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いつでも、どこでも、好きなものを!~コンテンツ接触の変貌~

平成の30年 情報メディアの変貌と革新No.4

2019/04/16

いつでも、どこでも、好きなものを!~コンテンツ接触の変貌~

情報メディアは、平成の30年間を通じて私たちの社会へどんな価値(つまり豊かさ)をもたらしてきたのでしょうか? 第3回から5回までは、情報行動を規定する三つの「C」、Communication、Content、Contextをキーワードに、『情報メディア白書2019』用に編さんした年表の読み直しにチャレンジしていきます。

三つのCは独立してバラバラにあるというわけではなく、この30年の中で相互に関連し合う度合いを強めている点が重要です。

前回の「Communication」に続き、今回の連載第4回は、コンテンツへの接触という視点から、平成の30年のメディアの歴史を振り返ります。

【目次】
▼スマホをスワイプする赤ちゃん~コンテンツ接触の現在~
▼物理的・時間的制約にしばられていた、コンテンツへのアクセス
▼デジタル化とインターネットがコンテンツ接触を変えた!
▼動画や音楽のインターネット配信隆盛
▼ゲームはアーケード、コンソール、ソーシャル/ゲームアプリを経て、eスポーツへ
▼サブスクリプションはマネタイズ問題の解決となるか?            

スマホをスワイプする赤ちゃん~コンテンツ接触の現在~

1歳8カ月のYくんはママのスマートフォンをいじっています。YouTubeのアイコンを知っていて、自分でタップします。好きな動画をいつでも好きなときに見て、つまらなくなると、スワイプ! 指でさっと払って、次の動画を探します。

これが平成最後の世代のコンテンツへの接し方なのです。いつでもどこでも、いまここで、自分の好きなコンテンツに接することができます。そして、そうでなければ我慢できない!そんな“豊かなメディア社会”に私たちはいるのです。

物理的・時間的制約にしばられていた、コンテンツへのアクセス

30年前の平成の初め、私たちはどのようにコンテンツへ接していたのでしょう? スマホ一つで、動画や音楽、画像、テキストなどにいつでもどこでも接することのできる状況では、もちろんありませんでした。コンテンツに接触するには、物理的・時間的制約を受けていました。

当時欲しいコンテンツに接するためには、本や新聞、雑誌、CD、ビデオなどの物理的なパッケージを入手しなければなりませんでした。テレビ、ラジオは放送時間が決まっているため、番組が始まる時間にはその前にいなければなりませんでした。

ビデオで録画することやFM放送をエアチェックすることはできましたが、ビデオやテープが手元に必要でした。映画を見るには、映画館に足を運ぶか、ビデオを借りていました。パッケージとコンテンツは切り離すことができず、コンテンツへアクセスするためにはパッケージを手に入れるしか方法がなかったのです。

デジタル化とインターネットがコンテンツ接触を変えた!

コンテンツがデジタル化され、物理的パッケージからコンテンツの離脱・解放が進んだのが平成の時代です。デジタル化されたコンテンツは劣化せず、コピーが容易であり、デジタルデータはインターネットを通じて瞬時に流通します。本や新聞、雑誌、CD、ビデオなどのパッケージにお金を払って手元に所有する必要がなくなりました。

「インターネット元年」といわれた平成7(1995)年からその動きは加速していきます。最初にコンテンツへの接触の大きな変化を見せたのが音楽です。

●平成7(1995)年:日本の「インターネット元年」
●平成11(1999)年:音楽ファイル共有/配信のNapsterサービス開始
●平成15(2003)年:iTunes Music Store 米国で始まる
米国で音楽ファイルの共有を大流行させたNapsterは違法コピーの共有が問題となり、のちに訴訟を受け倒産しましたが、デジタル化されたコンテンツの未来を象徴するものでした。

著作権の問題を解決して登場したiTunes Music Storeは音楽の楽しみ方を根本的に変えてしまいました。CDを買わずに、いつでもどこでもダウンロードして音楽を聴くことができるようになったのです。

また、マスメディアのデジタル化も進んでいきます。

●平成7(1995)年:asahi.comやYOMIURI ONLINEなど新聞社による無料ウェブサイト開始
●平成21(2009)年:電子雑誌の有料配信サービスMAGASTORE開始
●平成22(2010)年:日本経済新聞の有料電子版創刊
インターネットラジオ radiko配信開始
●平成23(2011)年:テレビのアナログ放送が停波(東北3県を除く)
新聞社による無料ウェブサイトが開設され、インターネット上でのデジタル情報流通の先駆者となりました。ここからインターネット上で情報が無料であるという状況が一般化していきます。

その後、既存のマスメディアはデジタル版の有料化に乗り出し、電子雑誌の有料配信や新聞の有料電子版が開始されます。放送メディアでは、ラジオがインターネット対応の先駆けとなりました。また、テレビはアナログ放送が停波し、デジタル化されました。 

動画や音楽のインターネット配信隆盛

YouTubeが米国で始まったのが、平成17(2005)年のことです。オンラインで動画や音楽を、好きなときに、好きなところで視聴するのが当たり前の時代が始まりました。

●平成17(2005)年:YouTube米国で開設
●平成27(2015)年:NetflixとAmazon Prime Video日本でサービス開始
民放テレビ見逃し配信ポータル TVerのサービス開始
AWA、LINE MUSIC、Apple Music、Google Play  Music、Amazon Prime Musicなど音楽配信サービス開始
●平成28(2016)年:スポーツ専門配信サービス DAZNサービス開始
インターネットテレビ AbemaTVサービス開始
日本では米国などに比べて、テレビなどのコンテンツのインターネット配信への動きは鈍かったのですが、外資系の動画オンライン配信サービスであるNetflixとAmazon Prime Videoが日本でサービスを開始した平成27(2015)年は、「動画配信元年」といわれています。

日本でも各種の配信サービスが充実し、動画や音楽がオンライン配信される時代が本格化しました。オンラインのオンデマンド視聴は日常化し、好きなときに、好きなところで、好きなコンテンツの視聴が可能になりました。

ゲームはアーケード、コンソール、ソーシャル/ゲームアプリを経て、eスポーツへ

平成の時代に大きく楽しみ方が変わったものにゲームがあります。この30年間で、ゲームセンターのようなアーケードで遊ぶものから、各自が家庭で楽しむゲーム機(コンソール)の時代をへて、携帯電話、スマホで遊ぶソーシャルゲームやゲームアプリ中心へ、さらにはeスポーツ勃興の時代を迎えています。

●平成元年(1989)年:ゲームボーイ発売
●平成2年(1990)年:スーパーファミコン発売
●平成6年(1994)年:PlayStation、セガサターン発売
平成初期は、このように家で遊ぶためのゲーム機(コンソール)が数多く発売され、社会現象になりました。各ゲームメーカーは進化する後続機を発売し、私たちのゲーム体験はどんどんリッチなものになっていったのです。

そして、2007年頃からは携帯電話で遊ぶためのソーシャルゲームが流行し、伝統的なゲームメーカー以外のIT事業者がゲームコンテンツを数多く手掛けるようになっていきました。

●平成24(2012)年:パズル&ドラゴンズ 
●平成25(2013)年:モンスターストライク 
●平成26(2014)年:LINE :ディズニー ツムツム
スマートフォンの普及は、ゲームアプリの隆盛をもたらし、国民的大ヒットタイトルが誕生しました。これらは若者だけでなく幅広い世代に訴求したことも特筆的です。

アーケードゲーム、コンソールゲームはそれぞれ、解像度、操作、スピードなど大きく進化を遂げたものの、ゲームの中心はスマートフォン向けゲームに移っていき、プレイヤーの人数、市場規模としても、平成以前からあったアーケード、コンソールゲームを大きく上回ったのです。

●平成28(2016)年:Pokémon GOまた、AR(拡張現実)を利用したPokémon GOも全世界で流行しました。これもスマートフォンの持つ機能特性を十二分に生かしたことがその成功の要因にあるといえそうです。

●平成30(2018)年:日本eスポーツ連合(JeSU)発足

コンテンツとしてのゲーム、その魅力の頂点のひとつは協力・対戦型ゲームにあるといっても過言ではありません。インターネットがその在り方にさらなる進化をもたらしています。現在、ゲームを実況中継する動画が人気を集め、ゲームをスポーツとして競技するeスポーツ市場も急伸しています。

複数・双方向でのつながり、リアルタイムのライブ性、さらには体験の解像度の高まりといった要素が、最も明確に表れているコンテンツがゲームなのかもしれません。

サブスクリプションはマネタイズ問題の解決となるか?

「Content」視点の年表

コンテンツ興隆の一方で、コンテンツのつくり手側、コンテンツビジネスとしては、いかにマネタイズしていくかが大きな課題となっています。

所有価値から使用価値、経験価値へシフトする動きが進んでいます。消費者にとって、コンテンツはどのような形にせよ、視聴・鑑賞できれば構わないのです。所有することの意味がどんどん薄れていきました。この動きはコンテンツ、エンターテインメントばかりでなく、シェアリングエコノミーの隆盛につながっていきます。

そこで登場してきたのがサブスクリプション(定額使い放題)モデルです。今や動画や音楽配信のほとんどがサブスクリプションモデルを採用しています。

●平成6(1994)年:IIJ、ダイヤルアップIP接続サービス開始
●平成7(1995)年:テレホーダイ開始
●平成13(2001)年:Yahoo!BBのADSL接続
インターネット自体、かつてダイヤルアップ接続時代は従量課金制であり、電話でつなげればつないだだけ電話料金がかかりました。そこで深夜早朝の時間帯(午後11時から翌日8時まで)定額使い放題サービスのテレホーダイが導入されました。サブスクリプションモデルの先駆けともいえるでしょう。Yahoo!BBのADSL導入以降、定額のインターネット常時接続サービスが一般的になりました。

サブスクリプションサービスは、今やファッション、自動車、家電、ラーメン、ランチ、コーヒーなど飲食、シャンプー、眼鏡までにも及んでいます。2000年代半ばに、基本的なサービスや製品は無料で提供し、高度で特別な機能について課金するという、フリーミアムモデルが注目を集めましたが、ゲームなどを除いてはマネタイズの難しさを解決する鍵とはなりませんでした。

サブスクリプションサービスではお客さまに継続的にサービスを使ってもらい、顧客生涯価値(Life Time Value)を高める努力が不可欠です。NetflixやAmazon Prime Videoなどの動画配信サービスもオリジナル番組の制作に注力し、顧客の囲い込みを図っています。

いつでもどこでも自分の好きなコンテンツに接することができるのは、今の若い世代にとって当たり前のことで、メディアやコンテンツ産業が満たすべき最低条件となっています。この“豊かさ”に慣れてしまった若い世代のニーズに応えながら、さらにコンテンツの価値に見合ったマネタイズを模索していくことが、これからのメディアにとって大きな課題となっていきます。

『情報メディア白書2019』では、紙幅の都合によって本記事内で紹介できなかった年表の完全版を採録しております。ぜひともお手に取ってご確認いただければ幸いです。