セカイメガネNo.8
ビーチから雪山が見えるかい?
2013/07/10
地理の時間といえば、授業中にいつも居眠りするか、先生の目を盗んで仲間たちと延々じゃれ合うか、どちらかだった。だから僕らは脳みそに何の知識も詰め込まず、スカスカのまま卒業してしまったのだ。けれど、たった一つだけ、レバノンの学校に通った人間なら決して忘れられないことがある。その知識はやがて「知見」となり、生涯にわたってどんなことがあろうと残り続ける。
レバノンの地理について僕たちが学校で最初に教わったこと。そして、一生忘れられないこと。それは雄大な山々と金色に輝く浜辺の、距離の近さである。
「滑りたいって? 雪の上を? それとも水の上? もう少し正確に言ってもらわないと分からないよ」「雪山に行くか海に行くか言い争っているの?どっちもやれるよ。ゲレンデからビーチまで30分ドライブすれば行けちゃうんだから。それとも、パラグライダーがやりたいのかい?」
ほんのちょっとドライブするだけで、全く違う気候で全く違う遊びが楽しめるのは、つくづく素晴らしい。雪山とビーチの絶妙な距離の近さが、レバノン文化に独特の雰囲気を与えていることは間違いない。それは何世代にもわたって受け継がれている特別な感覚だ。
同じ日にスキーと水泳ができることを自然が完璧に保証してくれる。それがどれほど魅力的なことか、僕には言い尽くせない。しゃれっ気のある都会の若者ならば、雪の照り返しで肌を焼こうか、それとも砂浜で焼こうか、迷うに違いない。
とても短くて、とても重要な地理のレッスン。レバノンで暮らす僕たちのライフスタイルに影響を与えている。観光キャンペーンを展開するわが国のどの省庁にも、決して欠かせない事実だ。世界中からレバノンを訪れる観光客の行動予定表には、この事実がきっと書き込まれているだろう。
母なる大自然は時に奇跡を演じる。雪山とビーチのこの距離の近さは、そびえ立つレバノン杉の大地に贈られた偉大な奇跡なのだ。レバノン人はみんな誇りに思っている。
さあ、奇跡は目の前にある。天然の自動日焼け装置にスイッチを入れるタイミングだ。君は浜辺に行く? それとも雪山にするかい?
(監修:電通イージス・ネットワーク事業局)