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日本社会にSDGsは根付くか?〜第2回電通SDGs生活者調査からの考察

2019/05/16

SDGs(持続的な開発目標)が国連で提唱されたのは2015年9月のことでした。電通では2018年の2月にSDGsの認知や意識について第1回となる生活者へのアンケート調査を行いました。それからほぼ1年後に当たる今年の2月に、規模や質問内容を一部変更した上で「第2回電通SDGs生活者調査」を行いました。今回の調査の結果や得られた考察について連載を行っていきます。

【目次】
▼SDGs認知率16%!
▼学生の間ではSDGsは確実に浸透している
▼「認知率」が全てか?実は6割の人が何らかをやっている!
▼SDGsに取り組んでいるのは誰か?「三つの層」の発見
▼日本のSDGs普及にむけて

 

SDGs認知率16%!

今回の調査でのSDGsの名称認知率は全国平均値で16.0%でした。第1回の調査では14.8%だったので1.2ポイント上昇しました。

この16.0%という水準を高いと見るか低いと見るかはいろいろな考え方がありますが、去年からさして変わらない点を踏まえると、やはりこれはまだ普及途上の低いスコアであると考えます。

学生の間ではSDGsは確実に浸透している

それでは日本のSDGs認知率は低いままなのでしょうか。

実は第1回と第2回で大きく様相が異なるのは学生のSDGs認知率です。実に10ポイント以上上昇を示しているのです。

以下の図表4から分かるように、これは明らかに学校の授業や課題で触れられた結果といえます。実際にSDGsについての情報元を尋ねた質問では、学校を経由したとみられる回答が非常に多いのです。

日本の人口構造は少子高齢ですから、学生の認知度が上がっても、日本全体の認知度に与えるインパクトは、今はまだ限定的です。しかし、この傾向が進めば認知度は確実に上がっていくでしょう。認知率16%というスコアは、小さな変化から大きく変化するティッピングポイント目前という見方もできます。

「認知率」が全てか?実は6割の人が何らかをやっている!

さらに、SDGsの「認知率」のスコアに一喜一憂するだけでいいのか?という問題意識もあります。「SDGs」は17の達成すべき目標で構成されていますから、その取り組みこそが肝要です。つまり、SDGsというものは、知っているだけでは不十分で、取り組んでこそ意味のある世界です。

日本において、節電(目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に含まれる)は、多くの企業や家庭で取り入れられているし、ごみの分別習慣(目標12「つくる責任 つかう責任」に含まれる)もかなり浸透してきたと思います。

そこで、今回の調査では、SDGsの認知・非認知にかかわらず、調査対象者に17の目標それぞれについてどの程度関与しているかを尋ねてみました。17目標の内容を説明した上で
・この目標に取り組んでいる企業の商品を買ったり投資をしたりしているか
・この目標のために活動しているNPOや団体に参加しているか
・この目標のために個人的に実践しているか

を尋ねたのです。いずれかにイエスと答えた人は、本人のSDGs認知有無とは関係なく、その目標に関与していると見なすことにしました。

その結果判明したのは、6割の人は少なくとも一つ以上は何らかの目標に向けて取り組んでいたということです。取り組んでいる目標を件数ごとの分布で見ると以下のようになります。

「何にも取り組んでいない」と答えた人が、39.7%。取り組みの、1個が13.1%、2個が10.9%、3個が9.3%、4個以上が27%という結果になりました。

 

SDGsに取り組んでいるのは誰か?「三つの層」の発見

今回の調査で浮き彫りになったのはSDGsに関わる「三つの層」、すなわち「意識的実行層」「知識先行層」「無意識実行層」について説明します。

「意識的実行層」とは、SDGsの知識もあり17の目標について多くの取り組みを行っている層。男性の20~30代と70代。学生と企業の総務部署、部長クラスに多く存在。

「知識先行層」は、SDGsについて知ってはいるが取り組みが少ない層。男性全般、10代、学生と会社員に多い。役職としては課長代理や係長クラス。

「無意識実行層」は、SDGsは知らないが、実は17の目標について多くの取り組みを行っている層。女性60~70代で専業主婦と主夫に多く存在。

SDGsという言葉を知っている16%の内、二つの層「意識的実行層」(6.5%)と「知識先行層」(9.5%)が存在します。

「無意識実行層」と呼んでいる「SDGsのことは知らなかったが知らず知らずのうちにSDGsの課題に取り組んでいる人」が少なからずいる(20.6%)ことが発見です。これとは反対に「SDGsという名称は知っているが取り組みはまだまだ」(9.5%)という人も存在します。「無意識実行層」だけでもSDGs認知率より多くなるのです。「持続可能な世界」の実現のためには無意識実行層の行動も力となります。

そもそもSDGsの認知者は男性に多いのです。それはビジネスの場での浸透が先行してきたことと無縁ではないでしょう。例えば経団連が「企業憲章」にSDGsについての文言を追加したのは2017年11月のことです。

しかし「無意識実行層」は10代を除けば他の年代は女性の方が多くなっています。このSDGsの取り組みと女性についての考察は、今後の連載で詳細にお伝えします。

日本のSDGs普及にむけて

日本はSDGsを「やっていない」のではなく、「それらしいことをやってはいたが、その行動がSDGsということを知らない」人が多い、というのが実態です。

したがってSDGsが掲げる世界観そのものにジョイントする余地は日本人に大いにあります。企業や自治体は、SDGsを既に認知している人はもちろんのこと、「無意識実行層」も顧客やステークホルダーとして十分に配慮を行うべき対象となるでしょう。

「無意識実行層」に「皆さんが日々行っているその行動はSDGsというのです」というコミュニケーションを行うことは、企業、自治体、顧客など、さまざまなステークホルダーの間で、SDGsという共通言語を共有する足がかりになります。そうすれば企業や自治体にとってブランディングやエンゲージメント形成に資することにもなるでしょう。

生活者においても、「SDGs」を知る機会さえあれば、その世界観には多くの人が共感します。したがってSDGs認知後は、SDGsに取り組む企業や自治体にも期待は高まります。今回の調査においても、回答者には調査票を通じてSDGsをお知らせした上で、SDGsへの取り組み意欲を質問しました。次データはその一例ですが、特に若い人に「そう思う」が高い点が注目です。

【電通 Team SDGs】
SDGsの達成に向けたイノベーションを起こす各種ソリューションの研究開発や関連情報の発信を行う社内部署横断チームです。

【調査概要】
調査名:第2回SDGsに関する生活者調査
対象エリア:日本全国
対象条件:10~70代の男女
サンプル数:6576人
分析に当たっては、都道府県ごとの人口比および日本の性年齢構成比をウェイトバック集計した。
調査手法:インターネット調査
調査期間:2019年2月7~18日
調査機関:電通マクロミルインサイト
第1回調査との大きな相違点は、調査サンプル数を大幅に増やし、47都道府県別の分析を可能にしたことです。そのために前回とサンプル割り付け条件が異なることになり、第1回と第2回の全国平均値(GT値)を参考値として引用している箇所があります。