【続】ろーかる・ぐるぐるNo.158
コンセプトから浮かぶストーリー
2019/06/06
よく「落研出身?」と聞かれます。どうも口調がそれっぽいようです。でもビジネスプレゼンテーションには、ちょっと軽すぎますよね。反省、反省。
たしかに落語は好きで、寄席にもたまに遊びにいきます。聞いているだけで鮮やかに浮かぶストーリーに笑ったり、泣いたり。そんな極上の話芸を、いつでも気軽に楽しめる定席が四つもある東京は、ホントに恵まれています。
先日も浅草演芸ホールを堪能し、その近所にある高校の先輩のご実家が営む食堂で、日の高いうちからビールをいただきました。
嗚呼、何という幸せでしょう!
ところで、このコラムでも何度かお話ししているように、世の中の常識を覆す「コンセプト」を生むためには、ふたつの相互作用が必要です。ひとつは「ターゲット」と「商品・サービス」の行ったり、来たり。その商品やサービスの力でターゲットの課題を解決するための新しい視点さがしです。
もうひとつが組織や個人の「ビジョン」と目の前にある現実としての「具体策」の間を行ったり、来たりです。コンセプトは単なる「思いつき」ではなく、例えば企業が実現したい「ビジョン」に向けた一手段として機能しなければなりません。
このふたつの相互作用を経て、コンセプトが手に入る瞬間、最終的に全体像として整理されるのが「十字フレーム」です。
実際に商品開発の現場でも、この十字フレームを活用していますが、皆さんに自分で手を動かしてもらうと、どうもそれぞれの「箱」を埋めるだけで精いっぱいになってしまうようです。
しかし、それぞれの箱は単独でなんとなく存在するのではなく、互いに論理的につながっていなければなりません。言い換えると、完成した十字フレームは、自然とそこにひとつの「ストーリー」が浮かび上がるようなものでなければなりません。
「天国のぶた」の十字フレームは上記図に示す通りですが、これはこんな風に読みます。
まだ世の中に存在しない商品は当初、こうしてひとつのストーリーとして示されます。マネジメント職はこれを見て、それを採用するかどうか、判断しなければなりません。
その際、「世の中に玉子好きな甘党がどのくらいのボリュームで存在するか?」とか「世の中に、どんな玉子好きのためのスイーツが存在するのか?(しないのか?)」といったことはデータで裏打ちすることが可能です。
一方、生活者に「『玉子にうっとり』なスイーツを欲しいですか?」と直接聞くのは、あまり意味がありません。自動車が普及していない時代には「もっと速い馬が欲しい」という以上の回答が得られないように、その時点で世の中に存在していない「黄身と砂糖だけでつくったプリン」を想像したうえで評価してもらうことなど、不可能だからです。
ここにマネジメントの難しさがあります。データに基づいたマイナス、ネガティブチェックばかりでは、せっかくの可能性の芽を摘んでしまうからです。
「十字フレーム」だけに、コンセプトの「+(プラス)」側面を評価する度量が求められます。
お後がよろしいようで。
どうぞ、召し上がれ!