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通販広告と心理学のタッグで見えてきた「現代人の購買心理」No.7

発見!買いたい気持ちを2倍に増やす、超シンプルな方法。

2020/07/16

通販広告と心理学、異色タッグのプロジェクトチームが、3年かけて通販広告のデータを解析。その成果をまとめた『売れる広告 7つの法則』(光文社新書)より、全7回シリーズでトピックスをご紹介します。

本シリーズも、いよいよ最終回。というわけで今回は、すべての人がすぐに必ず実践できて、しかも買いたい気持ちを2倍に増やせる、とっておきの秘策をご紹介したいと思います!

なんて、ちょっとうさんくさい感じの導入から始めてみましたが、実際のところ、突然「買いたい気持ちを倍増させる秘策」と言われても、普通は「そんな都合のいい方法、あるわけないだろ」とか、「あったとしても、汎用性のないインチキ手法だろ」などの感想しか持たないと思います。

ですが、これ、うそじゃないんです。これまでに蓄積された通販広告のデータをくまなく洗ったところ、間違いなく効果が出る、それでいて必ず誰もが実践できるシンプルな方法があることが分かったのです。

その方法とは、あなたが考えたセールストークを、ただ3回繰り返すこと。たったそれだけ。

データが確かに示す、「3回繰り返し」の効果。

実をいうと、われわれがデータを洗いざらい調べる何十年も前から、購買意欲を高める上で「3回繰り返すこと」が効果的だ、という話は、通販業界の定説となっていました。皆さんも見たことあるかと思いますが、たいていのテレビショッピング番組は、同じストーリーを3回繰り返す構成となっています。

専門的には、この繰り返しの単位をロールと呼び、ロールが3回繰り返される3ロール型の構成がテレビショッピングの基本中の基本とされているのです。もちろんそうなっている理由は、このやり方が一番売れるからに他なりません。

そんな中で今回、私たちが挑んだのは、この“定説”が本当に正しいのかの検証でした。具体的には、3ロール型のテレビショッピングの映像をインターネット上でモニターの方々に視聴いただき、その反応を測定する実験を行ったのです。

実験は、映像を見ながら「いいね」「悪いね」「買いたいね」の三つのボタンをリアルタイムで押してもらうという方式で行いました。その結果が次の図です。

通販連載7回目表1

図に入っている区切り線は、ロールの分かれ目となります。ロールごとに見ると、すべてのロールで最初に「悪いね(グレーの実線)」が高まり、その後に「いいね(黒の実線)」が、そして最後に「買いたいね(赤の点線)」が高まる傾向があるのが分かります。これは、まず冒頭でネガティブな共感を獲得し、その後に商品の存在を伝えて好感をつくり、最後に対価を伝えて購買を決断してもらう、というテレビショッピングの鉄板ストーリーが生み出した心の流れとなります(この点については、過去の連載で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください)。

そして、注目してほしいのは、同じストーリーのロールを3回繰り返した際の変化、とりわけ「買いたいね」の変化です。分かりやすいように、「買いたいね」の反応のみを抜き出した、次の図をご覧ください。

通販連載7回目表2

先ほども触れた通り、「買いたいね」は各ロールの最後に設けられた対価を伝える部分、いわゆる「CTA(Call To Action)」で高まるのですが、ロールごとのこの数値の変化を見てみると、ロール1からロール2でやや高まった後、最後のロール3で倍の高さになっているのが分かります。「買いたいね」ボタンが買いたいと思った時に押されることを考えると、まさに3回繰り返すことで買いたい気持ちが倍増した、ということを表す結果です。

テレビショッピング以外でも、同様の現象が。

実は、3回繰り返しによる購買意欲向上の効果は、テレビショッピング以外の通販広告でもしばしば見られます。

通販連載7回目表3

上の図は、2分間の通販CM、いわゆるインフォマーシャルを3回続けてモニターに見せ、商品を欲しいと思ったかどうかを1回見るごとに聞いた結果です。こちらの実験でも、倍増とまではいきませんが、「3回繰り返すことで欲しい人が増える」というデータを得ることができました。

また、通販のコールセンターに注文の電話をしてきた方に、「何回くらい広告を見て電話したか」をヒアリングすると、たいていの人が「3回くらい」と答えます。

こうした事象も踏まえると、「3回繰り返すことで買いたい気持ちが増す」というのは、確かな事実だと言って間違いないのではないでしょうか。

3回繰り返すと「買いたい気持ち」が増す理由。

でもなぜ、同じ情報をただ3回繰り返すだけで、買いたい気持ちが増すのでしょう。

その理由は、一言で言うなら「反芻効果」です。現代人の「買いたい気持ち」は、1回の情報接触だけでは完結せず、むしろ、複数回情報に触れることで強化され完成されるのです。

それをモデル化したのが、私たちが提唱する購買心理モデル「A・I・D・E・A(×3)」です。

AIDEA×3

ご覧のように、購買に向けての基本的な心理変容は、第1ステップの「A」から第5ステップの「A」に至る流れとなるのですが、加えて大事なのが、この一連の心理変容を3回繰り返すこと。最後に付け足された「×3」が、まさにそれを意味します。

モノと情報があふれる中で買い物をする現代人は、たとえ一度の情報接触で「買いたい気持ち」を抱いたとしても、そのまま即「買う」行動に移るかというと、そうではありません。むしろ、最初の情報接触で商品を検討の俎上に乗せ、その後、数度の検討の中で競合商品との比較を行うなどして、十分に納得できた上で初めて、商品を買う決意を固めるものなのです。つまり、同じ情報に複数回触れてもらうことが有効なのは、このやり方が効果的に反芻の機会をつくり出し、納得を生み出すことができるやり方だからです。

これこそがまさに、「セールストークを3回繰り返すことで売り上げが倍増する」というお話の裏にある、現代人の購買心理です。モノや情報があふれる時代だからこそ、1度のセールストークで買ってもらうことは難しい。そんなときに効果的に何度も検討してもらうきっかけとなり、買う必要性を確信してもらえる方法、それが「セールストークを3回繰り返す」ことだというわけです。

ご納得いただけた方には、ぜひとも実践をしてみることをお勧めいたします。

連載を終えるに当たって、思うこと。

さて、約4カ月にわたって連載させていただいた当コラムですが、おかげさまで無事最終回を迎えることができました。第1回から考えると、わずかな期間で世の中が完全に変貌を遂げてしまったことに驚きを禁じ得ません。

一方で、そんな変化の中で注目を増したのが、非対面型のビジネス形態です。この連載で取り上げているダイレクトマーケティングもその範疇に挙げられます。

この先も経済活動をできるだけ停滞させず、新しい生活様式に応えていくためには、非対面型のビジネスを今まで以上に有効なものとし、事業者と生活者の双方にメリットのあるものに昇華していくことが欠かせません。長く非対面型のビジネスに関わってきた者として、そのノウハウをできる限り共有することで、少しでもこれからの社会のお役に立ちたい、そんな気持ちで毎回の記事を書いてまいりました。

最終回を迎えるにあたり、改めてそんなダイレクトマーケティングの本質を整理すると、次の二つの点に集約できます。一つは、「非対面型であれ対面型であれ、人がモノを買う心理変容は根本的には変わらない」という点。そしてもう一つが、「とはいえ、心の動かし方には、非対面ならではのポイントがある」という点です。つまり、言い方を変えると、正しい応用法を用いさえすれば、対面型で培った本質を生かした非対面型ビジネスは十分に可能だということです。本コラムが、そんな応用法のヒントになれば、本当にうれしく思います。

以上で全7回のコラムは終了です。お読みいただいた方々、どうもありがとうございました。なお、本コラムの内容は、拙著『売れる広告 7つの法則』(光文社新書)で詳しく解説しています。こちらも手に取っていただけますと幸いです。