「偏愛ストラテジー」~ファンの心に火をつける6つのスイッチ~No.3
ファンの脱落を防ぐ「仲間スイッチ」
2018/11/21
こんにちは。送り手(商品やサービスの提供者)と受け手(商品やサービスのファン)のコミュニケーションから、ファンマーケティングを考える「偏愛ストラテジー」コラムの3回目です。今回はその中でも「脱落を防ぐ」という課題に立ち向かってみたいと思います。
この記事を読んでくださっている皆さんの中にも、「以前は好きで好きでたまらなかったアイドルがいたけれど、今はそうでもないなあ」とか、「一時期よく通っていたあの店に最近は行かないな」とか、「親子三代で愛用していたあのブランドも、自分の代になってあまり利用していない」などという経験をしたことがある人がいるのではないでしょうか。
ダイエットや勉強や仕事は目標値があればモチベーションを維持しやすくなります。一方、偏愛(≒ファン化)には目標もゴールもありません。KPIだってありません。そのため、ファンからは脱落しやすいのです。
脱落を抑止するのは「仲間」の存在
前回のコラムではファンの気持ちを維持するためには「言霊スイッチ」を入れること、すなわちファンであることを第三者に宣言すると、好循環が起こりやすく、偏愛が保たれやすい(むしろ偏愛度があがることもある)ということを書きました。
脱落しやすい状況とはその逆です。
例えばダイエット。自分一人で頑張って成功する人もいますが、レコーディング(記録)をしたり、知り合いに宣言したりして、何らかの「表明」をするとより成功しやすいといわれます。最近ではアプリでアドバイスをもらったり、仲間を集ったりできますよね。
誰にも言わずに一人でやっている場合は、辞めても続けても他人には分かりません。一方、宣言したり記録をつけたりしていると「辞めた」ということが如実に分かってしまいます。
つまり、誰にも言わないという状況は、偏愛が自分で完結してしまうため、他の人や環境などの影響を受けにくく、脱落を抑止してくれるものがないということです。
誰にも言わない=誰も止めないであり、「一人でこっそり好き」という状況こそ、偏愛度が下がりやすいのです。
これらのことから考えると、脱落を抑止するもの…それはズバリ「仲間」です。ファンであることを表明し、共有できる仲間がいることで、何らかのコミュニケーションが起こり、脱落しにくくなります。
私も長年ファン活動を共にしている相棒がいます。私が脱落しそうになれば喝を入れてくれます。仲間というのは抑止力になるのです。
そんな仲間にも種類があります。
必ずしもリアルな友人同士である必要はなく、SNS上でフォローしている/されている人というケースもあります。それでも情報が定期的に入り、刺激を受けることができれば仲間といえます。
「仲間スイッチ」の入れ方
このコラムを読んでくださっている皆さまが「送り手」側だとすると、ファン同士が自然と仲間になることを待つだけでなく、仕掛けることをおすすめします。仕掛けにはいくつかのパターンがあります。
・元々仲間同士の人が一緒に参加しやすい状況をつくる
とあるファンが一人で活動していたとして、普段付き合っている友達を誘いやすいような状況をつくるパターンです。たとえば複数でしか参加できない企画にする、などです。
・受け手同士がつながるきっかけをつくる
元々仲間ではない人同士を結び付けるやり方です。とはいえ最初はファンであること以外に共通の話題のない可能性もあるので、何か共通点をつくることが必要です。ファンを「〇〇組」とくくるのもひとつの手法です。また仲間をウェブ上で検索しやすいキーワードにしたり、ハッシュタグをつけたりするのも有効です。
・受け手同士がつながる場所やプラットフォームをつくる
リアルでも、ネット上でも「場所」をつくり、そこに集った人間同士が会話を始めることを推進する仕掛けです。SNSでいえばTwitterはユーザー同士がつながり、ムーブメントが起きやすい傾向があります。例えばスポーツのキャンペーンなら、専用のハッシュタグをつけることでそのスポーツのファンたちがひとつの話題で盛り上がり拡散することがあります。
仲間というと濃い関係を思い浮かべがちですが、一緒に同じネタで盛り上がれる人同士と考えれば、上記のようなライトなつながりをつくるだけでも十分なのです。
ただし仲間であることを強制するのは禁物です。ファン活動には人それぞれのスタイルがあり、仲間はプレッシャーになってしまうこともありますのでご注意ください。時には一緒に盛り上がれる、時にはゆるーくつながっているだけ、など受け手が心地よくいられるさじ加減を模索してください。
次回のテーマは「自走」です。ファンを獲得したけれど、ずっとコミットメントが必要で結構体力がいるので大変…という送り手もいると思います。本音は、ファンが盛り上がって自走してくれればいいのに…というところではないでしょうか。そんな願いをかなえるヒントをお伝えしたいと思います。
書籍ではここで書ききれなかった最新の事例やSNSの活用法などもご紹介していますのでぜひご一読ください。