loading...

電通グロースデザインユニットが提供する「スタートアップ360度支援」No.5

2020/03/06

電通はスタートアップに何ができるか?電通OBと語る、オープンイノベーションの可能性

近年、新規事業開発や既存事業の効率化を目的とした大企業とスタートアップとの協業が増えています。事業の360度支援サービスを展開する電通グロースデザインユニット(以下、DGDU)でも、大企業とスタートアップの協業を加速させるサービス「CoNext(コネクト)」を展開。DGDU自体も、社内ベンチャーとして外部各社と提携しながら事業を推進しています。

社内アセットのみを活用した組織形態と、オープンイノベーションによる成長戦略を目指すスタートアップ企業との違いはどこにあるのでしょうか。社外で活躍している電通OB 3人へのインタビューを通して、オープンイノベーションの必要性を探ります。

DGDU5集合写真
左から伊藤契太氏(電通グロースデザインユニット)、南坊泰司氏(NORTH AND SOUTH)、大久保祐介氏(Global Mobility Service)、五島淳氏(SHE)、春田英明氏(電通 ソリューション開発センター、電通グロースデザインユニット)

オープンイノベーションの鍵を握るのは“人"

春田:皆さんは電通を退職後、スタートアップ企業で活躍されています。スタートアップの視点から、オープンイノベーションの必要性をどのように捉えていますか?

南坊:私は電通を退職後、メルカリに入社し、2年弱にわたってマーケティングや経営企画を担当してきました。現在ではベンチャー/スタートアップを中心にビジネスをクリエイティビティーにより支援する会社を起業していますが、メルカリでは大企業とのビジネス連携が当たり前のように行われていました。事業を加速させるため、大企業とスタートアップ企業がクロスするのは当然の流れだと思います。

五島:私も同意見です。私が在籍するSHEという教育スタートアップは、グローバルなオープンイノベーションに取り組んでいます。カルティエやマッキンゼー・アンド・カンパニーによる国際ビジネスプランコンペティション「ウーマンズ・イニシアチブ・アワード」において、スタートアップ企業として日本初のファイナリストに選出されました。しかしその際、現実的な事業グロースに向けて大企業との連携には課題があると感じました。

スタートアップは、ヒト、モノ、カネ、情報といったあらゆるリソース不足に悩まされています。大企業主導で路線変更を前提に協業するのではなく、中長期的な報酬体系を設定し、大企業の人的リソースを活用しつつビジネスを推進するような現実的な連携ができると、われわれとしては非常にありがたいですね。

大久保:私が在籍するGlobal Mobility Serviceは、社会課題をどう解決するかとの視点に立ってビジネスモデルを組み上げてきた企業です。社会課題を解決しつつ、経済的合理性をもってビジネスを推進するためには、自社の技術や人的リソースだけに頼っていては可能性を制限してしまいます。持続可能なビジネスモデルをつくり上げるには、企業、自治体、個人などとの協力が不可欠。オープンイノベーションを前提にしないと、これからの新しいビジネスモデルは組み上がっていかないのではないかと思います。

春田:大企業や自治体など大きな組織と協業する方が、ビジネスはグロースしやすいのでしょうか。それとも、スタートアップ同士のオープンイノベーションも考えられますか?

南坊:大企業、スタートアップ企業に関わらず、スピード感が合うかどうかが重要だと思います。その点に関して言えば、スタートアップ同士の方が相性は良いですね。とはいえ、ビジネスに親和性があれば、スピード感以上のレバレッジは効くので、大企業と組むメリットはあると感じます。

NORTH AND SOUTH 代表取締役/マーケティングディレクター 南坊泰司氏
NORTH AND SOUTH 代表取締役/マーケティングディレクター 南坊泰司氏

五島:南坊さんがおっしゃる通り、事業をスケールさせる上で大企業が持つアセット、信用はとても大きいと感じます。大企業と組んでそれらを生かす方が、結果として世の中の変化スピードも上がります。ビジネスの親和性が高く、最短距離で大規模なビジネスへのスケールが見込めるのであれば、提携する意義があると思います。

大久保:大企業をつい1個の“塊”として捉えがちですが、大企業にもさまざまな部署があり、多岐にわたる技術やリソースが埋まっています。技術や人など細かい単位で輝くものを見つけ出し、スタートアップと結び付けることができると理想的です。

五島:最終的に、ビジネスは人単位で進みますからね。親和性のある人をいかにマッチングし、現実的な技術を走らせることができるかが、今後のオープンイノベーションの鍵だと思います。「企業同士で一緒に戦略を練りましょう、何か新しいことをやりましょう」というのではなく、個人と個人がつながることが重要ではないでしょうか。

オープンイノベーションにはマッチングだけでなくオペレーションも重要

春田:事業を成長させるために大企業と提携することもあり得ますが、スタートアップには情報がないため、大企業の中のどなたにアクセスすればよいかが分からない。そこに解をもつのがDGDUです。皆さんは、DGDUにどのような可能性を感じていますか?

南坊: DGDUが新たにスタートさせた協業支援サービス「CoNext」では、“マッチング”に価値を見いだしたのが、新しいですよね。しかも、普通の事業会社では思いつかないような企業とマッチングさせてくれれば面白いですね。

五島:コンサルティング会社や金融事業者は仲介することはあっても、あくまでも経営者同士のマッチングです。実際に事業を推進するのは、現場のミドルマネージャークラス。そのポジションの方々にスタートアップの思いが伝わらないと、マッチングはうまくいきません。

広くコネクションを持ち、なおかつ人選ができる眼識に関して、電通には一日の長があるのではと感じています。「CoNext」にも、大きな可能性があると思います。

SHE 執行役員/CMO・COO 五島淳氏
SHE 執行役員/CMO・COO 五島淳氏

伊藤:企業間のマッチングだけでなく、オペレーションも大事だということですね。経営層が協業に同意しても、実際に事業を動かす方々の目線が合っていないと破綻してしまいます。DGDUでは、大手企業とスタートアップ双方の事業をキャッシュフローまで含めて見ています。その上で、お互いの目線を合わせるよう支援を行っています。

南坊:広告会社の強みは、エグゼキューション力(実行力)と適切なオペレーションです。これらは場数を踏まないと身に付かないため、スタートアップに不足しているナレッジと言えます。その点が電通の優位性ではないでしょうか。ただ、電通という組織体は大規模過ぎるので、外部の方からすると、どこにアクセスすればよいのか分からなかったと思います。DGDUという入り口があることで、スタートアップも電通と関わりを持ちやすくなるのではないでしょうか。

五島:電通という組織を離れて感じるのは、優秀な先輩後輩に囲まれた、恵まれた環境だったということです。DGDUでは業績連動型の報酬形態があるそうなので、その範囲内でプロのマーケターやクリエイターが支援するのは大きな強みになると思います。

大久保:私が在籍していた頃から、「電通の強みはネットワーク、人脈だ」と聞いていました。とはいえ、ネットワークの“数”で言うと、他にも同等の取引先数がある企業は多いと思います。では何が違うかといえば、ネットワークの“質”なのではないかと思います。幅広いネットワークがある上、その方々との関係性が密接。その“質”を大事にして、より近い関係性の中で大企業とスタートアップをつないでいただけると、ビジネスチャンスが生まれる可能性も高まるのではないかと思います。

Global Mobility Service CEO室長 大久保祐介氏
Global Mobility Service CEO室長 大久保祐介氏

広告会社の電通が、事業コンサルに取り組む意義とは

伊藤:電通は広告会社ですが、DGDUではその枠を超えた事業コンサル業に取り組んでいます。皆さんは、電通がスタートアップを支援することに対し、どのような意義を感じますか?

五島:企業の利益拡大に貢献するのが電通本来の役割だと理解しています。でも、非広告領域を含めて事業を伸ばすことに実績があると、ご存じでない方も多いはず。そういった事実を表に出せば、相談を持ちかけたくなるのではないでしょうか。

南坊:とはいえ、実際に事業の成長にコミットしている電通社員はそこまで多くありませんよね。信用に足るアクションが必要ですし、事業と向き合えるようなサービスラインや社員がいること、あるいはその事例を打ち出していく必要があるのではないでしょうか。

五島:事業へのコミットとは何かというと、電通の利益になる領域以外も含めて一緒に事業を伸ばすことです。事業の運営は、ビジョンの策定やブランディングだけではありません。CSやセールス、顧客DB管理に人材採用、はてはトイレの修理なども含めて、幅広い事業全体のリソースマネジメントまでリアリティーを持って考えることが、スタートアップと組む場合は必要だと思います。

伊藤:そもそもスタートアップは、ヒト、カネ、情報などのリソースが流動的で、常に枯渇のリスクがあります。一方、大企業も既存事業は縮小しているため、新規事業を開拓しないと企業として存続できません。その点DGDUでは、マッチングにとどまらず、ビジネスメーキング、ビジネスグロースまで支援しています。その点についてはいかがでしょう。

電通グロースデザインユニット プロジェクトリーダー 伊藤契太氏
電通グロースデザインユニット プロジェクトリーダー 伊藤契太氏

五島:手段を選ばず、最後まで事業グロースに伴走してくれることが強みですよね。他にそれをできる企業は少ないと思いますので、優位性もありますし、ニーズも高いと思います。業績連動型のレベニューシェアなら、資金力に乏しいスタートアップでも依頼しやすいのではないでしょうか。

大久保:外部組織を使い、スタートアップのフェーズや資金力に照らしてチームを最適化してくれると依頼のハードルが下がりそうです。DGDUが今取り組んでいるのは、5年先を見据えた業績連動型レベニューシェアモデルですよね。初期費用を抑えつつ、でもリターンは大きいため、スタートアップが描く成長曲線に合ったモデルではないかと思います。

伊藤:DGDUでは、社内外を問わずプロジェクトに最適な人員をアサインするギルド制にチャレンジしています。電通は、マーケットコミュニケーション領域に特化した企業でした。依頼するスタートアップから見ると実際に事業を立ち上げ、ファイナンスをしているイメージがあまりないため、資金調達する際に事業主側が投資家に何を求めているのかなど、リアルな感触が分からないのではないかという懸念があると思います。

そこで、事業主としての経験を持つ方にアドバイザーとして加わっていただき、その知見を取り入れつつ支援を行っています。そのうえで、向き合っているスタートアップや大企業のフェーズ、課題に応じて職能を最適配分しているんです。ギルド制にすることで、われわれの知見も広がりますし、時流に合うコンサルができるのではないかと思います。

電通OBの知見を取り入れ、オープンイノベーションの価値を拡大

春田:他社では、その企業を辞めたOBと在籍していた会社がうまくネットワークしている例も数多く見られます。皆さんは電通OBという立場ですが、電通とOBでネットワークを構築できるとお考えでしょうか。

電通 ソリューション開発センター、電通グロースデザインユニット 春田英明氏
電通 ソリューション開発センター、電通グロースデザインユニット 春田英明氏

南坊:電通は、OBとつながる文化がまだ醸成されていないように感じます。でも、DGDUという部署があることで、今後ネットワーキングが加速するのではないかと期待しています。

五島:SHEはリクルートOBが社員の6割を占めています。OBネットワークを通じて仕事の相談が来ることもありますし、副業などの人材交流も盛んです。DGDUが先導し、外部企業とのコラボを促進すると、OBとのネットワークも構築されていくのではないでしょうか。

伊藤:DGDUの表向きの価値は、クライアントの事業をグロースさせることです。それ以外の価値で言うと、DGDUはセクショリズムが全くないため、クリエイティブ、マーケティング、事業開発などさまざまな情報が行き来するプラットフォームであることだと思います。

さまざまな職能を持つ方に加わっていただいていますが、今後われわれには分からない領域も出てくるはず。電通OBとして幅広い領域で活躍している方々の知見を取り入れ、スキルセットを拡張して提供価値を拡大できたらと思います。経験や学びを積み上げたOBの皆さんとその先もチームを組めたら、われわれが向き合っているクライアントに対しても価値を最大化できますし、今後の電通のあり方として、面白いですよね。皆さんが、DGDUと協業する可能性はありますか?

大久保:先ほどの話にもつながりますが、電通には質の高いネットワークが多数あります。オープンイノベーションと言っても出会うことがゴールではなく、社会に変革を起こしてこそ初めてイノベーションになります。その観点からも先ほど挙がっていた電通のエグゼキューション力に期待していますし、何かご一緒できる機会があればいいなと思っています。

南坊:電通の素晴らしいところは、クリエイティビティーです。自社の強みとしてクリエイティビティーを標榜するのは、広告業界ならでは。だからこそ、現役社員はもちろんOBにも特別な価値や独自性があると思っています。そういったところで、つながりを持てたらいいですね。

クリエイティビティーを掛け算すれば、事業はもちろん企業運営に関わること全般にさまざまなアイデアが生まれるのではないでしょうか。

伊藤:DGDUの今後のあり方については、どのような意見をお持ちでしょうか。

五島:サービス内容、目指す世界観は申し分ないと思います。あとは、いかにグロースデザインをしていくかではないでしょうか。DGDUには、多様な人材を抱える電通の中で、職能にフィットする優秀な仲間を柔軟にアサインできる強みがあると理解しています。その基盤を整え、オペレーションを精緻化することが重要だと思います。

大久保:世の中には、DGDUのようなサービスに期待しているスタートアップは多数あります。片や、電通にはどうしても過去の秀逸なメディアビジネスのモデルにとらわれてしまう側面もあります。DGDUへの外部からの期待をアピールし、電通内で変革を起こすのがよいのではないかと思います。

南坊:電通OBとのネットワークを深めることが、DGDUや「CoNext」の価値にもつながるのではないかと。われわれも協力体制を築きますので、ぜひ電通もOBと強固な絆を結んでほしいと願っています。

春田:皆さんとの今回の対談で、スタートアップ企業がどのような点を電通に期待しているか、また電通が大企業に対してどのような新たな価値を提供できるか、大変良い視点を頂くことができました。また皆さまとも本領域でさらに関係を深めていければと思います。本日はありがとうございました。