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今、日本に「Bチーム」の本が必要な理由。No.1

2020/06/08

仕事に「野望」混ぜてみませんか?

本業を「A面」とするなら、社員それぞれの私的活動、前職、学生時代の専攻、趣味といったものを「B面」として、これを仕事に生かそうという電通Bチーム(以下、Bチーム)。世の中に今までと違う方法(=プランB)を提供しています。

2020年夏、Bチームを扱った書籍が2冊刊行されます。本連載では、それぞれの書籍の仕掛人に、なぜ今「Bチームの本」を出すことになったのか、編集者としての「思い」を聞いていきます。

『仕事に「好き」を、混ぜていく。 あなたのB面を本業に生かすヒント』(翔泳社)
『仕事に「好き」を、混ぜていく。 あなたのB面を本業に生かすヒント』(翔泳社)
208ページ、1600円+税、ISBN978-4798164663

6月8日発売の『仕事に「好き」を、混ぜていく。 あなたのB面を本業に生かすヒント』(翔泳社)は、あらゆるビジネスパーソンや組織のリーダーを対象とし、「B面」を仕事に生かすことで生まれるさまざまな可能性を示した、少し変わったビジネス書です。翔泳社の編集者・渡邊康治さんに紹介していただきました。

企画の原点は戦国武将に憧れた少年時代に

小学校2年生のとき、父が「三国志III」というスーパーファミコンのゲームをやり過ぎて風邪をひきました。

「大の大人が風邪ひくくらい熱中するゲームって、どんなゲームやねん」

と興味を持ったことが、今にしてみれば、本書を企画する原点となりました。

「三国志」シリーズはプレーヤーが君主となり、自国を豊かにしつつ版図を拡大し、天下統一を目的とする歴史シミュレーションゲームです。実際にやってみると小学生にはやや複雑なゲームながら、出てくる武将たちがカッコよくてやめられなくなりました。

芋づる式に「三国志」と同じコンセプトのゲーム「信長の野望」に出合います。いつしか平日よりも土日の方が早く目覚め、一度コントローラーを握ってから顔を洗うような小学生になっていました。

以降ティーンエージャーにかけて、ぼーっとしているときはたいがい、三国志の舞台である2~3世紀の中国や、信長たちの生きた16世紀日本の戦国時代にトリップしていました。

「三国志」にしても「信長の野望」にしても、武将にはそれぞれ武力、政治、知力などのパラメーターが割り振られ、おのおのの特質が数値化されています。

たとえば合戦では「武力」の高い武将(張飛、趙雲、真田幸村など)が活躍しますし、領内の開墾には「政治」の高い武将(諸葛亮、明智光秀、石田三成など)が成果を上げてくれます。


パラメーターの向こう側にある武将たちの姿に魅せられていた

こうしたパラメーターに基づいた武将たちの仕事(合戦や開墾)が、いわば武将たちの本業、A面といえます。しかしなぜ、真田幸村は武力が、石田三成は政治が高いのかが気になって調べていくうちに、そこには数値では表しきれない物語を持った一人の人間がいることに気が付きました。

ゲームでは単純に「武力」として数値化されているその裏には、きっと一人一人の「特技」「才覚」「好きなこと」があったはず。Bチームの人たちが持つ「B面」に当たるものです。

そう思うと、「ここは槍自慢の拙者が殿(しんがり)を務めてみませす」とか、「算術が得意な某(それがし)にお任せくだされば石高を正確に見積りましょう」という声が聞こえてくるような気さえして、トリップ度合いに拍車がかかりました。

戦乱の世の中は、きっと現代と比べると大変シンプルなものだったと思います。自分の得意なことや好きなことをやるから、仕事で成果が出る。というよりも、自分の本当に得意なことや好きなこと(=B面)を、本業(=A面)にフル活用しないと、サバイブできない世界観ということもできるでしょう。

好きなことも仕事も隔てなく、自身の全人格、全存在をかけて戦乱の世を生きる魅力的なキャラクターのドラマ。その姿を想像することこそが、僕にとっての戦国シミュレーションゲームの醍醐味だったのでした。


Bチームに感じたのは「リアル信長の野望」だった

そんな戦国武将たちに没頭した青春でしたが、就職を機に上京して組織に属し、日々働いているうちに彼らのことを忘れかけていました。

偏差値、年収、人気企業ランキングといった数値化できる表面的なパラメーターや、業界の慣例、配属先の部署、役職など組織の中の常識が僕たちの脳内に漂って霞をなし、自分の才覚や得意なこと、好きなことを見えにくくしています。スマホで膨大な情報に接するようになって、この傾向はますます加速されたようにも思います。

それに、もし得意なことや好きなことが見えていたとしても、それを仕事に持ち込むことや、「やらせてください」の一言には勇気と自信がいりますし、責任が伴います。

「このまま与えられた仕事をこなしていくだけでよいのだろうか」

「変えたい、でも変えられない」

小さなうめき声にも似た思いを、僕自身も含めて、身近な人たちにも感じるようになりました。

そんなある日、ウェブの記事で「電通Bチーム」の存在を知ったときは胸が高鳴りました。「得意なこと」や「好きなこと」を本業に取り入れるBチームは、モヤモヤした気持ちを寄せつけない、自然体の「働く」を地で行っていると感じたからです。

自分の得意なことや好きなことをフル活用することで、仕事で成果が出る。成果が出なくてもやりきれる。このシンプルさはまさに「リアル信長の野望」の世界ではないか。僕たちの閉塞感を打ち破るヒントがあるのではないか。何より、久しぶりにあの世界観を肌で感じてみたい。

さっそくBチームの当時の代表・倉成英俊さんに「Bチームって、一体どうなっているのですか?教えてください」という趣旨のメールを送りました。お会いして、その後さすがはBチーム、とんとん拍子で事が運び、出来上がったのがこの本です。

Bチーム=真田丸説

本を作る過程でBチームの会議に出させてもらったり多くのメンバーの方とお会いしたりする中で、一つの仮説が頭をよぎりました。

「Bチーム=真田丸説」です。  

真田丸とは1614年の大坂冬の陣で豊臣方の武将・真田幸村(真田信繁の後世の呼び名)が大阪城の南側に増築した出城、「でっぱり」のようなものです。

豊臣方は大坂冬の陣で、攻め込んできた徳川家康の軍勢に対して「籠城策」を採りましたが、幸村は独自に真田丸を築き、「プランB」として徳川方への出撃の可能性を見据えていました。また、日本中から志ある浪人を束ねて一軍を成していました。この“真田幸村が率いた超個性派集団”は、後世の講談師たちによって「真田十勇士」伝説になり、長く語り継がれました。

  • 個性派メンバーが集い、
  • プランBを見据えている。

このことから、Bチーム=真田丸説を勝手に提唱しています。

真田丸は1615年の大坂夏の陣で豊臣家と命運を共にしましたが、それから400年後の今日には NHK大河ドラマ となり、その志の強度が証明されました。

日本のさまざまな組織の中にも、Bチーム=真田丸のような異質の「でっぱり」が増えると面白いのではないか、という思いも、わずかばかり本書に込めています。

現代の真田丸的なBチームの活動は、遠い未来、2400年ごろに、姿を変えて何かを動かしているかもしれません。  


B面の見つけ方、育て方とBチームの作り方がつまった本

さて、ではこの本は一体どんな中身なのかといいますと、Bチーム代表の倉成さんがBチームの仕事観と仕事術を紹介しつつ、随所に70名を超えるBチームメンバーへのアンケートから集めた言葉を織り交ぜています。

前者を経糸とするなら後者は緯糸となり、Bチーム全員で織り上げた大きなテキスタイル、旗のような本となりました。こんな旗印です。

Bチームの旗印

この旗印の下、現在56人のメンバーが集い、以下のようなB面ジャンルを展開されています。

BチームのB面たち

こんなにバラエティーに富んだB面を仕事に生かしているなんて!と圧倒されそうですが、実はBチームに所属している人も、みんながみんな最初から「B面」を持っていたわけではありません。中にはBチームに加わるまで、自分のB面に気づいていなかったメンバーもいるのです。

だからこそこの本では、「自分にはB面なんかない」と思っている人に寄り添ってB面を見つけるための方法を紹介したり、  B面を見つけた後はもう見失わないようにB面の育て方を提案しています。

また、Bチームのない組織に「Bチーム」を取り入れるためのヒントや、組織内でBチームを運営するときの知見も、惜しみなく公開されています。

好きを仕事にしなくても、好きを仕事に「混ぜる」ことはできる

Bチームを見ていると、好きを仕事にすることは誰にでもできることではないが、好きを仕事に混ぜることは実は誰にでもできるのではないかと思い、本書のタイトルとしました。

Bチームの皆さんに共通するのは、B面と共に過ごす時間を慈しんでいることです。焦ることなく、合目的的にならず、ただ熱中している。 

B面は誰にとっても熱いものです。それが仮に一見役に立たなそうなB面であっても、体の芯から熱を帯びながらじわじわと湧き起こってくるB面は、自分を変え、周りを変え、ひいては世界を少しずつ変えていく可能性を秘めています。

現代は自身の野望に100%注力していた武将たちの時代のように、シンプルではありません。武将のように得意なことや好きなことを本業にフルに発揮して生きている人は、あまり多くないかもしれません。

しかし、そんな現代を生きる僕らも、自分の力を100%発揮できる「B面」はきっとあるはずです。そしてB面への熱いエネルギーを、つまり全人生を懸けたいくらいの野望を本業に「混ぜる」ことができれば、憧れた戦国武将のように魅力的に生きられるのではないか。そんな思いを、書名に込めています。

皆さんも、本書をきっかけに内に秘めた自分の「野望」を見つけ出し、仕事に混ぜてみませんか?きっと世界が少し面白くなるはずです。