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帝国が逆襲する街

セカイメガネ №12

  • Ersel Serdarli

2013/08/07

帝国が逆襲する街

イスタンブールに生まれ育った幸運に私はいつも感謝している。街はかつてビザンチン、オスマン、二つの帝国の首都として知られた。いまはトルコ共和国の中心である。ボスポラス海峡によって片側がヨーロッパ、残りがアジアに分割されている。私はアジアの自宅からヨーロッパのオフィスへ、毎日大陸を横断して通勤している。仕事が終われば再び大陸を越えて帰宅する。

イスタンブールで面白いのは、現代で覆い隠された都市に、かつての帝国が逆襲し始めている光景だ。現代のベールは剥がされ、歴史が顔をのぞかせる。

最初の共和制政府はオスマン帝国の名残を消し去ろうとしていた。何世紀も続いた君主制を革命で打倒し、ようやく健全な民主制を誕生させたのだ。しかし、政府はその後、伝統を重視する姿勢を見せるようになり、祖先が残した遺産を私たちに思い出させようとしている。いまでは全ての分野でオスマンが流行だ。建築、装飾、音楽、美術、テレビ番組、外交活動にさえ影響が見られる。

この数年、オスマン帝国皇帝が主役のテレビ番組シリーズ 「Magnificent Century」が大人気だ。中流以上の年収世帯で50%を超える視聴率を記録した。ヨーロッパ、中東、北アフリカ、イランまで45カ国以上に輸出・販売されるメガヒットになった。帝国はスクリーン上でよみがえったのだ。

2004年には当局が海底鉄道敷設に着手した。街のヨーロッパ側、アジア側双方を海底で結ぶ鉄道だ。工事を始めた途端、ビッグニュースが飛び込んできた。歴史で知られるテオドシウス港が海底で発見されたのだ。考古学調査は3年に及び、計画は延期を余儀なくされた。けれど調査結果には想像を越える値打ちがあった。街の歴史が8500年前までさかのぼれるようになったのだ。海底で発見された新石器時代の遺物、35隻の舟、財宝は市内の考古学公園に常設展示される。

この街の遺伝子には、かつての帝国が組み込まれている。丸一日メールやら会議やらで疲労困憊(こんぱい)し、船に乗りボスポラス海峡を渡る。セイヨウハナズオウの紫の花びらが夕日に映え、ビザンチン帝国の遺跡や財宝を私に思い起こさせる。花びらが歴史の廃墟から私にあいさつをしてくれている。

未来が動きだすとき、私の暮らす街イスタンブールでは、帝国が必ず逆襲するのだ。

(監修:電通イージス・ネットワーク事業局)