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予言の書と話題の『インターネット的』を読んでみたら、普遍の書だった。

DMCラボ・セレクション ~次を考える一冊~No.81

2018/11/30

予言の書と話題の『インターネット的』を読んでみたら、普遍の書だった。

あいも変わらず、「AI」だとか「ブロックチェーン」だとか、さらには「ゲノム」だとか、次々に出てくるバズワードに右往左往しながら仕事をしている自分が恥ずかしくなりました。糸井重里さんはいつも人間の本質を見つめ続けていたんだな。それが、本書を2度目に読んだ後の素直な感想でした。

インターネット的
 

インターネット「的」とは

今回ご紹介する『インターネット的』(PHP文庫)は、糸井さんが元々2001年に書かれたものに、新たに「続・インターネット的」を加筆して2014年に文庫化された一冊です。

恥ずかしながら、僕自身は2018年に初めて読んだわけなのですが、一読してまず驚いたのは、(ネット上でも話題になっていたとおり)やはり「予言」のような記述の数々でした。

予言を紹介する前に、そもそもインターネットではなく「インターネット的」とは、どういうことでしょう。

「インターネット的」と言った場合は、インターネットがもたらす社会の関係の変化、人間関係の変化みたいなものの全体を思い浮かべてみてほしい。もっとイメージしやすいたとえでいうなら、インターネットと「インターネット的」のちがいは、自動車とモータリゼーションのちがいに似ているでしょう。(P24)

リンク、シェア、フラット

本書における予言めいた記述をいくつも列挙することは、ネット上にすでにたくさんある記事などに譲りたいと思いますが、個人的に最も驚いたものを一つだけ紹介します。

「インターネット的」であることの核となる3つのキーワードとして「リンク」「シェア」「フラット」という概念が丁寧に解説されているのですが、今の時代に聞くと、すんなりうなずけてしまいます。しかしながら、これらが書かれた2001年にはFacebookやTwitterはもちろんのことmixiさえなかったことを考えると、今や情報流通の世界だけでなく消費行動にも当然のように溶け込んでいる「シェア」という概念を「おすそわけ」などと平易に説明されていたことに畏怖すら覚えました…。

予言ではなく本質

本稿に取り組むにあたって2度目に読み返していると、分かってきたことは、糸井さんはなにも予言をしたいために本書を書いたわけではなく、ただただ純粋に、インターネットやそれを使う人間の本質を考え抜きながら「ほぼ日」(※ほぼ日刊イトイ新聞)を1998年から毎日更新し続けてきたなかでの実感を言語化されたのだな、ということです。

文庫化にあたり2014年に加筆された一部を読んでそれを確信しました。

インターネットは魔法や奇跡じゃなく、ただの「すごく便利な道具」で、それによって人が根っこからガラリと変わったりはしない。けれど、このすごく便利な道具を人々は生活のなかに取り入れていくに決まっている。そしておそらく、こんなふうにして、人はインターネットとつき合っていくんじゃないか……。(中略)違った言い方をすれば、その頃のぼくは、当時そういった本を書いた人のなかではめずらしく、未来に酔っぱらっていなかった。『インターネット的』がいま再評価されているとしたら、ただそれだけの理由なのかもしれませんね。(P256,257)

正直は最大の戦略である

「この場面でウチがこのカード使ってもうたら、もう方法なくなって詰んでまうがな」「今こんな言い方のメール送って、相手の気持ちはよくなるんかいな」。例えばトラブル対応の打ち合わせで頻発するこんなセリフ。僕たちは、コミュニケーションの連続のなかで仕事をしているわけですが、(営業職をしていると特に?)コミュニケーション=駆け引きのように錯覚して仕事をしている風な気分に陥ってしまうことがよくあるように思います…(汗)。

糸井さんが本書のなかで、「ほぼ日」の母として何度も紹介される思想に「正直は最大の戦略である」という考え方があります。社会心理学者の山岸俊男さんの著書『信頼の構造』(東京大学出版)で知られたそうです。

面白いことに、この本の結論は「正直は最大の戦略である」という言葉に集約されてしまうのです。山岸さんの研究は、ある種のゲームをくりかえして、どういう戦略を持った人間が、そのゲームの勝利を得るか、ということを実験していたりするのです。そこでくりかえし実験した結論が、「相手をだましたり裏切ったりするプレイヤーよりも、正直なプレイヤーのほうが、大きな収穫を得る」ということになったらしいのです。(P112,113)

確かに、直近で話題になったSNS界隈での炎上事例を見ても、企業や当事者が「正直でない」対応をとったせいで火に油を注ぐ結果になった例は枚挙にいとまがないですよね。また、2018年の今という時代にあっては、トラブル対応のみならず、日常の企業活動においても、企業理念やそこに書かれてある社会貢献の思想に正直であるかどうかについて、生活者は息をするように自然に視線を送っているような気がします。

Only is not lonely

「正直は最大の戦略である」、これはあくまで本書のなかで「インターネット」を語るうえで紹介された思想ですが、日々の自らの業務を振り返ってハッとしたり救われた思いがしたビジネスパーソンは、きっと僕だけじゃないだろうと想像します。いつのときも仕事やコミュニケーションに向き合う姿勢として、時代に左右されない本質を教えてもらったことに心から感謝したいと思います。とても明るい気持ちでそう思えたのは、この文章に強い共感を覚えたからです。

人間にとって「孤独」は、前提なのです。(中略)それでも、「ひとりぼっち」と「ひとりぼっち」が、リンクすることができるし、ときには共振し、ときには矛盾し、ときには協力しあうことはこれもまた当たり前のことのようにできます。(中略)「ひとりぼっち」なんだけれど、それは否定的な「ひとりぼっち」ではない。孤独なんだけれど、孤独ではない。(P50)

2018年の今、本書の「インターネット的」という言葉は「現代的」と読み換えることもできると思います。けれど、インターネットが空気のように当たり前になった時代の人間においても「孤独」は前提であるということは普遍的な本質です。ただしそれは、つらく苦しい孤独ではありません。インターネット的=現代的に言うと、孤独なんだけれど孤独ではない。デジタルであろうがリアルであろうが、いつのときも自分にも他人にも正直にいることができれば、インターネットも現代も、つまり、糸井さんの言うOnly is not lonelyな世界なのです。そう思い当たると、なんだかまたワクワクしながら今という時代の仕事に向き合えるのです。

電通モダンコミュニケーションラボ

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