【続】ろーかる・ぐるぐるNo.163
フレームワークからアイデアは、生まれません
2019/08/15
夏は夜。月を求めて夜風に吹かれるのもいいですが、「ギョービー」さえあれば屋内だって最高です。
そう、餃子にビール。パリッとした皮を噛むとあふれる肉汁で口の中をヤケドしそうなところに、慌ててビールを流し込む、その繰り返し。お店でも、手作りでも、冷凍食品でも。薄皮でも、モチモチでも。ひとつ、ふたつのつもりが、たちまち3皿、4皿食べちゃうんですから、おかしいですよね。そうなったら雨が降ろうが、槍が降ろうが、もう、お構いなしです。
いつでも、どこでも、誰とでも、もれなく幸せを生む「餃子+ビール」という公式には、頭が下がる思いです。
さてさて。
イノベーティブな事業・商品開発に関するコンサルティングを始めるに当たって、しばしば「最初に作業計画とスケジュールを示してください」と言われます。
そのお気持ちは本当によく分かるのですが、これがなかなか難しいのです。理由は簡単。アイデアは「〇〇をして、次に××をして」という明確な手順を踏んでできるものではないからです。
「何をいまさら!おまえこそ、四つの手順でアイデアはできると説明してきたじゃないか!!」と怒る方もいらっしゃるでしょうが、ちょっと待っていただきたい。
確かに「感じるモード」で材料を集め、「散らかすモード」で今までにない組み合わせを探しまくり、「発見!モード」でそれを言語化し、「磨くモード」で具体策を形にする、その流れは基本です。
しかし例えば「発見!」がうまくいかなくて「感じる」に戻ったり、試しに「磨く」に進んでみたり、現実的には四つの「モード」を行ったり来たりしなければなりません。まさに「ステップ」ではなく、四つの「頭の使い方」(モードの切り替え)を駆使しなければならないのです。
初期のデザイン思考も、考えるべき手順なんて示さず、むしろ「プロセスなんてまるでない!」という感じでした。その代わりに
① あらゆる情報源から洞察を収集する「着想」
② その着想をアイデアに置き換える「発案」
③ そのアイデアから具体的で緻密な行動計画を生み出す「実現」
重なり合うこの三つの空間を行き来する重要性を強調していました。
ところが、そんな曖昧なアプローチでは大規模なコンサルティング業務を受注しづらいからでしょうか、いつの間にやら
「① 課題か需要の発見→②解くべき課題の定義→③アイデア出し→④試作づくり→⑤実施→⑥評価」
といった「明確なステップ」で説明され、そして各ステップ、おのおの〇〇時間をかければ、プロジェクトは成果を上げられます的な「作業計画」がつくられるようになった気がします。
これは、きっと危険な兆候です。その本質を置き去りにして「都合の良いツール」になればなるほど、失望も広がります。
もし「フレームワーク」という言葉が、かの有名な「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」のように、インプットをすれば自動的に答えが出る「思考の枠組み」や「公式」を意味しているなら、やっぱりアイデアはフレームワークから生まれません。
なぜなら、アイデアを考える現場では行き詰まるたびに、デザイン思考的に言えば「着想」「発案」「実現」という三つの空間を、先述のように、ぐるぐる思考的に言えば四つの「モード」を、とにかく「行ったり、来たり」しなければならないからです。数式を解き進むように直線的な進行管理なんて、ほぼ不可能なのです。
「ご理解いただけましたか?」
「えっ!?分かったけど、プロジェクト予算を確保するためにも、やっぱり『作業計画とスケジュール』が欲しいです」
って…う~む、参ったなぁ。
どうぞ、召し上がれ!