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着眼力を鍛える!言葉の絵画教室

アクティブラーニングこんなのどうだろうレポートNo.11

2018/12/20

着眼力を鍛える!言葉の絵画教室

言葉で絵を描く?

さて、この写真、いったい何をしているところなのか、分かりますか? テーブルの上には、コンクリートブロック、布、ボトル、バナナ。その周りを取り囲む人たち。「モチーフをみんなで描いている」と答える方が多いのではないでしょうか?そう、正解です。皆さん、描いています。

周りにいる人たちの画板をのぞき込んでみますと、何か様子がおかしい。あれ?皆さん、絵を描いていないですね。何か原稿用紙のようなものに文字を書いています。どちらかというと、作文を書いている感じですよね。

この絵画教室、ただの絵画教室ではないのです(私たちのアクティブラーニングこんなのどうだろう研究所がただの絵画教室をやるはずがないと思われた方。勘が良いですね)。

このワークショップの名前は「言葉の絵画教室」といいます。目の前にあるモチーフを、絵ではなく、言葉だけで描いていくというものです。

言葉の絵画教室とは、現役のコピーライターが考えたちょっと不思議な絵画教室です。同研究所の大山徹が紹介いたします。

同じものを見ているのに、みんな違う

参加者の皆さんに配られているのは、言葉の絵画教室オリジナルの200文字原稿用紙。この200文字という字数制限の中で、目の前のモチーフを言葉で描いてもらいます。描く時間は10分。10分たったら、一人ずつ自分が今描いた文章を読み上げて、みんなで共有していきます。

するとどのようなことが起こるのでしょうか?

「同じものを見ているのに、みんな違う」

当たり前なようですが、皆さん少しずつ違う文章を書きます。一番分かりやすい違いは、見ている位置による違いです。モチーフを取り囲むように座っているので、自分から見て手前にあるのがバナナという人もいれば、ボトルという人もいます。それによって、文章はおのずと変わってきます。

また、モノ自体を伝えるのにも皆さん伝え方が少しずつ違うことにも気が付きます。例えば、バナナの場合。ただ「バナナ」とひとつの単語だけで伝える人もいれば、ちゃんと「1本のバナナ」と本数を伝える人。大きさを伝える人もいます。正確な単位で伝えようとする人。ボトルと比べて相対的に伝える人。「普通の大きさ」といったように、人の常識を頼りに伝えようとする人、など。さらには色、傷、房の状態などなど、皆さん自分から見える部分で伝えたいことをおのおの伝えています。

バナナひとつとっても伝え方は無限にありますので、そこにさらに布、ボトルやブロックなども加わると、200文字の文章を通して、全く同じ伝え方をしている人などいるはずがありません。つまり、人によって全く見え方が違うということを実感できるのです。

見え方は、伝え方

私たちのワークショップでは、言葉の絵画教室を合計3ラウンド行います。1回目を終えると、視点の違いについてはすぐに分かることになります。同じものを見ているのに、みんな違う。 選んだ言葉も違うから、伝え方も違う。

そのあと、もう1回、書き方やモチーフを変えて、再び言葉で描くことになるのですが、そこでは1回目とは違い、だんだんと自分の視点に偏りがあることに気が付いていきます。

その前のラウンドで他の人の言葉の絵画を聞いて、「なるほど、そういう視点もあるのか!」と感じているにもかかわらず、新しい視点で描くことは意外に難しいものです。無意識のうちに、ある見方に固執していることに気が付くのです。

3回目は、バナナやボトルといった目に見えるモチーフではなく、「大きい」「正しい」といった姿、形のない、言葉でしか描くことのできない「言葉」自体をモチーフとして扱います。

たとえば、「大きい」というモチーフであれば、「大きい」という言葉を使わずに、物理的な大きさを「宇宙」や「シロナガスクジラ」などを描いて伝えようとする人から、「お父さんの背中」や「子どもの未来」など印象的なもので描いて表現する人まで、これまたさまざまです。モノではなく、コトを描くことによって、よりその人らしい視点の言葉の絵画が出来上がるのも特長です。

言葉で描くからこそ、モノなどの実体のあるものから、コトなどの実体のない抽象のものまで表現することができ、視点も幅広く持つことができると考えています。

「言葉」を軸にしたプログラムの開発

言葉の絵画教室は、2人のコピーライターが開発したプログラムです。そもそもの発端は、デザインなどではなく、もっと言葉そのものに触れることができるような教育プログラムを考えることができないかということで、「言葉」をテーマにいろいろとアイデアを考えていました。

その中で「絵を描くのが苦手」という多くの人が思っているところに、新しいワークショップのヒントがあるように感じました。絵画教室はもちろん絵がうまく描けるようになりたくて行くところだと思うのですが、ふと「絵画」の部分を「言葉」に置き換えることによって、より多くの人が絵画教室で得られるような体験ができるのではないか?と考えました。そして、このプログラムは生まれました。

実際にテストで試してみると、絵画教室で学べることとは違うのですが、普段扱い慣れている言葉を使うことで、誰しもが表現の領域に簡単に足を踏み入れられることが分かりました。

全員が全員、すぐに文章が書けるのでしょうか?そう思われる方もいるかもしれません。言葉の絵画教室では「10分で200字」という制限をかけています。これまで何回か言葉の絵画教室を実施してきましたが、10分で何も書けなかったという人は、今のところ、一人もいません。ほとんどの方が200文字の文章を10分で書くことができています。

それは、やはり絵を描くことよりも文字を書くことの方が圧倒的に身近な技術だからなのです。絵画教室という既存のフレームの中に「言葉」を入れることによって、全く新しい、そしてちょっと不思議な教育プログラムを生み出すことができたのです。

「着眼力」は、スタート地点を決めること

文章は書けるのですが、さまざまな視点で書き分けることができるかというと、それはまた別の話です。物事をあらゆる視点から見るというのは、それなりに訓練が必要となります。言葉の絵画教室は、その気付きを得ること、またその練習になるようにつくられています。

さまざまな視点で物事を見ることができる力を着眼力と呼びます。自分の着眼力を鍛えること、また他人は自分とは別の見方をしているということを理解、実感すること。それが言葉の絵画教室の大きな目的となります。

着眼力は、どういったときに必要になるのでしょうか?ある問題に対して、さまざまな視点を持つことができると、それだけ多くの解を導き出すことができるというメリットがあります。

問いを立てる際にも、着眼力によって、どこに問題があるのか、どこに問題を設定すればよいのか、など問いを立てる範囲を広げることができます。スタート地点の可能性を広げることができれば、それだけアイデアの幅を広げることにもつながります。

もしも、一人で複数の視点を持つことに慣れていない場合には、他人の力を借りて、複数の視点をチームで持つということも可能です。その際に、チームでアイスブレーキングになるような言葉の絵画教室を実施することで、他人にどのような着眼の癖があるのかを知ることもできます。

「なるほど、リーダーはこういうモノの見方をするのか」「彼女は、ユニークなモノの見方をするのだな」。実際にプロジェクトや問題解決に取り組む前に言葉の絵画教室を実施し、チームメンバーの視点の方向性を知っておくと、その人からなぜそのアイデアや解決策が出てきたのかなど、思考のプロセスを理解することができ、チームビルディングにも役立つことが分かってきました。

絵が苦手です、とつい口に出してしまうあなたへ

目の前にあるモチーフを、言葉だけで描いていく。描いた後、みんなで言葉の絵画を共有すると、同じものを見ているのに、みんな違うということ。見え方の違いは伝え方の違いでもあるということ。選んだ言葉も違うから、伝え方も違う。ちょっとしたコツで視点の違いを体感することができるだけでなく、自分自身やチームがどのような視点や視野を持っているのかまで認識することができます。

言葉の絵画教室は、ボトルや石こう像などのデッサンモチーフ、オリジナルの原稿用紙、そしてちょっとした書き方のコツをセットにして、あらゆる場所で実施できるようにしています。これまでに学校はもちろん、企業研修として管理職の研修、新人研修のプログラムにしていただいています。また、電通のクリエーティブ部門配属の新人研修としても実施しています。

ぜひやってみたいという方は、アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所のホームページのお問い合わせフォーム(http://www.konnano-dodaro.jp/contact)からお気軽にご連絡ください。