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売れない時代に必要なのは「偏愛」だった

DMCラボ・セレクション ~次を考える一冊~No.82

2019/01/25

売れない時代に必要なのは「偏愛」だった

「いいものを作れば売れる時代は終わった」なんて言葉をよく耳にしますが、ほんと、いまの世の中っていいものであふれてますよね。どれもいいけど、どれでもいい時代。

さらに、 暮らし方や、働き方、情報の入手の仕方などの多様化が進んでいく中で、生活者の「いい」と思うものや「いい」と思うモーメントもどんどん多様化・細分化しています。

商品やブランドの送り手側からすれば、どんなお客さんたちと、どのようにつながれば、「どれでもいい」の中から「これがいい」と選んでもらい、そして選び続けてもらえるか、が大きな課題になっています。

そんな中で注目されているのが、これまでのようにたくさんの人たちに向けてアプローチをしていくマスマーケティングではなく、本当に商品やブランドを愛してくれるお客さんと濃く、長くつながっていくことを重視する「ファンマーケティング」。

昨年出版された「さとなお」さんこと佐藤尚之氏の著書 『ファンベース-支持され、愛され、長く売れ続けるために』(ちくま新書/2018) でも、ファンをベースにして中長期的に売上や価値を上げていこうという 「ファンベース」という考え方が提唱され、「ファン」の存在が企業やブランドのマーケティング活動において、重要視されるようになってきています。

(参考記事)「ファンベース」が世界を楽しくする。営業がそれを加速する。https://dentsu-ho.com/articles/6039

パレートの法則によると、全顧客の上位20%が売上の80%を生み出すといわれており、ファンの存在が売上の要になることは間違いありません。

ファンがひもとく、ファン心理

今回ご紹介する 石原夏子著『偏愛ストラテジー ファンの心に火をつける6つのスイッチ』(実業之日本社)も、この「ファンマーケティング」について書かれているのですが、本書が他のファンマーケティングに関連する本と違う点は、著者自身がエクストリームな偏愛の持ち主であること。

偏愛ストラテジー

クリエーティブ・ディレクターという送り手側の立場でありながら、とあるアーティストの長年の熱狂的なファンであるというところから、自身の偏愛歴を紐解きながら、人が偏愛を抱き、その愛を育み、離脱することなく愛し続け、さらに新しいファンを連れてくるまで繋がり続けるための戦略を、ファン側(=受け手)の視点で段階別に 「ファンの心に火をつける6つのスイッチ」として紹介しています。

(実際に著者本人の偏愛っぷりを知っているだけに、これだけの偏愛を抱いてくれる人をファンにつけられたら、それはもう最強だなと思います。笑)

1 接点をつくる「よりそいスイッチ」
2 偏愛を深める「特別扱いスイッチ」
3 偏愛を維持する「言霊スイッチ」
4 脱落を防ぐ「仲間スイッチ」
5 ファンが促す「自分ごとスイッチ」
6 ファンを増やす「拡散スイッチ」

偏愛とスイッチ

必ずしも、「購入者=ファン」ではないということ

そもそも、商品やブランドにとって「ファン」とはどういう存在なのか?
商品を購入してくれる人?そのブランドを好きだと言ってくれる人?
本書では「ファン」とは

「未来に対して偏愛」を持ってくれている、つまり「送り手の『次』に期待している人」である。(P.24-25)

と定義されています。極端に言えば、商品をまだ買ったことがない人であっても、企業やブランド、商品の未来に期待をしてくれる人であればファンであり、そんな人の心に火をつけることができれば、 濃く、長くつながっていける可能性が高いと考えられます。

私の話になりますが、この週末、買い物に出かけていた際にデパートで気に入ったスカートがあったので買いました。でも、これまで私はそのブランドの服を買ったことがなかったし、たまたまそのスカートがタイプだっただけで、この先そのブランドの服を買うかどうかは分かりません。

そのブランドのファンマーケティングにおいて重要なのは、私のようなたまたまスカートを買った人ではなく、普段からそのブランドをチェックしていたり、次のシーズンの新作を待ち望んでいる、そのブランドの「次」に期待をしてくれている人たちの存在であり、送り手であるブランドはそのファンたちの視点に立ち、彼らの期待に応える「次」を提供し続けなくてはいけません。

流行り廃りの早いこの世の中で、愛され続ける存在になること

みなさんは、何かに偏愛を持った経験はありますか?そしてその偏愛を持ち続けているものはありますか?恐らく、過去に偏愛を持った経験があっても、その偏愛をずっと持ち続けているものはそう多くないのではないでしょうか。

「日本人は熱しやすく冷めやすい」といった話もよく耳にしますが、昨今のトレンドの移り変わりを見ていても、これまで以上に流行り廃りの速度が速まっているように感じます。

仕事柄、若者と話す機会も多いのですが「いま流行ってるアレってどうなの?」と聞くと「あ~もうそれオワコン(終わったコンテンツ)ですよ?」といった答えが返ってくることも珍しくありません。

そんな流行り廃りの早いこの世の中で、一過性のブームとして消費されるのではなく、長く愛され続ける存在になるにはどうしたらよいのか。

それは、目の前の売上だけにフォーカスするのではなく、愛してくれるファンたちの目線に立ち、愛し続けてもらうための仕掛けを送り手側が、いかに戦略的に投じられるか、そして根気強くそこに時間とお金を投資する覚悟が持てるかだと思います。

ただ、ファンマーケティングは従来のマスマーケティングと違って、すぐに目に見える結果につながるものではないため、重要性を分かっていながらもまだまだ二の足を踏む企業が多いのも分かります。

送り手側にいると、どうしても目の前の数字やミッションに追われてしまいがちですが、本書を読んで改めて感じたことは、ファンの「偏愛」の強さと温かさ。そして「ファンマーケティング」は、本当に自分たちのことを大好きでいてくれている人たちのことをとことん考えて、一緒に愛を育んでいきながら、成長していける、受け手も送り手もどちらも幸せになれる最高にハッピーなマーケティングだということ。

商品やサービス、コンテンツなど、世の中にモノやコトを送り出している送り手側にいる方たちには、ぜひ本書を通して今一度自分たちのモノ、コトに愛を持ってくれているファンの存在を見つめ直し、ファンと共にお互いのハッピーを追求していく、そんな関係をつくっていくためのキッカケにしてほしいと思います。

そして、これからより一層「ファンマーケティング」が浸透していくことで、たくさんの愛されるモノ、コトがあふれる世の中になれば幸せだな、と感じました。

※『偏愛ストラテジー』著者の石原夏子氏の連載はこちら

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