loading...
MENU

あたらしいつくりかた

Dentsu Lab Tokyo × Dentsu Craft Tokyo テクノロジーとアイデアのおいしい関係No.1

2019/10/07

あたらしいつくりかた

「この仕事、アウトプットがどうなるか分からないんだけど、ちょっと相談乗ってくれる?」

社内の営業担当者から僕のもとに来る相談は、おおむねこんな感じです。ここ数年、クライアントの課題が複雑になってきて、こういったケースが増えたように思います。そうなると、どのような状況にも対応できるように、マスクリエーティブが得意な人、デジタル関係に詳しい人、PRに長けた人などを集め、万全な体制をつくる必要があります。

従来の広告術がカンタンには効かなくなり、求められるソリューションの幅が広がったことで、アイデアの領域はかなり広がりました。

そして今、アイデアの「つくりかた」も変化を求められるようになってきたと思います。

DLT

Dentsu Lab Tokyoは、2015年9月に立ち上げられた組織です。
主にテクノロジーを起点としたコミュニケーション・アイデアで、クライアントや世の中の課題を解決するのがミッションになります。

この連載では、最近の世の中や業界の変化を背景に、僕たちの考える、「テクノロジーとアイデアのおいしい関係」を紹介していきます。
今回のテーマは、「あたらしいつくりかた」です。


変わる世の中、変わる私たち

インターネットの誕生、SNSや制作ツールの普及によって広告業界にもたらされた影響は、情報を伝えやすくなったり、シェアしてもらいやすくなったという良い側面ばかりではありません。

スマホを持った全ての人がメディア化、クリエーター化したことで、プロとしての僕たちは、ネコ動画をアップする人やおもしろツイートで世間を沸かせる、「世の中の才能」たちとの戦いを強いられるようになりました。

ネコ画像

今や誰もが情報を発信できる時代、特別だと思っていた広告業界のアイデアも、「情報」という視点から見れば、誰もが同じ土俵に並んでいるわけです。予算はなくとも、制約のないものの方がおもしろいことも多い。これがなかなか手ごわいのです。

スピード感とインパクト。

今までの広告制作フローではますます太刀打ちできない状況になってきています。

クライアントの悩みは加速する一方で、僕たちは、これまでの広告クリエーティブの型から脱却する必要がありました。

広告+テクノロジー=?

ここ10年ほどで、メディアアートに代表されるようなテクノロジーを使った表現が、より安価に実現できるようになり、また、実施に堪え得る精度を獲得したことで、広告業界にも大きな変化が訪れました。

「メッセージ」から「エクスペリエンス」への変化です。

「メッセージ」とは、企業の言いたいことを、伝統的な広告的手法で人々に伝えること。
一方、「エクスペリエンス」とは、言葉で伝えるだけでなく、いわゆるイベントにもとどまることなく、可視化し、再現し、体験を共有し、時には利便性の提供や視点の拡張など、さまざまな体験手法を通して、人々の心を動かすということです。

時代がソーシャルネットワーク化したことで、人々が、より「リアル」を求めるようになったという背景もその変化の理由のひとつかもしれません。

こうして、メソッドとしての「つくりかた」が進化しました。


実現しないアイデアは、存在しないのと同じだ。

DCT

2019年3月、中目黒にDentsu Craft TokyoというDentsu Lab Tokyoの姉妹組織が立ち上がりました。

「実現しないアイデアは、存在しないのと同じだ。」という考えのもと、あらゆるアイデアを実現するために、アーティスト、クリエーティブ・テクノロジスト、デザイナー、テクニカル・ディレクター、プログラマー、リサーチャー、プロデューサーといったさまざまな才能を集めたチームです。これは、チームビルディングという観点から「つくりかた」を見直した結果です。

また、制作フローとしての「つくりかた」も変わりました。
デジタルやテクノロジーが普及した今も、広告業界はどうしてもこれまでのCMやグラフィックの制作フローを踏襲しがちです。

従来型

これが従来型の制作フローです。

そして、表現としてのインパクトや、新規性、スピード感を獲得するための、私たちDentsu Lab TokyoとDentsu Craft Tokyoの制作フローは次のような感じです。

新しい制作フロー

こんなアイデアどうだろう?でもうまく伝わらないな。じゃあ、つくってみよう。やっぱりだめだ。ここを改善したら…。あ、いいかも!これならいける…!

こんな感じで企画フェーズと制作フェーズを行ったり来たりしながら、日々答えを探っています。

僕の関わった事例ですが、ヤッホーブルーイング さんの「先輩風壱号」(*1)と、Dentsu Lab TokyoのR&Dとして自主開発した「℃uration」(*2)は、プロトタイピングをしながら制作しました。

先輩風
*1) 3つのAIを組み合わせて2000超の先輩風ワードを検出し、物理的に「先輩風」を発生させる装置。
Curation
*2) 数万箇所の気象観測所の気象データとWeb上にアップロードされた画像を、タイムスタンプとジオタグを元にひも付け、ディープラーニングにより学習し、画像から気温・湿度を推定するシステム。「いま」の気温・湿度と同じ情報を持つ絵画を、美術館の公開データベースから探し出す展示を行った。

新しい技術を使った何かをつくろうとする時、事例探しに陥ってしまうケースがありますが、前例がある時点でニュースにはなりません。特にテクノロジー起点のアイデアの場合、紙の資料では、細部の動きやインタラクションが伝わりません。その結果、せっかくの良いアイデアも産声を上げることなく消えていく…という悲劇も起こり得ます。

プロトタイピングは、非常に有効な「つくりかた」のソリューションなのです。
また、これはプログラミングに限ったことではありません。

実は、先に述べたネコ動画やおもしろツイートの人の多くは、このやり方をとっています。
撮ってみる。編集してみる。加工してみる。作ってみる。描いてみる。ツイートしてみる。改善してみる。彼らは日常的にこの「やってみる」を繰り返し、その中でヒットを生んでいます。彼らのクリエーティブには、そんな軽やかさを感じます。

人の心を動かすような驚くべき表現は、すでに「つくりかた」の発明から始まっているとも言えます。


それでも変わらないもの

ここまで、変わり続ける世の中、変わり続ける「つくりかた」という話をしてきましたが、それでもやっぱり変わらないものもあります。

それは、「人間の根本的な欲求や感情」です。

あくまでも、表現は人と人の間に介在するもの。人の心を動かすには、その人の根っこにある感情を揺り動かす視点や気づきが不可欠です。テクノロジーという、一見、人間とは真逆なツールを使う立場だからこそ、より意識しなくてはならないとも思っています。

最後に、これから紹介していくテーマを、少しだけお伝えしておきます。
・AIとデータクリエーティブ
・デザインとテクノロジー
・コミュニケーションとテクノロジー
・VR・MR・ARの可能性
・プロデュース術
このコラムで語られるのは、各領域のスペシャリストたちが考える「つくりかた」の最新形です。

「仕事にAIを使ってみたいんだけど、どうすればいいの?」
「デザイナーがテクノロジーに関わるには、どういった心構えが必要なの?」

もしかしたら、そんな疑問の答えが見つかるかもしれません。
僕自身、一読者としてワクワクしています。
ぜひ、ご期待ください。