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サステナブル時代をつくる、「連携」のヒント─Sustainable d Actions─No.8

テクノロジーが描く、映像制作×サステナビリティの未来

2022/07/04

こんにちは、電通グループのクリエイティブコンテンツ制作会社・電通クリエーティブX(クロス)の小笠原悟です。世の中ではカーボンニュートラルの動きが加速していますが、広告制作の領域も例外ではありません。

「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」(COP26)が開催されたイギリスでは、広告業界3団体主導による「アド・ネットゼロ」(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること)が宣言され、2020年11月よりいち早く取り組みがスタートしました。

私たちの映像制作ワークフローにおいても「大量消費的な制作からの脱却」と「テクノロジーによる効率化」については積極的に変革していくべきポイントだと考えています。

本記事では、テクノロジーの活用により変化している制作現場の今を、「メタバース プロダクション」の取り組みを通じてお伝えします。

メタバース プロダクションとは……
電通クリエーティブX、映像制作の最大手である東北新社、LEDディスプレイソリューションのパイオニアであり「インカメラVFX(In-Camera VFX)」の豊富な実績を持つヒビノ、映像・グラフィックなどの制作プロデュースを行う電通クリエーティブキューブの4社による共同プロジェクト。テクノロジーを駆使して、映像制作ワークフローにおける“温室効果ガスの削減”と“プロセス効率化”をめざしている。

「インカメラVFX」での映像制作が普及

まずはこちらの動画を(是非!最後まで)ご覧ください。


この動画は、主演にオダギリジョーさんを起用し、大型LEDディスプレイを使った「インカメラVFX」と呼ばれる手法で撮影された映像作品「Vocument #1『今、映画監督オダギリジョーが立つ場所。』」です。メタバース プロダクションの一環として、パートナーである東北新社と、グループ会社のオムニバス・ジャパンが制作し、ヒビノ、電通クリエーティブキューブ、TFC Plusに制作協力いただきました。

LEDディスプレイに映し出されるCGの背景がカメラの動きに連動し、背景に奥行き感を持たせられるため、圧倒的にクオリティの高い合成映像をリアルタイムで生成することができます。

インカメラVFXが注目されるきっかけとなったのは、「スター・ウォーズ」初の実写ドラマシリーズ「The Mandalorian」です。広大な砂漠や宇宙船の格納庫のシーンなど全体の50%以上がインカメラVFXで撮影され、完成度が高かったことから、世界の映画関係者から脚光を浴びました。

日本でも2022年に入り、インカメラVFXをはじめとしたバーチャル技術を活用した、テレビCMやドラマ、映画、ミュージックビデオなどが増えています。

メタバース プロダクションの3つのサービス

「メタバース プロダクション」は、各社の強みとインカメラVFXのメリットを最大限に生かし、映像制作ワークフローにおける“温室効果ガス削減”と“プロセス効率化”を実現する3つのPXサービス(※)を開発・提供しています。

※Production Transformationの略。映像制作トランスフォーメーションを意味する造語。


PXサービス①:広告主が所有し、繰り返し使用できるバーチャル素材「Owned Virtual Set/Location」

これまで1回限りの使用で廃棄していた美術セット、さらにロケーションをオーダーメードでCG制作します。広告主が所有するバーチャル素材として繰り返し使用することができるため、スタジオ撮影時の廃棄物削減につながります。

メタバースプロダクション

PXサービス②:スタジオ内でロケ撮影を実現「実写ロケーションVFX」

あらかじめ別撮りした実写背景をスタジオに設置する大型LEDディスプレイに映し出し撮影することで、まるでロケ地で撮影しているかのようなスタジオ撮影を実現します。大人数でのロケ移動が不要となるため、温室効果ガス排出量が大幅に削減されます。

メタバースプロダクション

PXサービス③:テンプレートのCG美術セットを選択、カスタマイズして制作「Virtual House Studio」

あらかじめ用意されたテンプレートCG素材から美術セットを選択して使用できるバーチャル空間のハウススタジオです。壁色や小道具などを若干カスタマイズすることができ、少しのカスタマイズでクオリティの高い映像を制作することができます。

メタバースプロダクションメタバースプロダクション

テクノロジーによる、映像制作の新たな選択肢

SDGsに積極的に取り組んでいるクライアント企業の方々にとって、PXサービスの活用はコストメリット以外の価値もあると思います。従来型のワークフローで制作した場合とPXサービスを活用して制作した場合の温室効果ガス削減量を算出し、数値で可視化できるシステムの開発を進めており、今後、客観的な数値データ表としてお渡しすることを想定しています。

バーチャルプロダクションを活用することで映像制作における自由度や利便性は向上しますが、リアルなロケーション撮影でしか表現しきれない空気感があることも確かです。また、映像制作すべてをインカメラVFXで賄おうとすると企画内容によってはアンマッチなケースもあり、逆に時間やコストがかかってしまうこともあります。映像制作の選択肢のひとつとして、ケースバイケースでの使い分けが必要です。

現場で使われ始めたばかりの新しい撮影手法であるため、大型LEDディスプレイを常設するスタジオやバーチャルプロダクションによる制作に精通するスタッフを増やしていくこと、CG背景素材を充実させていくことなどが課題です。

今後は映像業界全体で協力し、インフラとなるスタジオ整備や人材育成などを推進することで、「テクノロジーによる、映像制作の新たな選択肢」として将来のスタンダードになるよう、これからも努めてまいります。

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