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【グローバル】世界の潮流はニュー・ノーマルへNo.6

2020/09/30

中国の若者にアプローチするためのヒント。ポストコロナで変化した中国人の生活行動

新型コロナウイルスによって中国でも多くの変化が起きました。デジタル先進国の中国において、コロナ禍は生活者の意識やデジタルコンテンツにどのような影響を与えたのか。特に今後の消費を担う若者を焦点に、電通東派の王欣がお伝えします。

コロナをきっかけに起こった生活変化

先日、WeChatでこんな話題が流行っていました。「企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を起こしているのはCEOでもCTOでもなく、コロナだった」。笑い話ですが、実際にコロナの影響でこれまで持続してきたことは中断され、今までとは違う新たな行動を起こすようになりました。DXを例にすると、コロナ前は企業の選択肢のひとつにすぎませんでしたが、コロナ後は必須となりました。

コロナに対し、中国政府は迅速に政策を打ち出し、企業は生き残りの道を模索し、国民は前向きで楽観的な態度でコロナに立ち向かいました。

留学生が世界中から支援物資を集め、中国に届けてくれました。また3月には、市民が自発的に、上海の街頭に配達員のための無料物資ステーションを設置。他人や社会を気にかけるようになり、人間の根本にある“善”が拡大され、自分の行動が社会にどう貢献できるのかを考えるようになりました。

また、社会科学院の「鍾南山(Zhong Nanshan)教授」、上海流のズバっと辛口なコメントで一般生活者のコロナ対策ポイントを指摘してくれた「張文宏(Zhang Wenhong)医生」、中国のインフルエンサー「ペーパークリップ」ら、“理科系男子”がアイドルになりました。

感染の不安、死者への悲しみ、武漢支援の感動…。感情をあおるような報道が集中した時期に、心を静めてくれたのは知識・サイエンスのコンテンツです。客観的な科学解説は、人々の不安を取り除いてくれました。

コロナにより人々はデータに裏付けられた科学を信じるようになりました。科学は実験室だけのものではなく、生活に役に立つものに。知識は冷たい教科書的な存在ではなく、「BiliBili」「WeChat」「TikTok」の人気コンテンツになりました。

2020年をきっかけに科学知識、データ分析、役に立つ情報の注目度はますます高まっていくと考えられます。消費者のブランドに対する期待も“娯楽価値”の提供から“役に立つ価値”の提供にスイッチ。特に日系ブランドの強みである高い研究開発能力、自社ラボ、自社研究員などは良いコンテンツになると思います。

理系コンテンツイメージ

また、外出禁止、自宅待機の中でも、娯楽のニーズは依然として高い傾向がありました。消費者の目線が“内向き”にスイッチし、これまで気付かなかった日常の楽しみに注目する人が多くなったのです。料理、化粧、写経、エクササイズなど、さまざまな「革新的な娯楽」が自発的に創造されました。

日常生活に多くの時間を使い、日常にこだわることこそ達成感が高い!

日常における創造こそが、個人の価値を最大化する!

日常をクリエイティブにするアイデアは社交性が高く、周りに波及しやすい!
という価値観が定着。ブランドは生活者の「日常」を豊かにするために、何ができるかを再定義する時期になっています。

「Live+」時代到来!ライブコマースが大躍進

このような生活者の変化に伴い、Liveは大きく開花しました。Liveといえば、音楽バンドがオフラインで行うものを想像する方もいると思いますが、中国ではオンライン上で、リアルタイムにコンテンツを流すことを指します。内容の幅が非常に広く、質もバラバラです。商品販売につなぐLiveコマースもあれば、オーディエンスからの賞金が目的のタイプもあります。そのため、Liveは雑多でそれほど価値のないものと認識されてきました。

しかしコロナ発生後は、中国の国営テレビ・中国中央電視台(CCTV)のトップアナウンサーがグループを結成。央視新聞(CCTVのニュースアプリ)、TikTok、ECサイト国美微店(国美のWeChatにおける自社コマース店舗)、Pinduoduo(ソーシャルコマースアプリ)、JDなどのプラットフォームで同時Liveを行い、商品を販売しました。3時間で閲覧数は1000万人を超え、5億元(約77億円)超の売り上げを叩き出しました。

主流メディアのアナウンサーが商業Liveに出演するということは、国としてLiveでの販売活動を推進する態度を示したと考えられます。タレントはLiveの常連になり、レギュラー番組を持つようになりました。企業トップも販売員に変身して出演しています。

コロナで今までのコミュニケーション活動、販売活動が中断され、企業も消費者も新たな道を求めていました。そこで“その場で見える・その場で聞ける・その場で買える” Liveが、代替案として受け入れられたのです。

従来は販売中心だったLiveの目的と形式も多様化しています。例えばLive+エクササイズはオンラインでコーチとインタラクティブに交流し、その場で指導してくれるサービスです。また、Live+コンサート、+オークション現場、+工場見学などシチュエーションも増えてきました。

Liveエクササイズイメージ

さらにLiveで農園試食、猫カフェ体験、ヘリコプター体験など、従来オフラインでしかできなかったこともオンラインで体験できるようになりました。

ブランドにとって、Liveはマイナーな販売チャネルから重要なコミュニケーション手段となり、認知、興味喚起、体験、ファン化など、ブランドの課題に応じて使い分けられるようになっています。

LiveのプラットフォームはTaobao、TmallのようなECプラットフォームからTikTok、Redbook(口コミレビューアプリ)まで広がりました。コロナ中、有名な文化人「羅永浩(Luo Yonghao)」がTikTokでLiveデビューしたことが、ソーシャルプラットフォームLiveの認知度とユーザーを一気に広めました。

また、アパレルブランド「衣恋Eland」はWeChatミニプログラムで自社ECを立ち上げ、Live+D2C(ソーシャルEC)の新しいビジネスモデルを構築しました。自社ECでLiveを行い、オフラインの優秀な販売員がオンラインで商品を紹介するのです。1万人以上の社員がブランドのアンバサダーになり、ローンチ期において、3日間で10回のLiveを実施。売り上げは2000万元(約3.1億円)に達しました。

「Live+」時代の若者はどう変わった?

Live+時代の下、若者も変化しています。最近の映画やドラマでも、多様な生き方・価値観を提示したものが話題作となっています。“こうであるはず”といった予定調和は崩れ、多様な価値観を許容し、リスベクトするようになりました。

そんな若者にとって“私”は最も重要なキーワードです。「私が好きだから、私がやりたいから、私が欲しいから、私が嫌いだから」、全て自分の気持ちで判断します。
若者たちはさまざまな文化に接し、自分自身で消化し、融合させています。例えば、今日は漢服で外出し、次の日はTシャツでクラブDJをする。中国古風の色彩を取り入れている化粧品も購入すれば、日本アニメのプラモデルもコレクションする若者もいます。多様な要素を融合する基準は“私”なのです。

“私”に選ばれるために、ブランドは若者と対等な状態でなければなりません。

“私”の言葉で話す(若者言語)

“私”のレベルに達している(商品の品質)

“私”と見合った中身を持っている(ブランドの提供価値・世界観)
この三つは、若者を対象とした作業で私が心掛けていることです。

若者とのコミュニケーションでは、押し付けも説教も迎合も受け入れられません。若者に議論や発信の余地を与え、対等な立場で寄り添う姿勢が大事だと感じています。

Live+時代に入り、マーケティングはますます複雑になってきました。しかし、マーケティングの本質は変わっていません。Liveはあくまでも手段であり、目的ではないのです。

Liveをどの目的で使いたいのか。
短期間の売り上げ?EC旗艦店のファンの増加?大手ECサイトに依存しないための自社コマースサイトの盛り上げ策として?

ビジネス課題を解決するために、施策の目標を明確に定めKPIを設定し、最新のトレンドに合わせて最適な手段を取り入れる必要があります。Live+時代はブランドの価値定義と若者の意見を引き出す工夫の両輪が重要です。中国の若者へのアプローチを考えている方は、変化した今の時代の若者に合っているのか、ブランドの提供価値、ブランドの世界観を今一度見直してみてはいかがでしょうか。

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