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【続】ろーかる・ぐるぐるNo.24

玉子屋やまたか

2014/02/06

群馬県みどり市。トロッコ列車から見える紅葉が有名な「わたらせ渓谷鐵道」の走る町で、従業員30名、口に含めばじゅわりと出汁が広がる「江戸前玉子焼き」を寿司店やデパートなどに卸しているのが山高食品です。「いまの時代、安くないと売れないとか工夫のしようがあるでしょうとかいろんなことを言われるけど、自分が食べたい、食べてもよいと思う品物だけを作りたいですから」と頑固に正直にビジネスをしていらっしゃるのが社長の高山勝次さんです。

 
山高食品の旧ロゴ


その娘、翠さんが数年前スイーツの販売を始めました。口どけがフワフワのシフォンケーキや素材を厳選したパンナコッタが評判となり、玉子焼き工場のガレージセールは毎回多くのお客様で賑わうそうです。そこで地元の勢いをそのままに、お取り寄せ通販サイト「よんななクラブ」に出店、全国進出したのですが、商品がなかなか売れずしばし呆然…。ぼくが高山さんたちに出会ったのはそんなタイミングでした。

ちょっと冷静になってみると山高食品が通販サイトで苦労した理由は明らかです。よんななクラブにはスイーツだけでも約3000商品あるのですが、「フワフワ」のシフォンケーキも「素材厳選」のパンナコッタも、お客様から見ればわざわざ送料を払ってまで取り寄せる必要が感じられない「ありきたりの商品」だったからです。素材を厳選して誠実に商品づくりをすることはとても大切なことですが、まじめにつくれば必ず売れるという話ではありません。お客様が「こんなのあるんだ!」と言ってくださるポイント(=コンセプト(アイデア))を用意しなければなりません。

多くの議論と「ぐるぐる」を重ね、いま山高食品は「玉子職人」という言葉をとても大切にしています。創業以来、来る日も来る日も江戸前玉子焼きを焼き続けて身に付けた「職人技」こそがお客様を振り向かせ、競争を勝ち抜く武器だと自覚しているからです。実際、玉子はとても繊細な素材だそうです。ちょっとした気温や湿度の変化で昨日とはまったく違う反応を見せると言います。全ての商品を玉子職人による熟練の技で仕上げていくのが「山高食品」ということです。

山高食品の新ロゴ


電通のアートディレクター工藤章子さんがつくった新しいロゴにはそんな思いが込められています。紙袋や紙箱そして何より召し上がっていただく商品を通じて「玉子職人らしさ」を伝えていけたらと思っています。その第1弾として発売されたのが、玉子好きのために玉子職人がつくった「たぶん世界一濃厚なプリン『天国のぶた』」。おかげさまでよんななクラブのスイーツ部門では2013年年間1位を獲得しました。少しずつですがお客さまに「玉子職人のスイーツ」というコンセプト(アイデア)が表現でき始めているのかもしれません。

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そして1月30日。みどり市に待望の店舗がオープンしました。これでガレージセールは卒業、本格的に「玉子職人のお店」として始動します。何か機会があれば、是非訪れてみてください。

 
大きな暖簾でお待ちしております。

 

ということで「ろーかる・ぐるぐる」というタイトルにもかかわらず最近すっかりローカルからご無沙汰していたので、できたてほやほや群馬から届いた事例をご紹介しました。次回は「クリエーティブこそ、戦略だ」についてお話しする予定です。

どうぞ召し上がれ!