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ゴールデン・スポーツイヤーズNo.5

共生社会のために3年間で「何を遺すか」

2019/09/26

3年間を通じて「何を遺すか」

共生社会におけるコミュニケーションを考える機会に

東京2020大会はダイバーシティーやインクルージョンの醸成も期待されます。その実現に何が必要か、冬季パラリンピックの金メダリストで、日本障がい者スポーツ協会理事などを務める大日方邦子氏が答えます。

大日方邦子氏 冬季パラリンピック アルペンスキー金メダリスト

譲りたい時の意思表示

ソフト面の進化を

ダイバーシティーやインクルージョンの意識が高まる中で、国際大会が連続するのは非常に良いタイミングだと思います。なぜなら、この3年間は国籍も年齢も性別も違うさまざまな方が来日しますよね。その人たちが「スポーツ」という一つのステージを通じて関わります。これが重要で、お互いに多様性を認め合わないとうまくいきません。多様な人が同じステージで力を合わせるのは絶好のチャンスです。

特に期待するのはソフト面です。バリアフリーなどのハード面だけでなく、それを使う人のリテラシーやマナー、「どう譲り合えばいいのか」といったコミュニケーションを考える機会になればと思います。

例えば、多機能トイレは増えていますが、みんなが「数あるトイレのうちのひとつ」として利用してしまえば意味がない。ここしか使えない人が優先されるには、どうすればよいか。あるいは“譲りたい”と思った人がどう意思表示をすればいいのか。そのコミュニケーションを誰かがリードしていくべきです。外国人への対応も同じことがいえます。

パラ卓球の土井健太郎選手(D2C所属)と共に、競技の魅力や見どころを紹介する大日方氏(8月20日、「電通パラ・イニシアチブ主催『パラ検!』」で)
パラ卓球の土井健太郎選手(D2C所属)と共に、競技の魅力や見どころを紹介する大日方氏(8月20日、「電通パラ・イニシアチブ主催『パラ検!』」で)

まず遺すものを考え

3年間を逆算してほしい

大切なのは、成功例や失敗例を発信して横展開すること。国際大会が3年続くことでトライし続けられます。成功例・失敗例を積み重ねていけるとよいですね。企業にも自治体にも、いろいろな波及があるはずです。

レガシーは結果として何が“遺るか”ではなく、“遺す”のが前提だと思います。まず何を遺すか考え、そこから逆算して計画する。この3年間、スポーツを通じて多様性に向けた要素をどう遺すか。その意識で取り組むことが必要ではないでしょうか。

8月24日に東京の墨田区総合体育館と錦糸公園で実施した「東京2020 Let’s 55 ~レッツゴーゴー~ with すみだ パラリンピック1年前スペシャル」の様子。来訪者はパラリンピックで実施する15競技15種目の体験を通じて、競技への理解を深めた

東京2020オリンピック・パラリンピック

ミニ情報

東京2020オリンピックの開催日程は2020年7月24日~8月9日。予定されているのは33競技339種目でオリンピック史上最多。うち、野球・ソフトボール、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンの5競技18種目は今回からの新競技となる。

東京2020パラリンピックの開催日程は2020年8月25日~9月6日。22競技540種目が予定され、バドミントンとテコンドーは今回からの新競技となる。回を重ねるごとに選手層が増し、大会レベルが高くなっている中、日本選手の活躍に期待したい。

会場は1964年東京大会のレガシーを引き継ぐ「ヘリテッジゾーン」、都市の未来を象徴する「東京ベイゾーン」の二つのゾーンが設定されており、東京オリンピックが42会場、東京パラリンピックが21会場。また、一部競技は北海道、宮城、福島など関東エリア外で開催される。本紙の連載企画「オリンピック・パラリンピック舞台巡礼」でも順次紹介するので、ぜひ参照いただきたい。