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AIは、ライバルではなく相棒になる。「10年後の仕事図鑑」

DMCラボ・セレクション ~次を考える一冊~ №79

  • 藤田 卓也

2018/08/31

AIは、ライバルではなく相棒になる。「10年後の仕事図鑑」

もしもAIが普及したら。

どの仕事が無くなるのか無くならないのか。

稼げるのか、稼げないのか。

そんな予測が日々メディアをにぎわせていますが、いやいやちょっと待て。悲観的過ぎやしませんか。職業ってどんどん新しいものが生まれるものだし、変化もする。今ある仕事ベースのゼロサム論で、しかもネガティブなものばかり。

インターネットとSNSの普及がインフルエンサーを誕生させたし、YouTubeとスマホと高速通信の浸透でユーチューバーは人気職業ランキングを駆け上がりました。リモートワークにコワーキング、オープンイノベーションなど仕事の仕方もどんどん変化しています。10年後を、既存のものさしに縛られず自由に眺めてみようじゃないか、そんな気概にあふれた本が今日ご紹介する『10年後の仕事図鑑』(SBクリエイティブ)です。

著者は、「過去を振り返るな、未来に期待するな」(P.247)と叱咤する堀江貴文氏と、「もはや私たちに未来を悲観する暇など1秒たりともない」(P.213)と喝破する落合陽一氏です。

『10年後の仕事図鑑』(SBクリエイティブ)

AIに「手」が生えるときが一つの契機

AIが囲碁のプロ棋士に勝ち越したのが2016年3月でした。いよいよ人間の頭脳を追い越す日も近い、と話題になったのを覚えています。あれから2年。中国・杭州では信号機の操作をAIで行うことで渋滞が激減。音声でAIを操作できるスマートスピーカーはヒット商品となり、2017年はスマートスピーカー元年とも呼ばれました。今年に入ると膨大なデータを基にプロ野球を解説してくれるAIなんてのもデビュー。みるみるうちに生活に浸透しつつあるAIですが、本当のターニングポイントはもう少し先にあると堀江氏はにらんでいます。

現在のAIは「人間の目と耳を代替する機能を持っている」に過ぎない。この先一番の鍵となるのは、AIが「“手”を持ったとき」だと思う。(中略)AIに「手」が生えると、人間の単純労働はほぼなくなっていくだろう。(P.26)

AIが身体性を獲得し、外部とコミュニケーションが可能になったとき。単純作業を効率よく、しかも(バッテリーの続く限り)永遠にこなせるようになったとき。人間が行っていた作業のうちの幾らかを担ってくれて、人間にできることは人間がこなす「半人力半AI」が実現する日。これが少子高齢化で人口減少社会に突入し、労働力不足が見込まれる日本にとって一つの大きな契機だといえます。

AIは「奪う」のではなく、仕事の時間を与えてくれる

AIが優秀な頭脳と、器用な手を持つようになる。こう聞くと「仕事がなくなる…」「恐ろしい未来だ」と不安になってしまう人もいるかもしれません。ですが、「すべてが統計的プロセスの結果、最適化されていく中で、社会に対して文句を言っているようでは、技術発展の中で置いてきぼりになる」(P.70)と容赦ないこの本では、AIを上手に使いこなせば人間に対して有意義で価値のある仕事の時間を与えてくれるのだと教えてくれます。

この本の中では、さまざまな「ヒトとAIのコラボレーション」も紹介されています。ちょっとご紹介しましょう。

警備員から医師まで、広がる協働モデル

半人力半AIといっても、パッとイメージできる人の方が少ないはずです。何をAIが担い、どこを人間が頑張るのか?例えばこんな感じです。

・AI×スポーツの監督

データ処理と判断、さらに指示を的確に要約し、すぐさま発信できる…。AIは名将になれる可能性を秘めています。選手の疲労度など見た目には分かりにくい変化、ボールの回転数など超人でも把握できない数値まで察知するのは人間にはできません。ですが、選手のモチベーションを高めるのは人間の方が得意。チーム内はもちろん、サポートスタッフやファン、マスメディアといった関係者とのコミュニケーションも、人間が行った方がよいでしょう。AIを駆使する名将がどんどん増えていくはずです。

・AI×介護

実は介護の現場で大きな負担になっている仕事、それは移動時の安全管理です。車椅子からベッドへ、屋内から屋外へ、といったちょっとした移動は事故が起きやすく、その部分に多くの人的資源が投入されているのです。未来では、電動で、自動運転車のように周囲の危険を察知する車椅子が普及するかもしれません。そうなれば仕事の最適化が進み、ケアする相手とたっぷり会話に時間を割けるようになるなど人間にしかできない仕事の価値が高くなっていきます。

・AI×警備員

既に実証実験が始まっていますが、ドローンによる見回りとAIによる画像処理でパトロールは一気にきめ細やかなものに。警備員はARゴーグルを装着し、何か不審な事態をAIが察知するとアラートが鳴り駆けつける…などワークスタイルが変わっていくでしょう。

・AI×医師

問診や画像を基に、数万通りもある可能性の中から診断を下す。この難解な業務も、膨大なデータ処理が可能なAIの得意分野といえます。もちろん症例が少なくデータが乏しい場合や、停電などの災害時など、常にAIがスーパードクターとして活躍できるわけではありません。患者との対話や、治療・手術といった分野に人間は集中しつつ、AIによる充実のサポートも組み合わさっていくはずです。

いかがでしょう?AIが仕事をまるっと奪っていく悲観的な未来よりも、人間とAIそれぞれが最適なパートを担う協働モデルの方がリアリティーあるように思えてきませんか?

21世紀はワーク“アズ”ライフの時代

先ほどの未来予想の中でも何度か出てきましたが、「人間にしかできない仕事」というのは必ずあります。これからの時代の働き方は、そういった「その人しかできない状況をどうつくるか」が重要になってくる、とこの本では続きます。実は本の後半は、人生の戦略をどう組み立てていくかといった話がメインです。

AIを使いこなす側になるだけでは、まだ足りない。「代替不可能な価値」を持たなければ。…どうやって?その答えは、意外にも「趣味」や「遊び」のようです。

「何をやるかが決まっていない状況」では、人間は機械に十分に勝つことができる。なぜなら、コンピュータには「これがやりたい」という動機がない。目的を持って、コンピュータが入り込む余地のない、そして誰も興味のないニッチな領域を追求し続けることで一点突破することができる。(P.218)

好き。やってみたい。そんな気持ちは人間特有のもの。遊びに没頭し、仕事になってしまうくらいまで突き詰めてみる。それはきっと、どれだけニッチだろうがAIに決してまねできない「代替不可能な価値」になる。

ニッチだったらお金にならない?そんなことはありません。今の時代はインターネットのおかげで、そうした価値に対価としてお金を払ってくれる人も見つけやすくなっているのですから。

確かに、これほど情熱的でモチベーションにあふれた本は、AIにはつくれなさそうです。絶えず変化する社会と上手に付き合っていくコツは、灯台下暗し、自分の中にこそあるようです。

電通モダンコミュニケーションラボ

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