分け、IFTTTの活用など、ITカテゴリーでの省力化にもちゃんと触れられています。

この章で納得しつつクスッとしたのは「すみません、これは本当に大切な電話なので……そんなことはない」(P84)、「びっくりマーク(!!)は無視する」(P90)です。これだけで大体お察しいただけると思いますが詳細は本編で。

クリエイティブな人にはなぜ時間管理が必要なのか?

プロジェクトの立ち上げ方、進め方について書かれている第5章。

そのプロジェクトに取り組むべきかについて「それを信じているか」で始まる七つの「するかしないかチェックリスト」を使って判断する方法、進んでいるプロジェクトを継続か中止かの判断の仕方、より良いものにしていくための方法について書かれています。このページはクリエイティブ職、特にデザイン系の人にはかなり参考になるでしょう。

実際、この本のサブタイトル、そして第1章のタイトルが「クリエイティブな人にはなぜ時間管理が必要なのか?」であるように、著者は自分と近い職業の人が読むことを意識してこの本を書いているようです。書中にも「クリエイティブな人は」という表現が繰り返し出てきます。

著者のドナルド・ロース氏は、オランダ王立芸術アカデミー講師、書体デザイナー、起業家であり、映画やテレビ、スマートフォンなど動画のタイトル制作に携わりながら、タイプデザインとタイポグラフィーを教えているそうです。

かく言う私はクリエイティブ系の部署の人間ではありませんが、ほとんどの部分において大いに参考になりました。
 

ここまでご紹介したように、基本的には無駄な仕事の省き方と注力すべきことの選び方、向き合い方についての本なので、クリエイティブ職でないからといって避けて通るべき本ではないのです。また、クリエイティブとクライアントの間に立つ営業の立場でも、同じように向き合い行動すべき場面も多いと感じました。

仕事の選び方や第5章の一部など、すこしだけ(フリーランスの)クリエイティブ職でないと仕事に適用するのはなかなか難しいものもありましたが、それらの中には仕事から離れ、人生の選択肢の判断に適用することができれば、さらに大きな効果をもたらせそうなものが含まれています。

平易で読みやすく、かつ一通り読んでおくと、自然と自分の中で物事を進める時の判断基準を増やすことができるので、お勧めできる本です。

「やらないこと」を上手に見つけ出して、自分の中の働き方改革、もっと推し進めてみませんか?