採用課題は、経営課題。採用にもクリエイティビティを。No.1
コロナショックで、採用は学歴フィルターから#タグ検索へ。
2020/04/17
早期化、通年化の流れが加速し、変わりつつある採用市場。
さらに、今年は新型コロナウイルス感染症の影響で、企業も学生も、今までとは大きく異なる環境の中で活動を行っています。
企業は今後、どのような点を意識して採用活動を行えばいいのか。
まずは、今年2月に行った電通ワカモン(※)の就活意識調査の結果をご覧ください。
※電通ワカモン(電通若者研究部):若者と社会の関係性をデザインすることをミッションとして掲げているプランニング&クリエイティブユニット。就職活動のリデザインを通して、若者と企業の新しい出会い方のプロデュースを行っています。
この結果に驚くかどうかで年代の差がわかるといってもいいほど、就活生の意識は激変しています。
企業に選ばれる就活から、学生が選ぶ就活へ
人手不足は日本全体の課題ですが、少子化が進んでいる若者は特にその傾向が強く表れています。そんな希少価値の高い若者の就職先のトレンドはコンサルティングファームなどの外資系企業。今、日系企業は優秀な学生の獲得に苦戦しています。その結果、学生の間では「売り手市場」の意識が高まりました。
冒頭のデータが示すように、学生は企業を絞って就活を行い、自分が希望する配属先を保証してくれることを求めています。「学生が企業を選んでいる」という意識も強く、就活において企業と学生が対等な立場になりつつあることが読み取れます。
今度は、企業の立場になって考えてみましょう。特に日系大手はこれまで採用活動を「学生を選ぶ場」と捉えてきました。しかし今は「学生から選ばれる場」でもあります。それ故に採用にもブランディングやマーケティングの視点が必要になっています。事実、電通にも多くの問い合わせを頂いています。
これまで電通がクライアントと仕事をさせていただく場合、クライアントの窓口は宣伝部や広報部が主体でした。しかし、採用に関するプランニングでは、人事部や採用チームの方々、もしくは「宣伝部×人事部」の混合チームと組むケースが多くなりました。
また採用ブランディングを社員の意識改革(インナーブランディング)と連動させたり、学生以外へのブランディング(コーポレートブランディング)に活用したいという声も多くいただいています。
通年採用で疲弊する人事部
大きく変わりつつある採用市場ですが、今年さらなる変化を迎えています。これまで経団連が定めてきたいわゆる「就活ルール」が事実上の撤廃に向かっています。これまで経団連に加盟する大企業は、学生たちの学業を尊重する意味で3月を採用広報(採用ウェブの開設など)の解禁日、6月を採用選考の解禁日(面接の開始)としてきました。
しかし経団連に加盟しない外資系企業や、ベンチャー企業はこのルールを守る必要がありません。また、このルールは、あくまで紳士協定のため、抜け駆けする企業も増えています。優秀な学生ほど早く囲い込みたい。つまり、企業は律儀に採用解禁日まで動かないでいると、採用市場に優秀な人材がほとんど残っていない状態になってしまいます。
日系大手がルールを守れば守るほど、優秀な人材が日系大手に入社しなくなる現状。これらを受けて経団連もこの「就活ルール」の見直しを表明しました。
一方で、この「就活ルール」が撤廃されると、人事部・採用チームは格段に忙しくなります。これまで採用活動は冬〜初夏がピークでしたたが、時期の区切りがなくなったことで「通年採用」に移行します。つまり年中忙しい状態が続くのです。
また、3年生の冬になってから接触しては遅いので、これまで採用のターゲットではなかった1〜2年生にも早くから接触して、「母集団形成」をする必要が出てくるでしょう。
単純計算すると、期間が2倍になって、ターゲットが3倍になるのがこれからの採用市場。この流れを受けて、新卒採用のアウトソーシングも進んでいます。採用面接の面接官をアウトソーシングしている企業も珍しくありません。
コロナショックで急速に進むオンライン化
採用の変化に追い打ちをかけるのが、新型コロナウイルスの影響です。本来であれば 3月の採用広報解禁を受けて実施されるはずだった採用関連イベントや、面談が、今年はことごとく中止となっています。
これに代わる手段として用いられているのがオンラインイベントやオンライン面談。これまで地方学生に向けては一部行われていたオンライン採用が、首都圏の学生たちにも用いられるようになりました。
電通でもこの3月、DENTSU RECRUIT LIVEとしてライブ配信イベントを実施しました。
オンラインイベントは場所を選ばず参加できるため、就活の地方格差を是正する効果も。結果的にこのイベントは海外留学生の参加も多く見られました。オンラインによる就職活動はコロナ収束後も続くと考えられます。
学歴フィルターから#タグ検索へ
売り手市場、通年採用、全学年採用、オンライン化、採用チームのリソース不足。これらの影響を受ける「採用新時代」は、学生のスクリーニング(ふるい分け)にも大きな変化が予想されます。
これまでオフラインの面談に進む学生には、学歴フィルターやSPIなどの適性検査によるスクリーニングがよく行われていました。しかし、大企業ともなれば、それでも何千人もの学生と会わなければいけません。また、10分や15分の個人面談、グループ面接で学生を見抜くのはプロでも難しいでしょう。
通年採用、全学年採用に移行すればこの手間はより拡大します。それを受けて、学歴やテストセンターに代わるオンラインのスクリーニングが必要になるでしょう。採用は学生が企業を探すのではなく、企業が学生を探すフェーズに入ってくるのです。
今の若者はSNSのハッシュタグなどで情報を探すのが一般的。企業が学生を探す際の検索行動でも同じような「#タグ検索」が行われるようになるでしょう。
こんな属性、こんな活動、こんな趣味嗜好などリアリティーのあるタグが採用のスクリーニングに機能してくると考えられます。これまでの学歴や資格は膨大なタグの一つにすぎないようになります。すでに、学生の属性に合わせてオファーを配信できるプラットフォームも登場し始めています。
また、オンラインでスクリーニング、オフラインで入社の意思確認、となれば採用チームの負担軽減につながるはず。コロナショックでオンライン化が常態化すれば、採用活動はこの方向に進むと考えられます。
激変する採用現場について、ここまで書いてきましたが、変化に対応できるかどうかの大きなボトルネックは、上層部や経営層の意識です。
いまだに「日系大企業が優秀な学生にとって人気があり、採用は学生を選ぶ場」と捉えていると、採用チームの予算もリソースも増えません。結果的に変化に対応できず、優秀な学生が離れていき、社としての力を落とすことになりかねません。
採用は経営課題です。優秀人材をヘッドハンティングするのもいいですが、原石となる新卒採用への意識を変えることが社内改革の一歩となるでしょう。
高校生・大学生を中心に10〜20代の若者の実態にとことん迫り、若者と社会がよりよい関係性を築けるようなヒントを探るプランニング&クリエイティブユニット。
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