電通クリエイターによるアート展「ONE CREATIVE」ReportNo.1
ひたすら無心に。色えんぴつで無限の世界。
2020/02/26
1月26日~2月8日、東京・日本橋のgalerie H(ガルリアッシュ)で開催された電通クリエイターによるアート展「ONE CREATIVE」Vol.1。
普段、広告をつくっているクリエイターが、クライアントの課題解決という形ではなく、内面から湧き出るものをカタチにしたらどうだろう、クリエイター 一人一人が持っている、自由でオリジナルな世界を見てみたい、というところからこの企画は始まりました。 今回は第1CRプランニング局、畑野憲一クリエーティブディレクターの、普段の広告の仕事では見ることのできないアーティストとしての一面をご紹介します。
存在を、再構成する。
ギャラリーのドアを開けると、右手の壁一面に、整然と作品が並んでいます。
広告の印刷物とはまた違った、1点ものの重みを感じます。
早速、畑野さんにお話を聞きました。
──作品のテーマを教えていただけますか。
普段身の回りにあって、あまり気に留めていないけれど、ちゃんとそこに生きて存在しているものに着目してみました。植物の「葉」です。自分の中でなんとなく気になって魅力を感じた「葉」を、いくつか記録してみました。「葉」の中に閉じ込められているさまざまな魅力を色えんぴつで描くことで、再構成しながら開放していくことを試みています。
──離れてみると、一見、パステル画とか日本画のようにも見えるのですが、よく見ると、これ全部、色えんぴつで描かれているのですね。これらの作品は、どのようなきっかけで描かれたものですか。
旅に出た時や、休みの日に近所を散歩している時に、なんとなく気になってしまう、魅力を感じてしまうさまざまな「葉」に出合いました。それらを写真で記録してみたことがきっかけです。
──葉の緑にも、背景のグレーにも、よく見るといろいろな色が混ざり合っていますね。シンプルだけどとても緻密で、気の遠くなるような時間がかかりそうです!
見ることでリラックスした気分、ゆるっとした心地よさを感じていただけたらと思います。色えんぴつを重ねて描くのは思いのほか時間がかかってしまうというのが苦労ではあるのですが楽しいことでもあります。
個人でつくる。他者とつくる。
──普段はクリエーティブディレクターとして活躍されていますが、アーティストとしてはどのように活動されているのでしょうか。
普段の仕事はクライアントの目的達成に向けてさまざまなメンバーと創意工夫を重ねて共同でプロジェクトを進めていますが、この作品は個人で描くことにひたすら無心に集中する作業なので、ある意味では逆の活動とも言えます。ですが、両方を経験することは、お互いの活動がリフレッシュできて、双方とも生かして進化していけるものだと実感しています。
──広告の制作者とアーティスト、二つの顔があることでよかったと思うことがあったら教えてください。
広告の周辺の人たち以外の、アートの世界にいるさまざまな方と知り合えたり、話ができたり、意見をもらったりできます。自身にとってさまざまな気づきと刺激を頂いています。
──今後のアーティスト活動の予定があれば教えてください。
引き続きこのテーマを深めていき、自身と作品の変化を楽しんでいきたいと思います。
──ありがとうございました。
鑑賞を終えて
絵本も描いたことがあるという畑野さん。その穏やかな人柄がにじみ出るような優しい作品たちでした。
クリエイター、特にアートディレクターにおいては、誰かとの協業ではなく、広告という制約もない、感覚を研ぎ澄ませるための一人の時間が必要だし、そういった創作活動が、さらに日々の広告制作業務を輝かせるのだと思います。
このシリーズでは、電通クリエイターのいろいろな創造の源をご紹介していきます。
次回は、中澤真純さんに話を聞きます。