Dentsu Lab Tokyo × Dentsu Craft Tokyo テクノロジーとアイデアのおいしい関係No.5
3歳の娘とヒーローショー
2019/12/16
Dentsu Craft Tokyoにメンバーとして参加している加島貴彦です。
普段はピクスという映像制作会社で、プロデューサーとして仕事をしています。これまで担当してきたのは、CM、WEB広告、ミュージックビデオ、ライブステージやイベントの演出映像などなど。さらにプロジェクションマッピングやVR、ARのような、映像を活用した新しい表現技術の現場にも早いタイミングから関わらせていただいております。
プロデューサーとして、日々進化するテクノロジーや映像表現の技法などにはなるべくアンテナを張り、自分なりに勉強を重ねてはいるつもりです。
今回は、そんな僕を意外な場面で刺激したある日常の出来事について書いてみます。
僕には3歳の娘がいるのですが、彼女のマイブームが、とある特撮ヒーロー。それも50年以上の歴史を持つ、日本を代表する超大物…(地球上に3分しかいられないことで有名なアレ、です)。2019年7月から、テレビで新シリーズが始まり、今やフィギュアを手に公園へ繰り出すほどのハマりっぷりなんです…(僕が教えた覚えもなく、きっかけは謎です)。
そんなわけで、今年の夏休みに池袋のサンシャインシティで開催された、そのヒーローのフェスティバルに娘を連れていってあげました。
会場にはたくさんの巨大フィギュアが立ち並び、戦闘シーンを再現したジオラマ、フォトスポットなど盛りだくさんの内容。娘と一緒に僕も夢中になってしまいました。やがて、このフェスティバルのメインイベントである「ライブステージ」がスタート。いわゆるヒーローショーというやつですが、これが、僕が子どもの頃に見たものとはまったく違うものだったんです…。
LEDやレーザーを駆使した演出で、舞台は街中から宇宙へ!
ヒーローの攻撃も次々と炸裂!!
背景セットが全面LED映像なのはもちろん、必殺技の“光線”的なものは、昔は演者のポーズのみかせいぜい効果音だけでしたが、LEDでしっかり形となって映し出されていて、レーザーまで発射されています。ヒーローが倒れた時、「誰か助けて!」的な定番の子ども参加型演出も、カメラで撮影した子どもにCG演出をAR合成するといった進化っぷりです。
正直な話、LEDを作った映像演出自体は僕も仕事で活用していることなので、まったく目新しいものというわけではないのですが、まさか子ども向けのヒーローショーにまでバリバリ入り込んでいたとは…(いや、もはや子ども向けなんて思っちゃいけないんですかね?大人だけで来ているお客さんも多かったわけで)。
それは驚きであると同時に、ちょっと感慨深いものでもありました。
なぜならウチの娘は、ヒーローから光線が放たれる瞬間に立ち会ったのです。つまり、“本物の”光線を目の当たりにしたわけです。
3歳児って例えば映像の中の世界と現実、どこまで物事の分別がついているのか、はっきりとはわかりませんが、なんといっても大好きなヒーローのことです。テレビ画面でしか見られなかった憧れのあの光線を、こうして生で、目の前で感じたことで、それが本当に存在したのだとすっかり信じ込んだようで大興奮しておりました。
大人も大はしゃぎ! シンガポールのLEDと“観覧車”
先ほども書いた通り、LED演出自体はもはや最新ではないかもしれませんが、動画サイトでアップされる海外/国内の有名アーティストのライブは派手さや目新しさを競うように、レーザーやプロジェクターとの組み合わせ、ド派手な特効、LED自体が動くようなものまで、ハード×演出の力で、日々進化をしています。
数年前と比べて多少ブームは落ち着いたもののEDMを中心としたような音楽フェスでは予算の掛け方も尋常じゃないですし、直近ですとAmerican Music Awardもド派手なステージは必見です。
ただやっぱり画面越しで見ているものと、自分が実際にその場で体験するのとでは、興奮が違いますね。実は娘と同じような衝撃を、大人の僕もその少し前に体験していました。
新たなプロジェクトのための視察で、7月にシンガポールを旅した時のこと。何やら「新しくできたクラブがすごい」といううわさを耳にしたので、興味半分で行ってみたのですが……これが本当にすごかったんです。
まず驚いたのが、超巨大なLEDスクリーン。3階ぶち抜きという縦にも横にも広いフロアに、まったく引けを取らないほどの大きさです。しかも、解像度がハンパなく高い(おそらく8Kではと思い調べてみたら、やはりそうみたいで、8KはなんとHDの16倍の解像度です)。
さらに度肝を抜かれたのが、屋内だというのになぜか観覧車が鎮座していること。8つのゴンドラが、LEDの光やレーザーが飛び交う中をクルクルと回っていました。とにかく、その演出の規模とクオリティーは「圧巻」の一言です。
LEDスクリーンには間近まで近づくことができたり(お酒とかこぼされたらどうするんですかね)、観覧車は誰でも乗れたり(てっきりVIPオンリーかと思ったのですが)、大人の遊び場には、子供のようにはしゃぐ人たちでいっぱいでした。もちろん自分も含めて(笑)。
そんなことを思い出しつつ、ちょっと話を戻すと、娘もこれから大きくなればどんどん現実を知っていくわけで、いつか、あのショーでヒーローが放った光線が本物じゃなかったとか、ただの映像だったんだとか、気づいてしまう日がきっと来るのかな、と。
それはちょっと残念だなぁと思いつつも、逆に映像の仕事やエンタテインメントに関わる身としては、驚きや感動を与え続けられるものを常に更新して作っていきたいな(作っていかなければ)、なんて考えてしまいました。いつまでもアンテナを張りつつ勉強をし続けなければいけないな、と。
ちなみにウチの娘は来年から幼稚園。今までは外とのつながりが少ない分、趣味も自由でいられたわけで、いわゆる、男の子向け/女の子向けのコンテンツに関しては壁がなかったのです。それが幼稚園に入って一歩外の世界に出た時、成長して男女の違いなどを意識した時、もしかしたら大好きなあのヒーローからも離れていってしまうことがあるのかなぁと。
純粋に好きなものなんだから、いつまでも好きでいてほしいな、と親としては思うのですが…。これから彼女が何にハマっていくのか楽しみです。
そういえば新シリーズの主人公は、今から40年以上前に地球を守った某タロウさんの息子という設定で、親子の物語でもあります。
皆さんもよろしければぜひ(笑)。
そして機会があれば、ヒーローショーにも足を運んでみてください!