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キメゾーの「デジタルソリューションがよく分かっていねえ」No.5

エバンジェリストファインダー 
(プロモーション事業局 平岡真吾)

2014/01/28

商品/サービスとインフルエンサーをマッチングするソリューション「EVANGELIST FINDER」。 その正体に迫るべく、全く何も分かっていないキメゾーが、担当者の電通プロモーション事業局平岡真吾さんに話を伺ってきました。

 

──要は、いい感じのインフルエンサーを探して、その人のブログとかで「今回、(企業名)さんのご紹介でこの商品を使ってみたんですけど…」的に宣伝してもらえるやつなんだよな。

平岡:インフルエンサーにやってもらうことは大雑把に言うと、そうですね。このソリューションはその前段階の商品やサービスに適したインフルエンサーを誰でも簡単に探せるところにユニークネスがあります。

──まあこの結論に達するまでに5日間徹夜したけどな。これって電通さんのオリジナルなのか?

平岡:そうですね。他でも、読者モデルブロガーを検索できるサイトや仕組みはありますが、それって、ただブロガーを性別とか年齢とかで探せるいわゆる「女の子検索システム」なんです。

EVANGELIST FINDERは、あくまでクライアントやプランナー視点で、PRしたい商品やサービスの種別やPR手法、露出メディア、予算などをインプットすると、それらをPRしてもらうのに最適なインフルエンサーの組み合わせと、それによる想定効果を瞬時に算出してくれる「ソリューション検索システム」なんです。露出メディアにしてもブログに限らずTwitter、Facebook、YouTubeなど様々なSNSを選択することもできます。アジアのインフルエンサーにおいてはWeiboや他国のブログにも対応しています。そこまでメディアや地域を全網羅した検索システムは日本では他にはないかなと思います。

──どういうきっかけでこのシステムを思いついたんだ?少しぐらいは俺の存在もそこに影響を与えてるんじゃないのか?

平岡:(微笑みながら)違いますね。もともと2004年から4年半ほど電通関西のIC局でデジタルメディアをバイイングする部署にいたんです。ちょうどその頃ブログプロモーションが流行っていた時期で、その頃からブロガーを活用したプロモーションをちょくちょくやってきたんですけど、運用しているうちに課題がたくさん見つかって。

タレント並みのページビュー(PV)を持つファッションブロガーを、食品の案件で起用してみたら思うように効果が出なかったり、また当時ブログの月間PVで影響力を測ることが多かったのですが、記事単位のPVで見ないと厳密に影響力を測ることはできないことが分かってきたり。いろんな作業に関わっていく中で、案件に適したブロガーの選出や効果の算出の仕方など、クライアントにとって(広告会社にとっても)ブラックボックスなことが多いなと感じてきました。

案件とブロガーの相性に関しては特にそうですね。ブログ会社にキャスティングをお願いしても、たまに「なんでこの案件にこの人が」っていうのが上がってくるんです。高級車の案件にプチプラの記事をよく書いている人が起用されるとか。それって、その記事を読んでいる読者は違和感を感じると思うはずです。ただ影響力があるというだけでなく、その商品、サービスに対してのファンであり、欲を言えばその道の権威であるような人がおすすめしないとダメだと思うんです。そういうブラックボックスを可視化したいという思いから、こうしたシステムの開発に至りました。

──名前の由来はなんなんだ?「エバンジェリストファインダー」の最後の「ー」は、「キメゾー」の「ー」から取ったっていうのは本当か?

平岡:(一度目を閉じ、ゆっくりと開きながら)違いますね。エバンジェリスト=伝道師という意味で、そこから由来しています。その商品に愛着のある方が紹介するからこそ、その商品の伝道師になってくれて、その結果、読者が腑に落ちて自然と伝わっていく、効果が出るんじゃないかと。

これまではなんとなく肌感とか、担当者とそのブロガーが仲がいいとか、この子雑誌にも出てておしゃれだよねとかで起用されてきましたが、そのマッチングをどこまで精緻化できるかがEVANGELIST FINDERのチャレンジなんです。

──クライアントさんにはどう喜んでもらえてるんだ?

平岡:評価されるポイントのひとつはやはりマッチングの精緻度ですね。インフルエンサーが閲読している雑誌でも検索をかけられるんですけど、同じファッション誌でもViVi読んでる人とCanCam読んでる人では全然ファッションが違うじゃないですか。最近はそこをファッションクライアントさんに喜んでいただけていて。CanCam読んでる人がViViっぽいアイテムを紹介しても違和感が出る。ブログ等で紹介する時は当人が他に持っているアイテムとコーデを合わせることが多いんで、写真から目に見えて合ってないことが分かってしまう。

──たしかに、いつも裸にジャケットの俺がワイシャツの紹介してたらおかしいもんな。

平岡:最近、ある靴ブランドのクライアントさんを担当させていただいたんですけど、雑誌を軸に検索してキャスティングした人が、たまたまみんなそのブランドを本当に好きで。クリスマス時期に、商品の靴を送ったら、旦那さんからもらったプレゼントもそのブランドの靴だった、という人がいて(笑)。

さらに驚いたのが、ブロガーさんごとに合いそうなブーツを何種か変えて送ったんですけど、うち2人が持っているものと色も形も同じだったんです(笑)。それってほんとのマッチングなんだろうなと思って。

──それはさすがに凄いな。

平岡:現在のマッチングは基本的な個人属性や地域に加えて、カテゴリー、趣味、閲覧雑誌などで見ているんですけど、まだまだやれることが多いと思っています。

たとえばドーナツひとつとっても、国内の有名チェーン店のドーナツを紹介してもらうと効果が出る人と、海外から来た有名なドーナツ店を紹介した方が効果が出る人は、厳密に言えば違うはず。そこまでの精緻化ができるといいなと思っています。

──ところで俺もEVANGELIST FINDERに格納されたいんだが、条件はあるのか?

平岡:たとえばTwitterなら5ランクあって、一番下がDランクのフォロワー3000人からですね。

──俺のTwitterフォロワー数は600人だ。

平岡:(爽やかに)箸にも棒にもかからないですね!

──Xランクで格納してくれないか。

平岡:(爽やかに)無理ですね!ちなみに、まだまだ課題は山積みで。ブログではこのくらいのPV数、Twitterではこのくらいのフォロワー数ってのは出せるけど、今後はこの人が持っている全てのメディアを総合的に見て、この人自体の影響力はどのくらいなのかといった人単位の影響力を可視化したいです。海外では既にそういう指標があるんですが日本にはメジャーな指標はまだないので。

あとは、実施してみると、同じPVやフォロワーを持った人でも、案件によって結果に個人差が出てくる。その結果を集積していき次の検索結果に反映できるような、PDCAを回せる仕組みにもしていきたいです。

──それができると唯一無二の存在になるな。俺のように。

平岡:(爽やかに無視して)最近、アジア各国のインフルエンサーの格納も始め、EVANGELIST FINDERのアジア展開を図っているのですが、アジア全域を網羅できるようになると、ほんとに他にはないソリューションになると思います。

──ちなみにビューが多いブロガーの特徴ってなんなんだ?

平岡:まず、更新頻度が高い。頻度は大事ですね。読者が更新を楽しみに何度も訪れてくれる。

次に、写真が上手い。スマホのカメラのエフェクト使いも上手くて、記事が雑誌のようにお洒落に作り込んであるブロガーさんは人気がありますね。

あとは、コメントを丁寧に返してる。平たく言うと、地道な努力です。

──もっとないのか。俺をエバンジェリストにするつもりはないのか。なあ平岡氏、俺は本気なんだ。

平岡:そうですね。

他にもビューを伸ばすコツはあって。例えば、イベントです。クリスマスや誕生日など個人的なものからレセプションパーティなどオフィシャルなものまで。ブログ読者は割とうらやましい気持ち半分でブログを見に来ているので、この人が誕生日に何をプレゼントされたのか、どんなブランドからどんなレセプションに呼ばれたのか気になるんです。だから「プレゼント」というワードやイベント名などをタイトルに入れておくとビューが伸びたりもします。 

──ありがとな。お礼に抱きしめてあげるぜ。

平岡:(抱きしめようとするキメゾーの腕を振り払って)やめなさい。

クライアントさんにはこういうプロモーション記事のビューを上げるためのコツに加えて、商品提供の仕方の工夫や記事で取り上げてもらいやすいイベントの構成まで、記事の魅力度を上げるためのあらゆる方法をご提案しています。

──ところで平岡氏、学生時代は何をやってたんだ? エバンジェリストだったのか?

平岡:2000年ぐらいの話なんですけど、大学院生の時代に、リサーチモニターを2万人ぐらい抱えてネットリサーチを自営でやっていて。で、その2万人の人たちってやっぱりそれぞれ得意分野があるんです。このジャンルに強いとか、こういう部分にマニアックだとか。そういう情報をデータベース化して、たとえばこの人とこの人をマッチングさせたら面白いプロジェクトができるよね、新しいプロダクトが生まれるよね、それが企業や世の中のためになる、そんなプラットフォームを作りたいと思っていました。でも当時は資金もなくてそこまでやりきれなかった。

それで今回、たまたまブロガーの仕事をやっていて感じた課題やニーズからこういうものができたので、その時の思いを全く同じではないにせよ近い形で実現できるといいなあと思っています。このエバンジェリストたちを起点に新しいプロジェクトやプロダクトが生まれるといったような。学生の頃になんとなく思い描いたものが少し形になりだしているような気がします。

──実際にその夢が叶いだしてるわけだもんな。

平岡:エバンジェリストによる商品開発案件は、既にいくつかあります。食品メーカーさんの商品を使った新ドリンクメニューを開発して実際に全国のカフェで販売したり、栄養士の資格を持った料理研究家を起用してお子さんの食育視点で商品を使った新しいレシピを開発したり。

ただ、僕の中ではまだ100分の1ぐらいしか達成できてない感じで、まだまだやりたいことがたくさんあると思っています。

──これからトライアルしたいクライアントを発表してもらおうか。

平岡:いま一番多いのは飲料とトイレタリーのクライアントさんです。あとは、最近ファッションクライアントさんも多くなってきています。

今後トライアルしたいクライアントは、航空会社や旅行会社など旅行系の業種や今広げているアジア案件をもっと開拓したいですね。ブログやSNSはリアリティのある記事をリアルタイムに配信できるのでクチコミのリアリティが重要な旅行系の案件はもっと可能性がある気がしています。それに日本のブログは食とかファッション系の記事が多いのですが、東南アジアには旅行ブロガーも比較的多いんです。たとえば各国の観光庁や観光局さんがクライアントになると思うんですが、ターゲットにしたい国(日本だったら中国とかインドネシアとか)の旅行ブロガーさんにその国(日本)を旅してもらってその国の魅力を本国の読者さんに伝えてもらう、各国の観光誘致熱が高まっている中、そういうニーズはこれから増えていく気がします。

──実績を教えてもらってもいいか?ちなみにだが、俺は一度も女性とお付き合いした実績がない。

平岡:ある海外のファッションブランドさんのECサイトの日本ローンチで、全国のファッションブロガーを起用して告知&誘引施策を実施したケースをご紹介します。当時そのブランドのECサイトが世界で十数カ国展開していたのですが、マス施策など他の施策がほぼない中で、ローンチ初速の売上は日本が世界でTOPだったと聞いています。ただ業種やモノによって効果には結構違いはあります。たとえば比較的高額な商品であるバイクを紹介したらいきなり売れるのかといったらなかなか辛いところがありますしね。商品によっては、ブランディング目的の方が向いているものもあります。

──おっと、俺がハローワークに行く時間になっちまった。なんせ俺は無職だからな。最後に言い残したことはないか。

平岡:このソリューションはあくまでクライアントのドアノックツールだと思うんです。これで検索して上がってきた人をそのまま起用することは少なく、そのリストをベースにクライアントさんとすり合わせしていくと、「もっとこういう人の方がいい」とか「ブログよりもFacebookの方がいい」とかいうのが出てくる。結局その後アナログな作業が待っているんです。システムだけで完結するわけじゃない。むしろ、そのあとのアナログな運用ノウハウが一番の強みなんじゃないかとも思っています。

ただしクライアントにとっては、システム化したことでこれまでブラックボックスだったインフルエンサー施策おいて、選出基準や想定効果が明白になったところはとても分かりやすいようで好評を頂いており、即発注につながるケースも多いです。このソリューションを突破口に、インフルエンサーが参加するイベントや出演する雑誌タイアップにつなげるなど、電通のビジネス拡大に貢献できれば幸いです。

──面白かったぜ。ありがとうな。あと俺を雇ってくれ。

平岡:(気持ちよく大きな声で)ありがとうございました!