ジャンル別イノベーターの時代No.2
消費のカギを握る「ジャンル別イノベーター」
2019/02/07
電通ギャルラボ(以下、ギャルラボ)が注目する「ジャンル別イノベーター」。それは、あるジャンルに対してオタク的ともいえる深い知識や情報を持ち、自他ともに詳しいと認識している人のことです。彼らは、「信頼できる情報を持っている人」として、発信者としても影響力があります。
そのため、時代にヒットする商品やサービスの開発や、新しいマーケットを開拓するためには、ジャンル別にイノベーターへアプローチすることが効果的だと考えます。
連載第2回では、「PR投稿」に対する調査結果と共に、なぜジャンル別イノベーターが消費のカギを握るのかについて、ギャルラボの仮説を交え解説します!
ギャルラボの仮説~ジャンル別イノベーターが消費を動かす!?
インフルエンサーは、フォロワーの「数」で影響力を測るのに対し、ジャンル別イノベーターは情報や知識の「豊富さ」や「深さ」で測ります。ジャンル別イノベーターは、フォロワー数が多く影響力の範囲が広いインフルエンサーの中にも、フォロワー数が少ない一般の人たちの中にも、どちらにも一定数存在します。
より効率的に市場の消費を動かそうとするならば、影響力の大きいインフルエンサーたちの力を借りることが有効です。その際、単純に「フォロワーの数」や「ブログのPV数」などの情報のリーチ数だけに注目するのではなく、そのインフルエンサーが何に詳しい人なのか、インフルエンサーの「ジャンル別イノベーター」としての側面に注目することがポイントです。
インフルエンサーを「フォロワー数」別に階層で分けると、Twitterを目安にしたときにフォロワー数が100万人以上の「スターインフルエンサー」から、フォロワー数が1000人~1万人の「ナノインフルエンサー」まで規模はさまざまです。
「トップインフルエンサー以上」は、アーティストや俳優などタレント性の高いインフルエンサーに多く見られます。「マイクロインフルエンサー以下」では、より身近な読者モデルやブロガー、カリスマ美容師や、「化粧アカウント」「ゴルフアカウント」などのように何かのジャンルに特化したインフルエンサーなどが主流となります。
インフルエンサーの中には、何か情報を持っているわけではなく、そのキャラクターや人柄、創作物が人気を博して多くのフォロワーを獲得している人もいます。そのため、単純にフォロワー数だけ見ても、PR投稿をしたときに見てもらえる回数(インプレッション数)の多さや、商品を購入してもらえたり会員登録してもらえたりする確率(コンバージョン率)は、一概には測れないのではないかというのがギャルラボの仮説です。
例えば100万人のフォロワーがいる著名人が発信するゴルフ用品の情報よりも、たとえ1万人しかフォロワーがいなくてもゴルフジャンルでジャンル別イノベーター気質を発揮していて、フォロワーから積極的な反応を示してもらえる割合(エンゲージメント率)の高いジャンル別イノベーターがゴルフ用品を紹介した方が、商品が売れる・市場を動かす力が大きくなる可能性もあるのではないでしょうか。
ただ人気があるだけではなく、情報を持っているジャンル別イノベーターであれば、そのジャンルに関心を持つ仲間を巻き込む求心力も高いのではないかと考えます。今フォロワー数が少なくても、有益な情報を発信できるジャンル別イノベーターは、今後、エンゲージメント率の高い状態でフォロワーの数を増やし、影響力を伸ばしていくポテンシャルがありそうです。「本物の情報」のニーズが高まる今の時代だからこそ、ジャンル別イノベーターが力を持ち始めていると考えます。
ユーザーの「PR投稿」へのリアルな反応と購買行動
ここからは、そもそもインフルエンサーの「PR投稿」は消費を動かす力があるのかどうかについて、「インフルエンサーマーケティング調査」結果から読み解いていきます。
インフルエンサーを活用した企業の宣伝PR活動は、消費者も広告だと気付いています。マイナビティーンズ(電通ギャルラボとマイナビティーンズは共同研究チーム「原宿可愛研」として活動)が2018年9月に13~19歳女性に調査(概要は末尾に)した結果、約7割の女性がインフルエンサーの広告やPR投稿に気付いていると回答しています。
注目すべきは、「広告やPR投稿自体はマイナスの印象を持たれない」ということです。同調査では、企業のPR投稿をしているインフルエンサーに対してポジティブな反応の人は、44.1%。「どちらでもない」の39.8%含め、ネガティブな印象を持たない人が83.8%でした。また、PR投稿に「いいね」をつけたことがある方に理由を尋ねたところ、「商品が良いと思った」がトップで39.6%、「商品に興味がわいた」も4人に1人(26.0%)という結果になりました。
インフルエンサーがSNSでおススメしている商品を実際に「購入した経験がある人」と「商品に興味がわいた人」をみると、PR投稿であってもPR投稿でなくても、いずれも60.2%がポジティブな反応という結果も出ています。
その理由としては「知ってる人だと安心して買える」(16歳・栃木県)、「自分の好きな読者モデルやユーチューバーが実際にやって見せてくれるから」(17歳・群馬県)、「本当に試して投稿してるのならいいことだと思ったから」(18歳・東京都)などが挙がりました。
ただし、インフルエンサーの発信する情報がポジティブに受け取られるのは、広告であったとしても「信頼できる情報」として受け取ってよい情報だと判断された場合に限られるようです。
同調査では、PR投稿への感想として「本心じゃなかったのかと思うと寂しい」(17歳・東京都)、「ほんとにその芸能人がその商品を使っていておすすめしているならいいけど、やらされてるだけでその芸能人が私物として使ってないなら良くないと思う 」(17歳・神奈川県)、「よくPRされているやつもあればいかにも言わされているなというやつもあるなと感じる」(17歳・愛知県)など、インフルエンサーへの信用が失墜する様子がうかがえる声も挙がっています。
調査では知りたい情報のジャンルによって情報をチェックするインフルエンサーを使い分けている人が68.2%に上り、実際に商品を購入したり興味がわいたりといったポジティブな反応は75.7%と高い結果が出ています。
使い分けの理由としては、「そのジャンルの人の投稿の情報が豊富だから」(16歳・神奈川県)、「そのことに特化している人、注目を浴びている人の情報を参考にしたいから 」(18歳・愛知県)、「ジャンルによって選ぶ方が、たくさんそのことについて調べている人だから説得力がある」(16歳・千葉県)などが挙がりました。
テレビに出ていたとか、人柄への好感度や信頼性が高いとか、個性が際立っているなど、何らかの理由で人気を博しているインフルエンサーたち。その中でも、自分のジャンルが確立しているジャンル別イノベーターが、価値ある情報発信者としてフォロワーからのエンゲージメント率が高くなったり、レコメンドするに足る情報量、すなわち信用できる情報を持っていると信頼されるためにPR投稿時のコンバージョン率が高くなったりするのではないかと、ギャルラボでは仮説として捉えています。
細分化されるジャンル別イノベーター
第1回の記事でご紹介したようにギャルラボの調査では「ジャンル別イノベーター」を36ジャンルにざっくりと分類しましたが、実際にはジャンルは細かく分類されています。例えば「#読書オタク女子タグ」を持つ人々を観察すると、「#ビジネス書オタク女子タグ」「#小説オタク女子タグ」「#ラノベオタク女子タグ」・・・などのように細分化することができます。
例えばエリエス・ブック・コンサルティングのビジネスブックマラソン(以下BBM)は知る人ぞ知る「ビジネス書」好きを動かすメディア。BBMのメルマガ読者5万6000人のコンバージョン率が非常に高く、紹介されるとアマゾンの総合ランキングの順位が数万位~数千位から100位以内に一気に跳ね上がることでも有名で、出版業界では知らない人はいません。
次回は、そのBBMの編集長の土井英司氏に登場してもらいます。トップインフルエンサーとして、そしてジャンル別イノベーターとして自身の立場や市場をどう分析しているのか。また取り扱っている書籍の著者自体が究極のジャンル別イノベーターといえますが、土井英司氏が見てきた女性ジャンル別イノベーターは、どう消費を動かしてきたのかなどについて聞いていきます!
<調査概要>
・調査名:マイナビティーンズ「インフルエンサーマーケティング調査」
・調査機関:企画・実査=マイナビ マイナビティーンズ事業部
・調査対象:マイナビティーンズの会員パネル
全国の女性13~19歳個人(無作為抽出)334サンプル
・調査手法:マイナビティーンズのインターネットアンケートフォームに入力
・調査実施期間:2018年9月12~19日
❤マイナビティーンズ
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