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2018年12月に20カ国・地域で実施した「ジャパンブランド調査2019」から、これからのインバウンドビジネスのヒントを探る本連載。今回は「大阪・関西万博に対する意識」や、「興味関心がある日本のモノ・コト」などの調査結果を参考に、2020年以降のインバウンドチャンスについて考えてみたいと思います。

大阪・関西万博を知っている人は約半数。約4割の人が訪問意向あり!

2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)が大阪で開催されます。大阪での開催は55年ぶり。大きな話題となり、さまざまな動向がニュースになっています。

注目しているのは日本だけではないようで、今回の調査で大阪・関西万博について聞いたところ、「2025年に万博が大阪で開催されることを知っている人」は、20カ国・地域全体で49.5%。実に約半数の人が知っていることが明らかになりました。

大阪・関西万博に対する意識

そして、「訪日して万博を見に行きたい」という人も40.3%いることが分かりました(「日本で開催されることについて知っているし、見に行く予定だ」と「日本で開催されることについて知っているし、見に行きたい」の合計)。

エリア別で見ると、アジア、特にASEANエリアでは、50.2%と約半数の人が「訪日して万博を見に行きたい」意向があります。最も意向が高い国はベトナムで58.7%。6割弱もの人の、訪日のきっかけになり得ることが分かりました。この興味関心の背景には何があるのでしょうか?

大阪・関西万博への関心が高い理由は、日本の技術への興味の表れ?

優れていると思う日本のモノ・コト トップ10

「優れていると思う日本のモノ・コト」を聞いた調査では、「日本食」がトップ。2位が「日本のロボット工学」、3位が「日本のアニメ・漫画」となりました。

上位10項目を見ると、半分以上が技術関連であることが分かります。エリア別に見ると、特にASEANで日本の技術に対する評価が高く、トップに「日本のロボット工学」、2位に「日本食」、3位に「日本の自動車・バイク」がランクインしていました。

日本の技術力は高い

また「日本の技術力は高い」と思っている人が全体の86.5%という結果も出ており、技術先進国というイメージもまだまだ強いことが分かります。ここでもASEANで特にスコアが高く92.7%と、ほぼ全員が日本に「技術力が高い」イメージを持っていました。

このような日本の技術力への評価の高さが、大阪・関西万博の関心へとつながっているのではないでしょうか。

ファッション、アニメ・漫画がきっかけに?広がるインバウンドの可能性

興味関心がある日本のモノ・コト トップ10

では、今後、どのようなことを求めて日本にやって来る人が増えるのでしょうか?

「興味関心がある日本のモノ・コト」を見てみると、温泉などの観光資源の他に、「日本のファッション」や「日本のキャラクター」「日本のデザイン」といった、現代のカルチャーを挙げる人が多いことに気がつきます。

特に「日本のファッション」は、アジアでスコアが高い他、イギリスでも5位にランクインしています。同様に「日本のデザイン」はカナダで5位になるなど、訪日意向や関心がそこまで高くない国でも関心を集めていました。

第3回では、「日本でやりたいことトップ5」の中に「ショッピング」がランクインしていることを紹介しましたが、「日本食」はもちろん「温泉」や「四季」なども「興味関心がある日本のモノ・コト」とリンクしています。

日本のファッションやデザインセンスを気に入った人が、「温泉など関心のあるコトを本場で体験するとともに、関心のあるモノを本場で買いたい」と思い、訪日する機会が増えていくのではないでしょうか。

例えばすでに、「スラムダンク」や「君の名は」といったアニメに出てくる“場所”に、多くの外国人が訪れていることがニュースになっています(アニメ・漫画は「興味関心がある日本のモノ・コト」の11位)。

従来の観光資源だけでなく、アニメ・漫画、ファッション、キャラクター、デザインといった現代の日本カルチャーをきっかけに、さまざまな目的で訪れる人が増える―そこに日本ならではのインバウンドの幅広い可能性が感じられます。

さて、本連載の3~5回では、訪日観光客の国籍や目的が多様化する中でも、「日本食」が非常に大きな訪日要因になっていると述べました。

そしてこれからは、大阪・関西万博への関心の高さの背景にもある「日本の技術力」、そして、その技術力や、関心が高まるデザイン性やセンスを生かした日本のモノを買う、という行為が、新たな訪日要因として浮かび上がってきます。

次回以降は、その「日本の製品」と「日本食」について、掘り下げてみたいと思います。
 


【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社電通 ジャパンブランドプロジェクトチーム
japanbrand@dentsu.co.jp

ジャパンブランド調査ハブページ
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/japan_brand/

【電通ジャパンブランド調査 実施目的】
2011年、東日本大震災で日本の農水産物や訪日旅行に風評被害が発生した際に、ジャパンブランドが世界でどのように評価されたかを把握するために始まった電通の独自調査。2022年、調査設計・分析アプローチおよびアウトプットを抜本的再構築し、専門性を高める全社横断プロジェクト活動へと進化。2025年、一般向けナレッジポートフォリオを新たに企画・構築し、生活者インサイトに立脚した社会的価値の創出を目指す。
ジャパンブランド調査では、訪日観光や地方創生、食分野、日本産品、コンテンツ、価値観、ライフスタイル、社会潮流などジャパンブランド全般に関する海外生活者の意識と実態を定期的に把握。変わりゆく生活者の気持ちとジャパンブランドの課題・可能性を可視化し、複雑化が進む企業活動に寄与するとともに、日本社会における異文化理解の促進にも貢献する。

【電通ジャパンブランド調査2019 調査概要】
・対象エリア:20カ国・地域(中国本土、香港、台湾、韓国、インド、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、オーストラリア、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、トルコ)
・サンプル数:6,600(内訳:アメリカ 600、中国本土 600、その他の国・地域 各300)
・調査期間:2018年12月
・対象者条件:20~59歳の男女(中間所得層以上)
・調査手法:インターネット調査
・調査機関:株式会社電通(調査主体)、株式会社ビデオリサーチ(実施協力)

【注記・免責事項】
※1:中国本土の対象エリアは主に1線都市、オーストラリアはシドニー都市圏、東南アジアは主にメトロポリタンエリアに限定。
※2:中間所得層の定義:OECD統計などによる各国平均所得額、および社会階層区分(SEC)をもとに各国ごとに条件を設定。
※3:各国・地域とも性年代別に均等割付で標本収集し、人口構成比に合わせてウエイトバック集計を実施。
※4:本調査における構成比は小数点以下第2位(一部整数表示の場合は小数点以下第1位)を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
※5:本調査レポートおよびウェブサイトからの情報発信における対象国・地域の名称表記は、従来からの日本政府の見解、日本の社会通念やビジネス慣習に沿ったものです。
※6:本調査の図表作成において、分析対象となる国・地域名は一部例外を除き、国際基準ISOカントリーコード(ISO 3166-1 alpha-2/3)を使用しています。
アメリカ/US/USA、カナダ/CA/CAN、オーストラリア/AU/AUS、イギリス/UK/GBR、ドイツ/DE/DEU、フランス/FR/FRA、イタリア/IT/ITA、スペイン/ES/ESP、フィンランド/FI/FIN、アラブ首長国連邦/UAE、サウジアラビア/SA/SAU、インド/IN/IND、インドネシア/ID/IDN、シンガポール/SG/SGP、マレーシア/MY/MYS、フィリピン/PH/PHL、タイ/TH/THA、ベトナム/VN/VNM、中国本土/CN/CHN、香港/HK/HKG、台湾/TW/TWN、韓国/KR/KOR、トルコ/TR
※7:本調査における国・地域の名称表記は、統計上または分析上の便宜を目的としており、いかなる政治的立場や見解を示すものではありません。
※8:本調査で使用した地図(世界地図および日本地図)は分析内容やページのレイアウトに合わせて一部加工・トリミングを行っており、必ずしも国境線および国土範囲を正確に反映したものとは限りません。

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著者

中里 桂

中里 桂

株式会社電通

第4マーケティング局

コミュニケーション・ディレクター

入社以来、マーケティングセクションに所属。食品、飲料、化粧品、アパレルなど多岐にわたる分野の企業や官公庁のコミュニケーションプランニングを担当。官公庁・自治体の海外広報案件にも数多く取り組んできた。2013年から「電通ジャパンブランド調査」の実施を担当。電通 チーム・クールジャパン メンバー。

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