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ジャパンブランド調査2019から考える、今の日本・これからの日本No.6

Made in JAPANは強みになるか?~日本ブランドの今とこれから~

2019/11/25

本連載の第3回で、日本でやりたいことの上位に「ショッピング」がランクインしていることを紹介しました。銀座を歩けばショッピングに興じる大勢の外国人観光客に出会いますし、ガチャガチャが話題になったり、日本の包丁や扇子がお土産に人気だという話も聞きます。

かつて世界を席巻したMade in JAPANですが、訪日や越境ECで購入する機会が増えた今、世界からどのように評価されているのでしょうか? 

2018年12月に20カ国・地域で実施した「ジャパンブランド調査2019」から、これからのインバウンドビジネスのヒントを探る本連載。今回は「Made in JAPAN」に焦点を当て、深掘りしたいと思います。

「日本の製品は優れている」という人が8割超え!圧倒的なMade in JAPANへの評価

日本の製品は優れているグラフ

第2回でも紹介しましたが、日本の印象について、「日本の製品は優れていると思うかどうか」を聞いたところ、20カ国・地域全体では82.3%の人が「優れていると思う」と回答しました。

特にASEANエリアではスコアが9割を超え、圧倒的な評価を得ていることが分かります。また欧州でも8割の人が評価。日本製品が多く流通するアジアだけでなく、世界的に評価されていることが分かりました。

では、具体的にはどのような人が評価しているのでしょうか?詳しく見ていくと、訪日経験のある人の評価が高い傾向がありました。実際に日本を訪れて日本製品を体験し、気に入ったため購入して帰る、という人も多く、一時期爆買いで話題になった温水洗浄便座もその一つです。

また、日本の「食」や「伝統」について、「優れている」「興味がある」と回答した人たちでも評価が高くなっています。カップラーメンやお菓子、浴衣や扇子などもお土産として人気になってきていますが、日本の食品や伝統的なデザインを経験する機会が増えたことも、日本の製品への評価に影響しているのかもしれません。

Made in JAPANのイメージは、“最先端”から“品質”へ

Made in JAPANイメージ トップ3

Made in JAPANのイメージを聞いてみると、全体では「ハイテク」がトップ。次いで「高性能」「信頼できる」という結果になりました。

エリアによってややイメージに差があり、特に東アジアエリアでは「丁寧に作られていそう」「繊細な/細やかな」「信頼できる」と他のエリアとは異なった印象になっています。

また、欧米エリアでは「ハイテク」「高性能」「信頼できる」となり、全体の傾向と同じですが、全体的にスコアが低く、日本製品に対するイメージが乏しいことがうかがえます。

これは日本製品の流通量や製品内容に関係していると思われますが、幅広く日本のものが浸透している東アジアで、“技術”ではなく“ものづくりの姿勢”とそれに裏打ちされた“品質”が評価されていることが印象的です。

また2015年の調査と比較すると、2015年は1位の「ハイテク」が2位の「高性能」よりも10ポイント以上高いスコアとなっており、5.5ポイントしか差がない今と比較して“最先端”イメージが非常に強かったことが分かります。

“最先端”のイメージが弱まったのは、韓国や中国をはじめとしたアジア諸国の技術力の向上といった、外部的な要因もあると考えられます。

競合との比較、という視点で見ると、Made in JAPANブランドは性能や品質における評価は高いのですが、「おしゃれな印象」については評価が低い、という結果も出ています。日本製品は世界から評価されていますが、より多くの人に使ってもらうためには、まだまだ課題がありそうです。

今後ポテンシャルが高い製品カテゴリーは「健康食品」と「ジュエリー」?

日本のブランドの製品カテゴリー

では、どのカテゴリーで日本の製品が求められているのでしょうか?経験や興味のスコアが高いものは、やはり従来強い分野である「TV、オーディオなどのAV機器」「自動車、バイクなどの輸送機器」。それを追いかけるのが「ラーメンなどのインスタント食品」「化粧品」です。それ以外のカテゴリーは経験が3割にも届かず、まだ少ないことが分かります。

一方、今後ポテンシャルがあると思われる(興味が経験を上回る)製品カテゴリーは、「健康食品・飲料」と「ジュエリー」でした。国・地域別で見ると、「健康食品・飲料」のスコアが高いのは台湾(63.3%)、「ジュエリー」はフィリピン(30.0%)となっています。

また、別の視点として今後の意向(=今自国にはあまりない・まったくないが、これからもっと自国で日本のブランドのものが買えるようになったらいいと思う製品カテゴリー)を聞いてみると、国・地域によって傾向が異なりました。

例えば、欧米エリアなど、従来日本製が強い分野である「AV機器」や「輸送機器」をトップに挙げる国々も多い一方、東アジアの国・地域とベトナムでは「医薬品」がトップ。

また、シンガポールでは「インスタント食品」、タイでは「菓子」、インドネシアでは「アパレル・ファッション」、イタリアでは「化粧品」、ロシアでは「健康食品・飲料」がトップという結果でした。約半数の国・地域では従来日本が強かった「AV機器」や「輸送機器」とは違う多様なカテゴリーへの需要が生まれていることが分かり、今まで以上に幅広い日本製品のポテンシャルを感じさせる結果となりました。

かつて世界を席巻したジャパンブランドですが、外部環境の変化や日本製品の体験が増えることによってそのイメージは変わり、品質への信頼という強みがある半面、まだ経験の幅が狭く、おしゃれなイメージで競合に負けているといった課題も見える結果となりました。

このようなさまざまな日本製品に対する興味が訪日観光客をさらに増やし、インバウンドによる日本製品の体験の多様化がさらにジャパンブランドのイメージに影響していくと考えられます。

変わっていくジャパンブランド、そしてインバウンドとの関係性に、今後も注目していきたいと思います。


ジャパンブランド調査2019の概要
・目的:食や観光、日本産品など「ジャパンブランド」全般に関する海外消費者の意識と実態を把握する
・対象エリア:20カ国・地域
中国(グループA=北京、上海、広州、グループB=深圳、天津、重慶、蘇州、武漢、成都、杭州、大連、西安、青島)、香港、台湾、韓国、インド、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、オーストラリア、アメリカ(北東部・中西部・南部・西部)、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、トルコ
※今回は、過去の調査の推移で変化の少なかったブラジルを除外し、インバウンドで注目が高まるトルコを追加しました。
・調査手法:インターネット調査
・対象者条件:20~59歳の男女 *中間所得層以上
 *「中間所得者層」の定義(収入条件):OECD統計などによる各国平均所得額、および社会階層区分(SEC)をもとに各国ごとに条件を設定
・サンプル数:中国はA・B300名ずつで計600名、アメリカは600名、それ以外の地域は各300名の計6,600名
・調査期間:2018年12月
・調査機関:株式会社ビデオリサーチ