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電通グロースデザインユニットが提供する「スタートアップ360度支援」No.2

スタートアップの事業成長を加速させる「ギルド型ユニット」とは?

2019/11/19

第1回の記事を読んだ方から「電通がレベニューシェアやストックオプション?」「ギルドってなんだ?」など反響を頂きました。今回は、電通グロースデザインユニット(以下、DGDU)のチームの組み方や仕事の進め方について、メンバーである千田智治がお伝えします。

<目次>    
ギルド型ユニットでスタートアップの「ヒト不足」を解消
社内外から職能でアサイン。ギルド型ユニットの「パーティ」編成とは?
練りこみ型ではなくアジャイル型の提案スタイル
外部パートナーに求めるものも変化
魅力的な人材が集まる仕組み
 

ギルド型ユニットでスタートアップの「ヒト不足」を解消

現在、スタートアップ界隈が大きなにぎわいを見せています。多くの大手企業や組織も注目するスタートアップですが、強みと弱みがあります。

まず、スタートアップの強みは、アイデアとスピードです。「そんな発想があったのか!」と思うような独創的なアイデアと、商品やサービスを短期間でつくり上げ、世の中に投入し、成長を続けるスピード感は、大手企業がかなわない点ではないでしょうか。

そして、スタートアップの弱みは、第1回でも紹介した通り、ヒト・カネ・モノが不足していること。また、せっかく独創的なアイデアが生まれても、それを具現化し、成功確率を上げながら世の中にうまく浸透させるフェーズでつまずくケースもよくあります。

つまり今、スタートアップに求められるのは、圧倒的なスピード感に合わせて、移り変わる各局面に対応するための体制です。

そこで、私たちDGDUでは、資金ではなくヒト(人材)を投資することで、スタートアップを支援しています。具体的には、そのプロジェクトに「現在不足している領域」を補完できるスタッフを電通社内外から選び、スタートアップのいわばアシスタントCXOという形でアサインしていきます。

それも、よくありがちな縦割りの組織をベースとしたチームでの支援ではなく、あらゆる業態のスタートアップに向き合うために、ギルド型ユニット(=電通グロースデザインユニット)に集う、さまざまな職能のメンバーが「パーティ」を組むことで支援しています。

ギルド型ユニットの図
ギルドとは中世ヨーロッパで組織された商工業者の組合が語源。そこから、会社の規定や枠組みにとらわれず、一人ひとりの自由や裁量を尊重しながらも、チームとして仕事を創る集団の総称。

社内外から職能でアサイン。ギルド型ユニットの「パーティ編成」とは?

電通のような広告会社では、一般的に、業務のフェーズに合わせて「部署単位」で対応します。

例えば、市場分析、戦略立案をマーケティングの部署が行い、それを具体化するための表現をクリエーティブの部署が担当、エグゼキューション(実行)は、メディアの部署やアクティベーション(活性化)の部署が担当します。さらに、それを高いパフォーマンスで実行し続けるために、運用に強い部署がその後を担当。

【従来の仕事の流れ】
・市場分析・戦略立案→マーケティング部署
・表現・コミュニケーション→クリエーティブ部署
・エグゼキューション→メディア部署、アクティベーション部署
・運用→運用部署

いわゆるバトンリレーのような形で業務を遂行しています。

一方、ギルド型ユニットは、スタートアップ支援に必要な職能を持ったさまざまなプロフェッショナルを電通社内外から集結させているため、部署単位ではなく「職能単位」で個別にアサインしパーティを編成していきます。

例えば…
・スタートアップの経営に関する深い知識の保有者
・事業収益性および成長性を検証する力の保有者
・スタートアップのEXIT経験者
・商品開発の知見やノウハウの保有者

電通内外の人材を、それぞれのバックグラウンドを元に、クライアントの業種や課題内容に応じてパーティを組み、過不足のない最適なソリューションを提供しています。これまでのチームの組み方、働き方を再定義して、スタートアップに適応した動き方をしているのが特徴です。

ギルド型ユニットのパーティ
イラストレーション:電通 第1CRプランニング局 竹村優奈

DGDUのパーティにはリーダーがいません。各メンバーが円や球のようにつながっていて、業務に合わせて柔軟に、その領域に得意な人が前に出ながら解決していきます。ある意味全員がリーダーであり、目的を達成するためにアメーバのように形を変えながら動くため、ティール組織(※1)に近いものがあります。

※1=ティール組織
フレデリック・ラルー氏が提唱した、生命体のように形態を変え、進化する組織の概念。上層部がマイクロマネジメントをしなくても、目的のために組織内のメンバーが意思決定をして業務を推進していく。


また、DGDUは、スタートアップの圧倒的なスピードに合わせて対応するためにPDCA(Plan、Do、Check、Action)思考からではなく、OODA(Observe、Orient、Decide、Act)を用います。これにより、各メンバーが指示を待つような受け身にならず、前のめりにパラレルで業務を遂行できるのです。

練りこみ型ではなくアジャイル型の提案スタイル

DGDUでは、「クライアントからオリエン後、数週間から1カ月前後検討し、プレゼンテーションする」というこれまでの練りこみ型の提案スタイルではなく、数日から1週間など短い期間で提案を繰り返す、アジャイル型の進め方をしています。短いタームで回転数を上げて進行することで、成功確率を上げることを意識しています。

なぜならば、市場のマーケティング速度がどんどん加速しているからです。数年前に人気になったブランドが、急に売上を落とし、倒産するというニュースを度々目にすることがあると思います。新しい成功法則がすぐに模倣されて陳腐化し、たった数年でその成功法則が成り立たなくなるということが起きているのです。

今、私が担当しているスタートアップのクライアントは、通常1年ほどかけて行うような新商品開発作業を、1カ月ほどで行うというスピード感で進めています。リードしたり、時には伴走したりと走り方を変えながら、短期間で進めていかなければ、大手企業の豊富な資金にパワー負けしてしまうという理由もあります。

スタートアップが勝つためには、何よりスピードが重要。特定のカテゴリで一人の勝者が圧倒的なシェアをとるWinner-takes-allという言葉があるように、スピードの遅さが命取りになり得るのです。

さらに、通常のプランニングやクリエーティブもスピード化する必要があります。クライアントと打ち合わせをしながらその場で手書きの資料で進行する、いわば「ライブプランニング」「ライブクリエーティブ」という新しい動き方も必要になってきます。作りこんだきれいな提案書ではなく、多少汚くても考えを重視した提案書で進めていくということです。

また、これらを進めていくためには、普段のコミュニケーションツールもメールではなく、TeamsやChatwork、Slackといったタイムライン型のソリューションを導入することが必須になります。

従来とギルド型ユニットのパーティの違い

外部パートナーに求めるものも変化

DGDUでは、主にシード/アーリー/ミドルステージのスタートアップ企業を対象にしていますが、そのステージのスタートアップでは、多くの時間とお金を要して調査を行うということがあまりない傾向があります。

マーケティング戦略にかけるお金があったら、利益に直結する、広告費や販促費に回すというスタートアップ特有の思考があるからかもしれません。しかし、中長期的な成長を考えた場合、やはりユーザー調査や市場調査は大事です。それも、スタートアップのスピード感に合わせ、低予算かつ短期間で実施できる調査方法が必要です。

キャスティングしたターゲットに早期にクライアントの会議室に来てもらい、インサイト把握や、直接反応を見ながら商品・サービスの改善を図っていくのです。

また、メディアの活用法も変わってきます。初期ステージのスタートアップは、資金調達のために、エンジェル投資家やVC、CVCからの投資を必要とします。より多くの投資家から資金を調達してもらうためには、スタートアップのバリュエーション(時価総額)を向上させる必要があります。

ベースとなるビジネスグロースコンサルを行うだけでなく、Public Relations(PR)を通したHuman Resources(HR)や、Sales&Relation(SR)も視野に入れることで、はじめて効果的なInvestor Relations(IR)を展開する事が可能になり、4Rの好循環が生まれます。

資金調達を促進する4Rサイクル

魅力的な人材が集まる仕組み

ギルド型ユニットの働き方は、メンバーの成長意欲を刺激することにもつながっています。どの業務にもありがちな各業務の隙間はメンバー同士で埋めていかなくてはなりません。時には事業設計書を作り、時にはキャッチコピーを書いてといった、普段使わない筋肉を鍛えることにもつながり、メンバーの育成にもなります。このように、「自分の領域以外」も鍛えることは、BTC(Business、Technology、Creative)人材化による市場価値の向上にもなります。

スタートアップでは経営者との距離が近いため、経営者とともに事業を一緒に進めていくことで疑似起業経験を積むことができ、ビジネスの前線で戦う面白さを実感できるというメリットもあります。

更に、レベニューシェアやストックオプションといった報酬体系は、そのプロジェクトで成果がでれば得られる報酬が増えるため、最初から最後まで一層責任をもってやるというやりがいにもつながるのです。働く上でとても大切なモチベーションをうまく刺激しながら、スタートアップの業務に還元していくという良質な循環ができるようになります。

電通の強みは、社内外のネットワーク。社内においては、営業だけで数千人、私の所属するマーケティング部署だけで数百人を保有する日本有数の人材バンクであり、社内に豊富な人材がいることで、スタートアップの難しい課題においても、迅速に解決策を見つけることができます。

また、クライアントやパートナー企業含めて多様なネットワークがあるため、解決するための手段が多いことも強みになります。勢いのあるスタートアップとつながりたい大手企業とのマッチングや、スタートアップの斬新なアイデアが生きる分野のキーパーソンとの連携も可能です。

さらに、電通はさまざまな情報を蓄積・共有しています。事例収集、業界トレンド収集、ナレッジシェアなど専門の部署があり、これらの圧倒的な情報力は、スタートアップを最短距離で成功に導くための強力な支援につながります。

私たちDGDUは、電通の強みを最大限生かしながら、スタートアップに対応するための俊敏性を兼ね備えた「パーティ」という体制を作り、日々お手伝いをしています。

スタートアップ企業の方や大企業の事業開発を担当されている方で、電通グロースデザインユニットに興味を持たれた方は、ぜひご一報ください。
 

お問い合わせ:dgdu@dentsu.co.jp