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スマホの「次」の世界はどうなる?No.4

テクノロジーの祭典CES 2019から見る、スマホのこれから

2019/04/04

これまでの大きなターニングポイントは、スマート化とIoT化

ポストスマホについて考える本連載。最終回となる今回は、CES(※1)の動向からスマホの「次」の世界について考えてみたいと思います。

※1:毎年ラスベガスで開催される世界最大規模を誇るテクノロジーの見本市


私は2011年から毎年CESを視察し各所でリポートをしています。その間に二つのターニングポイントがありました。

一つはスマート化。スマホが主流になる中、タブレットやスマートテレビが登場し、あらゆる家電がネットにつながることが当たり前になりました。

そして2015年にはスマート化からIoT化(コネクテッド)にシフトします。単にネットにつながるということから、人も情報もデバイスもつながり合う時代に突入しました。しかし、実生活の中でIoT化が進んでいるかというと、そうでもありません。

第1回 で紹介したように、多くの人はスマホ中心の生活をしています。コミュニケーション用途はもちろんですが、訪問先への行き方を調べるときや買い物、気になったことの検索など、生活のさまざまなシーンでスマホが利用されているのが現状です。

スマホレスは既に始まっている

生活に入り込んだスマホは、これからどうなっていくのでしょうか。その視点でCESを見ていくと、年々スマホ不在の市場が顕在化していることが分かります。

数年前は当たり前だったウェアラブルデバイス(以下、ウェアラブル)とスマホの連携もeSIM(※2)の登場で、スマホでの通信を介さず機器単体で直接クラウドにつながるようになってきています。

※2:SIMカードを必要としないデバイス組み込み型の加入者認識(SIM)モジュール


スマホ連携のためにはアプリの開発が必要です。アプリは機種ごとへの対応や検証、アップデートも求められます。個体差や環境依存、バッテリー問題などを考えると、アプリはコストセンターになります。

また、アプリがあることで、不要な機能や設定があったウェアラブルも多かったと思います。アプリを介さない形にするなら買ってすぐに使える状態である必要があり、必然的に機能も操作もシンプルになっていきます。アップデートもウェアラブルだけで完結するようになるため、ユーザーの手間も大きく軽減されます。ただ、一方でeSIM自体のコスト、無線利用の審査(日本では技適)ではコストだけでなく時間も要するという課題も残っています。

もう一つ、スマホが不在になりつつある領域がスマートホーム市場です。これまではスマホがリモコンや管理用デバイスとして登場する機会が多かったのですが、スマートスピーカーの登場でその出番はほとんどなくなりました。

CESの会場にある製品の大半は、音声で操作できるようになっています。さらに操作不要の機器もどんどん増えており、その裏側にあるテクノロジーがAIです。

スマートホームイメージ

2種類のAI活用:Input型とOutput型

このAI活用に大きな変化が見られたのもCES 2019の特徴です。

これまでのAI活用は、音声認識や画像認識といった特定の領域に限定した認識型AIがメインでした。これらは多くの場合、何かのアクションを実行するためのインターフェースとして利用されます。

今では、認識型AIをさらに進化させた診断型AIを活用した製品・サービスも一般化しています。例えば肌質や体型の診断などでは、個別の対応策や製品のレコメンドまで提供するものもあります。

認識型をInputとすると、診断型はOutputであり、これまでそれぞれが別々のサービスとして提供されることが主流でしたが、このInputとOutputがシームレスとなった製品・サービスがCESでは数多く見られました。

認識AIと診断AIがシームレスに
認識するタイプのAIと診断するタイプのAIがシームレスに

InputとOutputがシームレスになれば、人間は操作をせず、自動でフィードバックが行われ、いろいろな体験が提供されるようになります。

例えば、冷蔵庫の中にある食材情報を自動で収集するInputがあると、ランチタイムに冷蔵庫にある食材を活用したレシピがレコメンドされます。冷蔵庫が食事を作るまでは進化していませんが、自動でビールやハンドクリーム、香水などを製造してくれる家庭用機器は登場しています。こういった機器にAIが組み合わさることで自分好みのものを自動でつくり出してくれるようになります。

現在入手可能な機器にはエアコンや空気清浄機があり、まさに自動で快適空間を提供してくれる典型的なものです。エアコンの上位機種の中には人感センサーとサーモセンサーで人の状態を感知し、寒いと感じているところへ温風を送り、快適な状態と判断した際に、その状態を維持するモードへ自動で切り替わるものもあります。操作という概念がなくなってくることがとてもはっきりとイメージできる領域です。

自動車などのモビリティーは自動で周囲の情報を収集し、衝突を未然に防ぎます。カートなどのパーソナルモビリティーは、人などへの衝突を避けるのはもちろんですが、段差や溝などを感知し、転倒防止も自動で行います。スマートホームの中には、自動で居住者の異常を感知し救急車を呼ぶサービスも出てきました。

これらはセンサーでデータを収集し、そのデータをAIが判断、Function(動作)を起動します。これまではAIの領域が存在しなかったため、リモコンやスマホなどで、人が状況に応じてFunctionを起動する必要がありました。

デジタル化の先にあるAI化:「勝手に快適」時代

これからはAIが勝手に、その人にとっての快適を提供してくれるようになります。近い将来、自動で快適な環境が提供されることが当たり前になっていきます。このような状況から、AIスピーカー調査 でもお話ししましたが、わざわざスマホを手にして操作をすること自体が面倒になる未来が目の前に迫っていることを確信しています。

そして、モノや環境を創り出す機器にAIが組み合わさることがAI化です。こういったAI化機器は、もしかしたらスマホどころか、音声での操作も不要になるのではないでしょうか。

このデジタル化の先にあるAI化を私は「勝手に快適」時代と定義しました。「勝手に快適」が当たり前になる未来においては、スマホは情報やコンテンツを閲覧するデバイスになっていくのかもしれません。

まだスマホを手放せない今、その未来を実感することは難しいかもしれませんが、ポストスマホ時代には、スマホが普及した時期以上に、新しいビジネスチャンスがたくさん生まれることでしょう。

勝手に快適時代へ

 

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