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コロナ時代のマーケティングソリューションNo.2

ニューノーマル時代に商機を逃さない打ち手とは?
~「コロナ時代のマーケティングソリューション」レポート(後編)~

2020/08/06

6月30日に開催した、「Dentsu Solution Webinar~第1弾~」レポートの後編。前編に続き、一歩先のニューノーマルスタイル実現のために、onコロナ・withコロナの巣ごもり消費をチャンスに変え、次なるマーケティング課題に対するソリューションを紹介したウェビナー内容をレポートします。

前編:ニューノーマルで日本はどう変わる?生活者調査から導く未来の姿

<目次>
「withコロナ時代に求められる新しいコマース戦略とは」(電通 根本淳氏)
「スタートアップ企業とつくるニューノーマル時代のソリューション」(電通 工藤拓真氏)

 

「withコロナ時代に求められる新しいコマース戦略とは」(電通 根本淳氏)

クライアントのコマース課題を解決すべく、電通グループ16社が集まり、120人体制で結成された電通コマースルームを最初に紹介。コロナ禍を受けて、サプライチェーンの出口であり消費者接点となる顧客体験も再構築が求められており、その解決において、「消費者のひと手間」を借りて、新しい価値をプラスするという発想が重要だとしています。電通コマースルームでは、このような発想の顧客体験づくりを「Additive Commerce」と命名。根本氏は、Additive Commerceがどのように生まれているか、リアル流通、飲食業界、EC領域を例に挙げて紹介しました。

Additive Commerce

ドラッグストアでは、マスクや消毒液が売れ、2月下旬には紙類の買いだめ消費が起きましたが、化粧品の需要減少などから、それ以外の期間において売り上げは大きく伸びなかったと言います。一方、スーパーマーケットでは2月下旬以降の週間売り上げは、冷凍食品やレトルト食品などの備蓄系食品の「買いだめ行動」が見られたこと、単純に家に居る時間が増えたことによる「家庭内食費の支出増加」などにより安定的に前年を上回ったと話しました。また、ドラッグストアと違い、1回の買い物当たりの購入点数やレシート単価が増加していると解説しました。

コロナ禍において、上記のように購入されるモノも変化しましたが、買い物行動も大きく変化したと話します。厚生労働省が公表した「新しい生活様式」を受け、引き続き、買い物行動は変化していくと指摘。続いて、おすすめ商品やクーポン情報を見ながら買い物リストを簡単につくれるアメリカの大手スーパーKroger(クロガー)のアプリを紹介しました。このようなアプリは「新しい生活様式」において加速し、それらは「買い物を計画する」という消費者のひと手間を借りることで、消費者に店内での滞在時間を短くするというプラスをつくり、店側にも個々人の嗜好やニーズに合わせた告知や、オンオフの買い物をシームレスにつなぐポイントプログラムを提供できるというプラスが見込まれると解説しました。

コロナ禍が直撃した飲食業界の変化では、4月から5月においてのテイクアウト・デリバリーの急増を挙げ、その中で、モバイルオーダーサービスを求める動きが増加していると指摘しました。お客さま自身にオーダーをしてもらうことで、非接触で注文と決済を可能にして店舗滞在時間を短くでき、かつ、現金の授受がないため衛生面でも消費者・店舗スタッフ双方にプラスに。また、モバイルオーダーを導入することで、顧客情報を取得することが可能になる上、第2波、第3波が来た時には告知のための連絡ツールになることから、今後飲食店での導入が進むと話しました。

また、消費者が日常の買い物をオンラインに頼り始め、顕著な動きを見せているEC領域で起こっていることを、電通グループのひとつであるアイプロスペクト・ジャパンが開発した、「コマースサクセスフレームワーク」という考え方に沿って解説しました。ECのオペレーションを「Availability」=商品をしっかり準備できているか、「Findability」=消費者の目に留まるようになっているか、「Buyability」=購入の意思決定がしやすくなっているか、「Repeatability」=再購入したくなるか、という4領域に分解して、コロナ禍の影響を整理。今後求められるAdditive Commerceについて説明しました。

Additive Commerce説明図

今回のような非常事態において、特に重要な視点であるAvailability。コロナ禍でECは多くのトラフィックを獲得した一方で、それを処理するだけの通信やサーバーの容量がなく、消費者の期待に応えられなかった、あるいは配送が間に合わず、受注をストップしたケースも多数あったと指摘。また、オフラインからのEC参入、拡大は顕著であり、企業においてオムニチャネル対応は喫緊の課題。しかし今は、ノウハウ、オペレーションの両方で人が不足し混乱している状況。この状況の打開策として、ECサイトで購入した商品を、リアル店舗で受け取る「BOPIS」導入など、消費者の自発的な行動を味方につけたAdditive Commerce発想にヒントがあると述べました。

WalmartのPickupステーション
モバイルで購入した商品を受け取る
WalmartのPickupステーション

消費者の目に留まるようになっているかを見るFindabilityでは、コロナの混乱の中で転売商品がネット上に溢れ、課題になったと指摘しました。この課題を解決する上で、口コミ監視ツールに加え、ECプラットフォームの監視ツールの必要性が増すと同時に、公式ショップの存在感も増したと話しました。また、コロナ禍で消費者のSNSの利用は増加し、企業が正しいブランドの情報を伝える手段としての役割も大きくなってきたとも指摘。Facebook shopsが日本でもスタートすることも踏まえ、今後のECにおいてSNSは外すことのできない消費者との接点であると述べました。

次に、購入の意思決定がしやすくなっているかというBuyability。店舗のように商品を手に取って見ることができないECにおいては、テキスト情報に加えて商品画像によって商品特徴を伝えることが重要となります。その際、商品の大きさや機能が理解できるように工夫するだけでなく、付属品や送付される際のパッケージを示すことも有効です。コロナ禍により、消費者のひと手間を借りて安全を確保する「置き配」が今後普及していくにつれ、どのような状態で荷物が届くかも消費者の気になるポイントになると指摘。また、インタラクティブなソリューションへの注目が加速的に増してと述べ、中国やアメリカで先行しているライブコマースは日本でも確実に広がると示唆し、リアル店舗の店員を出演させることで、店頭での接客ノウハウをECでも活用することが可能になると解説しました。

さらに、コロナ禍におけるRepeatabilityとは、顧客の今の状況を認識し、可能なサポート方法を模索することを意味すると述べ、2022年3月31日までポイントプログラムを延期したヒルトンの事例を紹介しました。また、コロナ禍でリアル店舗のEC参入が増えている中、ショッピング体験をオンオフで統合しシームレスにつなげリピート購入を促進していくことが重要で、その鍵を握るのがアプリであると強調。コロナの流行期はオンラインクーポンを、非流行期は店舗クーポンをといった形でオンとオフを使い分ける販促活動が可能になると指摘しました。

Dentsu Commerce Room6つのソリューション

最後に、Dentsu Commerce Roomとして、これらの変化に対応すべく以下の六つのソリューションを組み合わせて、Additive Commerceの発想で安心・安全・快適な顧客体験をつくり、消費者との接点を再構築し、クライアントのトップライン拡大に貢献したいと語りました。

①コマースサクセスフレームワークを活用したECコンサルティングおよびオペレーションサポート
②オンライン上からの送客を実現するマップ、ウォレット、SNSプラットフォームのビジネスアカウントソリューション
③店舗の非接触、非対面を実現するロボット接客、BOPISソリューション
④新しい飲食体験をつくるモバイルオーダー
⑤オンオフを統合したOMO体験をつくるキャッシュレス決済を活用したプロモーションCRM
⑥「モノ」から「コト」に買い物をシフトさせるソーシャルコマース

ホワイトペーパー「withコロナ時代に求められる新しいコマース戦略とは? 」ダウンロードURL:
https://www.d-sol.jp/dentsucommercereport/download/200630

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「スタートアップ企業とつくるニューノーマル時代のソリューション」(電通 工藤拓真氏)

大企業とスタートアップがタッグを組むことで、新しいマーケティングソリューションを生み出す方法を語った工藤氏。自身の仕事を事例に解説しました。

クリエイティブ・ストラテジストの肩書で、テレビCM制作含め、さまざまなコミュニケーションプランニングに携わってきた工藤氏ですが、ある仕事をきっかけに、大企業の新規事業開発やスタートアップの事業開発の中で、クリエイティブやブランディングの技術を活用する仕事に携わるようになりました。そんなクリエイティブ制作と新規事業開発を並走して行う仕事環境の中で気付いたこと。それは、大企業だろうが、スタートアップだろうが、自身のブランドを成長させるための手段は、(代理店がよく提案に持ち出す)マスメディアへの出稿やデジタルマーケティング、PRに限らず、多様に広がっているということ。そのうちのひとつが、今回取り上げている新規事業のマーケティング活用です。

4~6月、CMOやマーケティングディレクターの方々とのミーティングの内容が大きく変わったといいます。コロナ禍で生じた余白時間を活用して、「今動いているプロジェクトをどう進めるか」という議論に加えて、もう一つレイヤーを上げて、「そもそもどんな投資をしていこうか」という会話が多く交わされていました。

多くの環境の変化がある今、チームでミーティングの時間を確保できる時間が生まれた場合は、普段はじっくり議論しきれていないことに時間を費やしてはどうだろうかと、工藤氏は提案します。例えば、ブランドを既存事業で育てるのか、新規事業で育てるのか、あるいはどんな施策フォーメーションをつくるのかなど、上層レイヤーの課題に時間を投資する。そうすることで、今までやってきた施策以外にもブランド成長の可能性を広げる、絶好の機会になります。

マーケ計画図

また、禍中抜けきれぬ今、新しい取り組みを起こすリスクと意義について、東急グループとのユーザベースの協業事例を用い解説しました。

東急プラザ銀座では、ビジネスパーソンの学び方稼ぎ方を変えるリアルプレースをつくるプロジェクトを、2019年から進めていました。すでに工事計画が進む中、コロナの影響で大きく状況は変わります。しかし、事業、マーケティング、CR/PRまで一気通貫したメンバーで議論することで、絶体絶命のピンチも、ブランド成長の機会に変換できると考えました。

コロナ禍にあって、プロジェクトの組成方法も変化しています。担当者レベルでFacebookのメッセージなどで非公式につながり、オンラインブレストをやってみるという流れが増加しているそうです。
その中でも、PRリリースのアウトプットを意識して、関係会社や部署の役割分担を明確化し、広がる可能性を感じれば、協業の形を探る流れで取り組んでいると現状を伝えました。
経済メディアも、こんな時代だからこそ、ポジティブな経済ニュースを多く求めているといいます。そんな今だからこそ、自分たちの新プロジェクトを、日本経済に明るいニュースとして受け取ってもらえるチャンスである、と伝えました。

D2CやCXという流行り言葉は、しばしば思考停止を伴います。何となく今っぽい言葉をプロジェクトの真ん中に置いて、ブランドのお客さまを置き去りにしてしまうような状態に陥っては、本末転倒です。コロナだろうがそうでなかろうが、ブランディングにおいて大事なのは「買い手と売り手の関係性を問いただすこと」。さまざまな情報が飛び交い、混乱に陥りがちなコロナ禍だからこそ、基本に立ち返って、ブランドの顧客課題解決に尽くしたい。
そして、そんな中で、マス広告投資やPRではなく、新規事業の開発というアイデアに至るのであれば、今ほどチャレンジしやすい環境はないのではないかと話しました。