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PRの効果測定~データ・ドリブンで経営を支える~No.2

オウンドメディア効果測定~オウンドメディアの「効果」ってなに?

2019/11/14

第1回でもお伝えしましたが、広報の現場でいつもぼやかれるのが「効果測定が難しい」というセリフ。悩みは相当深いようです。

2017年に経済広報センターが企業の広報部門に対して行ったアンケート調査の中で、日頃抱えている悩みについて尋ねたところ、「広報活動の効果測定が難しいこと」と答えた企業が71.4%でトップとなっています。2位の「広報の人員が少ないこと」が42.3%、3位の「危機管理」が35.2%であることを考えると圧倒的トップといって差し支えないでしょう。

広報部門としての日頃の悩み

広報活動における、この効果測定に関する悩み、もちろんオウンドメディアについても例外ではありません。いろいろな方から「オウンドメディアの効果の測り方が分からない」という悩み相談をされます。ただ不思議なことに、そういった方々の中にGoogle Analyticsなどのツールの使い方が分からないという方はほとんどいません。聞くと、Google Analyticsは毎日見ているけど、そこに表示される数字の意味が分からない、アクセス数の変化がわが社にとってどういう意味を持つのかが分からないといった方が大半です。

効果測定の「測定」は分かるけど「効果」の方が難しい、というのがオウンドメディアにおける“あるある”なのではないでしょうか?

オウンドメディアといっても、会社案内、アニュアルレポート、広報誌などさまざまありますが、今回はコーポレートサイトやブランドサイトといったプラットフォームの効果測定に絞ってお話しします。

オウンドメディアの「効果」はこう決める

冷静に考えると当たり前のことなのですが、効果測定を行うためには「効果」が何であるかが決定されていなければなりません。

あなたのオウンドメディアの「効果」は何でしょうか?

ここからは効果の決め方のお話しです。私が今からいくつか質問をしますので、お考えいただけますでしょうか?

1.あなたの会社のミッションは何でしょうか?

あなたの会社や組織にはきっとミッションがあると思います。おいしい食べ物を家庭に届けることかもしれませんし、人々が暮らしやすいまちづくりかもしれません。

2.ミッションを遂行するために、あなたの会社が行っているコミュニケーション活動が「達成すべきこと」は何でしょうか?

会社の活動はすべてミッションの遂行のために行われます。もちろん広告や広報などのコミュニケーション活動も。コミュニケーション活動が達成すべきことは何でしょうか?商品をたくさん売ることでしょうか?それとも会社の社名をできるだけたくさん世の中に出していくことでしょうか?重要なのは、ミッションをたくさんの人に知ってもらうことかもしれませんね。

3.あなたのオウンドメディアは「達成すべきこと」に対してどのパートで貢献できそうですか?

例えば商品をたくさん売ろうと思ったとき、コミュニケーション活動はさまざまな段階で行われねばなりません。商品の名前、商品の機能を覚えてもらう段階、一度買った後にもう一度買ってもらう段階、あるいはある人にその商品が必要なシーンに気付いてもらう段階などもあるかもしれません。

また、段階だけではありません。誰に買ってもらいたいのか、どのように買ってもらいたいのか、などいろいろあるでしょう。

あなたのオウンドメディアはそれらのどのパートで貢献できそうでしょうか?
商品の必要性を十分に理解している人にもうひと押しして、ECサイトに来てもらうこと?それとも何だか面白そうな会社だなと気付いてもらうこと?

今私がした質問がそのままオウンドメディアの効果が何なのかを決めるプロセスになります。

「測定」できる形に「効果」を加工

オウンドメディアの「効果」が何なのかは決まりましたので、次は「測定」の方の話をしましょう。今決めた「効果」を、「測定」できる形に加工しなければなりません。

もう一つ質問をさせてください。

4.オウンドメディアがどのようになれば「達成すべきこと」に対して貢献できているといえますか?

ある特定のページがたくさん見られることかもしれませんし、ある特定のページに掲載された外部サイトへのリンクボタンがたくさん押されるかことかもしれません。あるいはオウンドメディアのコンテンツがTwitterでたくさんシェアされることで、あなたの会社の社名をTwitter上に多く露出させることかもしれません。「オウンドメディアが発展すること」や「盛り上がること」といった漠然としたイメージではなく、上記のようにできるだけ具体的に考えてみてください。

オウンドメディアがどのようになればよいのか、今考えていただいたこれが、オウンドメディアの効果測定における目標になります。

オウンドメディアの効果を定め、目標を定めましたので、晴れていよいよ「測定」が可能になりました。どうでしょうか?Google Analyticsで分かるページビュー数でOKという方もいらっしゃれば、もう少し別のデータを取得せねばならないという方もいらっしゃったかもしれません。とにかく、それがあなたのオウンドメディアの効果測定の方法です。


効果測定はそのときどきで変わる

ところで、先ほどの質問について、こういう方もいらっしゃったかもしれません。ひょっとしたらあなたのオウンドメディアは、立ち上がったばかりで上で述べたようなことをうんぬんする段階になく、とにかくコンテンツが増えることが「達成すべきこと」に対する貢献、だと。

実はこれは大事な視点を含んでいます。オウンドメディアの「目標」は、オウンドメディアが今どのような状態にあるかによって変わるのです。

例えば、あなたのオウンドメディアの「効果」が、「20代の人々に商品の名前を覚えてもらうこと」だったとします。この「効果」は、立ち上げたばかりのオウンドメディアでは発揮できないことは皆さん何となく想像できるでしょう。立ち上げたばかりのオウンドメディアは、その効果が発揮されるまでに、成長していかねばなりません。20代の人々にオウンドメディア自体に興味を持ってもらう⇒興味を持ってくれた人にアクセスしてもらう⇒一度アクセスしたくれた人に定期的にアクセスしてもらう、といった成長段階を経る場合もあるでしょう。

あなたのオウンドメディアが真に効果を発揮するまでにどのような成長段階を経るのかを考え、そしてその成長段階ごとに「目標」を設定せねばならないのです。

実際の効果測定

ウェブサイトを含め、PRの効果測定には大きく分けてアウトプット(施策の成果)とアウトカム(目的に対する成果)の2種類があります。

アウトプットには、さらに定量的に捉えるものと定性的に捉えるものに分けることができます。ウェブサイトの場合、定量的に把握する調査には、Google Analyticsによるページビュー、セッション、滞在時間、お問い合わせ数などのアクセス解析などがあります。定性的に把握する調査にはIPインテリジェンスを活用した訪問者の属性調査や、フォーカスグループで自社ウェブサイトと競合ウェブサイトを比較調査する手法などがあります。デザインの先進性の比較調査やユーザビリティーといった使いやすさをチェックしている企業やブランドも存在します。

アウトカムには、大きく分けてオンラインとオフラインでの測定に分けることができます。オンラインではECの売り上げや寄付などを確認することになりますが、オフラインでは、具体的な商談が成立したか、採用に応募してきた学生の数が増えたかなど、営業部門や人事部門から情報を入手したり、ウェブサイトの管理部署だけではなく、他部署と連携して効果を把握することが必要となります。

ウェブサイトの効果測定

例えば、テクノロジー系のBtoB企業の場合はどうでしょうか。

ある企業が運営するコーポレートサイトは、テクノロジーの先進性を訴えることが目的のひとつになっています。
この企業では年に数回、人々からどのようなイメージで見られているかをテーマとした調査を行っており、その中でこの企業が持つテクノロジーの先進性がどのくらい認知されているかを測定しています。

また、これに加え、コーポレートサイトのアクセス分析をGoogle Analyticsによって行っており、どのようなコンテンツが掲載されたときに、どういった人々がどういったアクセス行動をするかを毎月計測しています。

これら二つの調査・計測から得られたデータを突き合わせることにより、ある期間について、どういったコンテンツが掲載されたときに、Google Analyticsの数字がどのように動き、それがこの企業の先進性の理解にどのようにつながっているかを把握することができます。


「測定」を考える前に「効果」を考えよう

オウンドメディアは、ただ漫然と続けているだけで自覚されていない何らかの問題が自動的に解決されるようなものでは決してありません。オウンドメディアは、更新さえしていればなんとなく適切に運営できているように見えてしまうため、効果の定義がされづらく、効果測定の悩みも深くなるのかもしれません。

オウンドメディアはあくまで手段。それ自体を目的にしてしまうのは文字通り本末転倒といえるでしょう。マーケティング上のどのような課題を解決するものなのかを明確に設定し、解決の度合いを測る指標を見つけ出した上で行われるべきコミュニケーションなのです。

まとめ

・会社のミッション・コミュニケーションの目的を確認、オウンドメディアがそれに貢献できることは何かを確認。
・測定を考える前に効果を考えよう。
・オウンドメディアはあくまで手段。それ自体を目的にしてしまうのは文字通り本末転倒。