With → Afterコロナへ。進化する私たちの食生活No.1
リモート飲み会だけじゃない?!コロナで変わった私たちの食生活
2020/07/28
かわいい後輩女子の結婚祝いもオンラインで乾杯!
6月のある日の夜9時、私は夕食もそこそこに、PCと残りのおかずとビールとワインを大学生の娘の部屋に持ち込み、深夜0時すぎまで占拠していました。なぜかというと、そう、これを読んでいらっしゃる皆さまはおそらくすでにお察しの通り、リモート飲み会参加のため。
その日のテーマは、後輩女子の結婚祝い。
会社の野球チームのマネージャー同士5人での女子会でした。事前にメンバー全員で、ピンクのハートに“Happy Wedding!”と書かれた背景画像をダウンロードしてスタンバイ。主賓の新婚女子のお宅には、当日ロゼのスパークリングワインとバラの花の入浴剤が届くように手配済み。
飲み会では、若手プランナー女子がパワーポイントで作成した、真っ赤なハートが飛び交う新婚さん向けの質問リストを画面共有しながら、3時間以上女子トークに花を咲かせました。
これまで、リアル飲み会でやってきたこんなことが、各自一歩も外に出ることなく自宅でできるようになったのは、ひとえにインターネットとECの発達によることは言うまでもありません。が、もうひとつ、大きなきっかけになったことがあります。そう、それが新型コロナウイルスの感染拡大です。
1割以上の人がコロナ禍をきっかけにリモート飲み会を実施
新型コロナウイルス感染拡大による「緊急事態宣言」が発出されてから4カ月、電通はリモートワークになって5カ月たちました。緊急事態宣言は解除されたものの、私自身、この5カ月で電車に乗ったのは1度だけというくらいずっと家で過ごしている中で、働き方はもちろん、食生活も大きく変わりました。
人とのコミュニケーションも、直接会うことができなくなった状況下でそのほとんどがオンライン上となりました。家族や友人との会話も、会議も、セミナーの開催も参加も、そして飲み会も。
電通では、コロナ禍になる以前から在宅勤務が導入されていましたが、実際にその制度を全員がフル活用しているでもなく、またオンラインで会話できるシステムも以前からあったものの、それを利用して自宅から会議に参加するというシーンも限られていました。
「打ち合わせは直接会って話さないとね」という雰囲気があったのも一因でしょうが、それ以上に、そもそもこういったオンラインのシステムをうまく使いこなせていなかった、というのが大きかったのではないかと思います。
しかし、新型コロナウイルスが猛威を奮い始めたことで、状況は一転しました。ある日突然(という感じでした)、集まって会議をしてはいけない、会社に来てはいけないとなり、いや応なくネットでつながるしかない環境に追い込まれたわけです。
そうなれば、必然的にオンラインで問題なくスムーズにつながることが必須となります。これまでこのようなシステムに苦手意識があった世代も、そんなことは言ってられません。ITリテラシーが低い私でさえ、5月にはオンラインセミナーを主宰として開催。私自身、人間は追い込まれたらできるようになるんだ!ということを実感しました。
電通「食生活ラボ」(以下、食ラボ)の調査※1によると、緊急事態宣言後、1割以上の人がオンラインでの食事や飲み会が以前より増えたと回答しています。この調査の回答者は40代と50代が大半なので、そういう意味では決してデジタルネイティブな世代ではありません。それでも、離れた人とつながりたいという思いがこういった結果につながっているのではないでしょうか。食は大事なコミュニケーションツールでもあります。コロナ禍によって、私たちは新たな食体験を得ることになったのです。
大きな打撃を受けた外食産業
飲み会がオンラインになったことで、当然影響を受けたのは外食産業です。ACRの調査※2によると、東京50キロ圏のみならず全国エリアにおいて、また12~69歳/70~74歳のいずれにおいても「減った行動」の1位は「飲食店に行くこと」で、その数値は75%を超えています。
また前述の食ラボの調査結果でも、緊急事態宣言後に最も「減った」のは「外食」、そして「自宅での食事」「家族と食事をする機会」が増えていることが分かります。
外食産業は、日本の食文化を支える大事な存在です。食べることが大好きな私にとっては、外食は大きな楽しみのひとつです。ですから、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による飲食店閉店の話を聞くたびに、残念でなりません。
また同時に、そういった飲食店などを中心に食材を卸していた生産者、卸売業者や商社、メーカー企業もまた大きな打撃を受けたことは言うまでもないでしょう。
私は、社内で「新型コロナウイルス感染拡大による食への影響と変化・事例」※3というレポートを作成し定期的に更新していますが、そこに集まっている200を超える飲食事例のうち、最も多いのが「食を通して困っている人を支援」するもの。困っている飲食店、生産者などを支援する事例も多く、目の前の社会課題に対してなんとかしようという人が多いことが見て取れます。
微力ながら食ラボでも、47CLUB※4との連携のもと、ゴールデンウイークに帰省できず家族と会えなかった人の気持ちに寄り添いながら地域の生産者支援にもなる「おいしいものでつながろう運動」を全国32の地方新聞社と実施。たくさんのアクションを頂きました。
この社会課題は、おそらくしばらくは続くでしょう。そしてそう簡単に解決するものではないことも確かです。でも、こういった一人一人の思いやアクションは必ずや困っている人への力になっていると信じています。
(コロナ禍での経験による社会課題の向き合い方についての変化は、こちらもぜひお読みください。「「食」を通して考える。コロナ禍で見えた社会課題の解決のカギとは?」/「コロナ禍での食生活の変化によって近づいた、SDGsとの距離」)
ステイホームで広がった“家ごはん”の楽しみ方
前述のACR調査によると、12~69歳において新型コロナウイルス発生によって「増えた行動」1位が「在宅している時間」で8割近い結果でした。いつもなら仕事や学校で家にいないはずの家族が全員ずっと家にいることになり、食事を作る機会が増えてつらい、毎回献立を考えるのが面倒といった声が多く聞かれた一方で、家族と一緒に食卓を囲める機会が増えてうれしい、在宅時間が増えたことで手の込んだ料理が作れるようになったという声があったのも確かです。
一人暮らし、同居する子どもの有無などによってもその在りようは異なるため、一概には言えませんが、「食」は生活において大きな比重を占めるだけに、「楽しみ」のひとつとして存在していたと言えるのではないでしょうか。コロナ禍でも在宅生活を楽しもうという気持ちを後押しするかのように、「食」はポジティブへの変換スイッチの役割を担っていたように私は感じています。
例えば、料理写真のSNS「SnapDish」を運営するヴァズが発行するレポートを見ていると、親子での料理機会が増えていたり、ベランダなど普段食べない場所で食事をしたり、パンやお菓子を作るようになったり、またホットプレートの登場頻度が上がり家族でタコパ(たこ焼きパーティー)などを楽しんでいた様子がうかがえます。
インテージSRIデータによる(食品に限らず)消費財販売金額の3月末~4月前年比※5上位30品目リストには、6位小麦粉(4月第3週時点で前年度比210.8%)、7位ホイップクリーム(同205.6%)、20位バター(同158.9%)がランクイン。他、ホットケーキミックスが売り切れ続出といったニュースなどからも、あえて手間ひまや時間をかけるパンやお菓子づくり増加の傾向が裏付けられるでしょう。長年の調理ニーズである「時短料理」に対して、「時長料理」なんて言葉も生まれました。
コロナ禍では、シェフや食の専門家、企業によるお家ごはんを楽しんでもらおうという取り組みも多く生まれました。また、前述の「食生活ラボ」の調査でも、緊急事態宣言後2~3割の人が冷凍食品やレトルト食品、インスタント食品が増えたと回答していますが、冷凍食品においてはその8割が、それ以外も5割以上が終息後も継続したいとしており、この機会に出合った新たな食品がこれからの食卓にも登場することがありそうです。
コロナに負けない強い心身をつくるために、密をつくらないコミュニケーションのために、家での生活をより豊かなものにするために、「食」は私たちの要です。
新型コロナウイルスが、今もなお私たちにとって脅威であることは変わりません。そして今後しばらくは、ソーシャルディスタンスや衛生面に気を配りながらのwithコロナ生活が続くでしょう。
食ラボでは、リモート飲み会(や会議)を盛り上げるべく、メンバーのアートディレクター4人がオリジナルで作成した壁紙(背景画像)を食ラボのHPにアップしています。どなたでも無料でダウンロードできますので、ぜひお使いください。
また、前述の47CLUBとの連携企画の他、引き続き飲食店への支援、そして新たな家ごはんの楽しみや離れた人とのコミュニケーションをより豊かにするための新たな食スタイルを模索すべく、新たな企画を検討中です。
次回は、ぜひそれもご紹介できればと思います。