上京ガールに聞く!都会での身近な医療の不安
2020/11/04
体調が優れないとき、病気やけがをしたとき、あなたの住む街に頼れるお医者さんはいますか?
都会では、気軽に相談できる「かかりつけ医」を持たない人がたくさんいます。特に、親元から離れて都会で暮らす若い人たちの中で、「かかりつけ医」を持っている人はどのくらいいるでしょうか?新型コロナウイルスの流行をきっかけに、都会の地域医療に不安を抱える人は確実に増えています。
電通が新たに開発した医療機関予約/デジタル問診システム「CLIEN(クリエン)」は、そんな皆さんの不安を取り除き、患者さんとお医者さんをつなげるために生まれたスマホ対応サービスです。CLIENとは一体なんなのか、プロジェクト責任者のアーロン・ズー氏が開発の背景も含めてご紹介します。
記事の後半には、CLIENのCMに出演した、「幸せ!ボンビーガール」で話題の川口葵さんが登場。 川口さんの初演技を熱血(?)指導した、“電通クリエイター”のアーロン氏が、上京して都会で感じる医療に対する不安について聞いてみました。
医療崩壊につながりかねない、「かかりつけ医」の少なさ
日本の医療水準は世界的に見てもトップクラスにもかかわらず、日本人の医療に対する満足度は先進国の中でもワーストレベルにあるのは、実にもったいないことです。
今回のコロナショックによって、「医療崩壊」という社会問題が浮き彫りになりました。危機を引き起こした原因のひとつが、「かかりつけ医」に対する認知不足から発生した、保健所への過度な問い合わせです。
実際にコロナウイルスが流行し始めたとき、相談できるお医者さんが身近にいないことを不安に思った人も多いのではないでしょうか。
この問題は、コロナが収束すれば解決する話ではありません。一人でも多くの人に、いつでも頼れるクリニックや病院を見つけてもらう。そのためには、いかに使いやすく連携しやすいサービスを提供できるかが重要です。
申し遅れました。私はCLIENのプロジェクト責任者であり、クリエーティブ・プランナーを務めるアーロン・ズーです。今回は、なぜ私たちがCLIENを開発したのか、サービスの特長と一緒に説明したいと思います。
なんとなく感じていたモヤモヤがアイデアの原石
CLIENは、近くのクリニックや病院を検索・予約でき、さらに事前に問診票を入力して予約したクリニックや病院に送ることができるサービスです。パソコンはもちろん、スマホひとつで検索・予約・問診票入力などができる点が特長で、幅広い世代が直感的に操作できるようシンプルな設計にもこだわっています。
また、データ連携によって患者さんがどんな心身のお悩みを抱えているのか、この地域ではどんな病気が流行っているかといった情報が蓄積できるため、患者さん一人一人に最適な医療サービスを迅速に提供できるようになります。
私は複数の国のアイデンティティーを持つ人間として、日本で日常生活を送っているときに感じるちょっとしたモヤモヤがアイデアの原石になることがよくあります。CLIENもまさに、そのモヤモヤから生まれたサービスでした。
日本の医療体制や医療サービスは本当に世界でもトップクラスだと実感しています。しかし一方で、「なんでクリニックに行くと、紙とボールペンを渡されて問診票を書くんだろう?」って、いつもモヤモヤしていました。
高度な医療技術が発達しているからこそ、そこだけアナログなのがすごく気になるんですよね(笑)。しかも、最終的には電子カルテに問診票を打ち込むケースも少なくありません。「最初からスマホなどで入力すればいいのでは?」とずっと思っていたのです。
そのモヤモヤが危機感に変わったのは、コロナ禍でのこと。患者さんが問診票の記入に使ったボールペンを1本ずつ時間をかけて消毒しているクリニックを見たとき、「これは変えないとマズイ」と本気で思いました。
こうしてデジタル問診システムをつくるべく、知り合いのパートナー企業に声をかけたことが、CLIEN誕生の第一歩です。「使いにくいサービスは浸透しない」という思いから、まずはユーザービリティーを重視し、医療機関検索システムと連携した、シンプルで使いやすいインターフェースを作成しました。
医療崩壊を防ぐために、地域一丸となって「かかりつけ医の大切さ」を訴える
実はCLIENの開発に着手したのと同じタイミングで、渋谷区医師会からウェブサイトのリニューアルを相談いただきました。
詳しく話を伺ってみると、医療機関検索を取り入れたいという要望があり、コロナ禍で区民の「かかりつけ医」への認知が課題だったこと、さらにITの中心地でもある渋谷の医師会だったことから、早速CLIENをご提案し、導入を快諾していただきました。まだ開発段階の事業を一緒に伴走してくれるパートナーが現れたことはとても心強く、本当にありがたいことでした。
さまざまなハードルを乗り越えながら急ピッチで開発を進めていたとき、世の中ではコロナ感染者が一気に増加。連日メディアでは医療崩壊の危機が報道されていました。私たちは、どうしても「かかりつけ医」の認知拡大を地域に呼びかけたいと思い、スクランブル交差点のど真ん中でCLIENのCMを流しました。
タレントさんの起用に協力いただいた株式会社フレイヴエンターテインメントや、楽曲提供のためにシンガー・ソングライターのLOVEさんをつなげてくださったエフエム東京(渋谷区)には、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
さらに、渋谷区医師会からのメッセージを地域に届けるために、チラシの配布に協力してくれたのは、渋谷区商店会連合会などの地域団体の皆さま。まさに地域のチカラが合わさったことによって「かかりつけ医」の周知活動はどんどん拡大していきました。
インターネット上のデータだけを見ても情報解禁後3週間で、渋谷区医師会のウェブサイトへの新規アクセス数が従来の1.39倍、閲覧数が1.68倍、スクランブル交差点のビッグビジョンでのCM認知(2日間)も2万2000人を超え、予想以上の反響を頂くことができました。
お気に入りのレストランみたいに、頼れるお医者さんはいますか。
CLIENの可能性は、これからもっと大きく広がっていくと思います。今回のコロナ禍で浮き彫りになりましたが、日本はIT後進国といっても過言ではありません。特に医療においては、世界トップクラスの医療水準とサポート体制があるにもかかわらず、患者のインサイトに応えられている医療機関はまだまだ少ないのが実情です。
地域医療のハブである医師会がどんなことをやっているのか、または地域に住んでいる人たちがどんな医療課題を抱えているか、常にリアルタイムで分析できる体制は、今後さらに求められるようになるでしょう。この部分に関しては、首都圏よりも地方の医療現場がさらに深刻だと認識しています。患者さんとお医者さんをつなぐサービスとして、世代や地域を超えてCLIENを根付かせていく必要があると思っています。
「お気に入りのレストランみたいに、頼れるお医者さんはいますか。」という問いにYESと答えられる人を、これからもっともっと増やしていきます。
川口葵×アーロン・ズー 対談「上京ガールが感じる医療の不安」
今回、CLIENのCMを制作するに当たり、バラエティー番組「幸せ!ボンビーガール」(日本テレビ)で“番組史上最大級の美女”として人気沸騰中のモデル・川口葵さんに出演オファーをしました。
なぜ、川口さんを起用したのかというと、CLIENのコンセプトである「お気に入りのレストランみたいに、頼れるお医者さんはいますか。」に合っていると思ったからです。人口の多い都会で「かかりつけ医」に対する認知はまだ低いため、川口さんのような上京ガールは、まさに地域住民の立場でその気持ちを代弁できると思いました。
今回のCM出演は、川口さんにとっては演技デビューとなるお仕事。正直、最初は目も当てられないような演技でしたが(笑)、練習の成果あって少しずつですが、自分の感情を再現できるようになってきて、演技力が向上したと思います。最終的には本当に素晴らしい表情を撮ることができました。
ところで、川口さんは兵庫県明石市の出身で、最近親元を離れて東京に引っ越してきた「上京ガール」。まさしく、都会の身近な医療に対していろいろと感じることがあるのではないかと思いました。そこで、川口さんに等身大の悩みを聞いてみました。
小さい頃から憧れていた芸能界。意を決して応募した「ボンビーガール」で念願の上京
アーロン:CM出演、ありがとうございました。葵さんのおかげで素晴らしい作品が作れたと思います。ダメ出しばかりしてすみませんでした(汗)。
川口:リハーサルの時から大変ご迷惑をおかけしました。悲しい表情を演じることが難しかったですが、皆さんからアドバイスを頂きながら、本番では自然な表情に少しでも近づくことができたかなと思います。アーロンさんのダメ出しがあったからこそできたのだと思います!(笑)ありがとうございました!
アーロン:上京して半年、東京はどうですか?
川口:「東京=密着される場所」みたいなイメージです。上京するときから番組にずっと密着していただいて、逆に密着されていないときの方が違和感を感じるようになりました(笑)。
アーロン:「ボンビーガール」が上京のきっかけですもんね。小さい頃から芸能界に憧れていたとお聞きしましたが、諦めたことはなかったんですか?
川口:何度もありましたよ。バイトをしながらいろいろなオーディションに応募して、でもなかなか受からなくて……。諦めかけたこともありましたが、20歳になったときに、やっぱり上京して女優になりたいと思ったんです。人生一回きりだから後悔したくないと、覚悟を決めて応募したのが「ボンビーガール」でした。
アーロン:僕は「ボンビーガール」を見てキャスティングしたんですよ。でも正直、芸能界に入ったばかりで演技の経験もほぼゼロの葵さんに今回の仕事を頼むべきか、すごく迷っていました。
川口:あはは、そうですよね……(笑)。
アーロン:ですが、何度か話をしているうちに、「意志の強さ」があるところに可能性を感じたんです。
川口:意思の強さ、ありますかね……。
アーロン:今回のCM制作を通して、川口さんが持っているナチュラルさの中にある「意志の強さ」がとてもすてきだと感じました。葵さんはまだ「演じる」ということに慣れていないだけ。経験値を上げていけば、そのうち素晴らしい演技ができるようになると思います。
川口:ありがとうございます。なんか、人生相談になってますね(笑)。
アーロン:演技に入り込むと、すごく良いですよね。入り込んでいないと、目が泳ぎだして、「あ、現実世界に戻ったな」って表情になるんですよ(笑)。
川口:あぁ、なるほど。今回のCM撮影は難しかったです。
アーロン:でも、今回は比較的カットがパパッと早く切り替わる映像でしたよね。もっとじっくりと表情を出す演技の場合は……今はまだ実力不足かもしれないですね。
川口:……(苦笑い)
アーロン:そろそろ本題にいきましょうか(笑)。
川口:はい(笑)。
上京してすぐに「かかりつけ医」を見つけることの難しさ
アーロン:今回、上京するに当たってクリニックとかに困りませんでした?
川口:はい、めっちゃ困りました。上京してすぐ、体調が悪くなってしまって。インターネットで必死に近くのクリニックを検索して行ってきました。
アーロン:大変でしたね。クリニックって問診票を手書きで書かせるじゃないですか。あれ、すごく違和感があったんです。ここまで医療が発展している日本でなぜ?って。
川口:そうですよね。問診票で漢字をどう書くのか忘れたとき、結局スマホを使って検索しますもんね。
アーロン:あーなるほど。それならスマホで良いじゃんってなりますよね。そういえば、上京の時期とコロナの時期がモロかぶりだったじゃないですか。大丈夫でした?
川口:上京する直前、お母さんから近くに何科があるかぐらいは検索しておくように言われました。
アーロン:お母さんも心配ですよね。
川口:それで最寄駅の近くにクリニックを見つけたのですが、結局行ったことがないからどんな感じなのか全く分からないんですよね。そういう意味では、上京したばかりで「かかりつけ医」を見つけるのは難しいです。
アーロン:葵さんが考える、安心できるクリニックってどんなものですか?
川口:先生が優しい。診療の受付時間が長い。内装がきれいかどうか。ですかねー。
アーロン:優しい先生の定義って何だと思いますか?
川口:質問に寄り添ってくれる先生かなぁ。質問しても「こういうものだ!」と決めつけられてしまうと、何も言えなくなりますよね。
アーロン:なるほど。でもクリニックって、事前に自分に合うところを目星つけておくのは難しいですよね。具合が悪くなって、やっと探し出す感じですもんね。
川口:まさに、この前の私がそうでした(笑)。
アーロン:ですよね。今回のPV撮影でも触ってもらったCLIENは、自分が住んでいる街の頼れるお医者さんをすぐに探して、スマホで問診票を記入できるサービスです。上京ガール的にはどうですか?
川口:住み慣れていない街で体調が悪くなったり、不安になったときに頼れるお医者さんをすぐに探せて、病院へ行けるのはすごく心強いと思います。事前にクリニックや病院の情報が把握できて、予約までできるのも便利ですよね。
アーロン:地域の医療サービスで「こんなことができたら安心だな」「もっとこうしてほしいな」と思うことはありますか?
川口:女性の先生やスタッフの方が多い病院などがアプリで知ることができると安心かなって思いますね。
アーロン:なるほど、それはありますよね。上京ガールのリアルな声が聞けて、とても参考になりました!ありがとうございました。
今回、CLIENの開発を通して思ったのは、新型コロナウイルスの影響によって「かかりつけ医」の認知拡大が、今まで以上に地域医療での患者満足度につながっていくということ。
川口さんが言うように、近くにあるクリニックの存在は知っていても、どんな感じなのかが分からなかったり、いざという時にクリニックを探すのが大変だったり、個々によって安心できるクリニックの条件が違いますよね。診療時間、清潔さ、お医者さんとのコミュニケーションなど、いろいろあります。
まだまだ道のりは長いですが、この国の地域医療がテクノロジーとアイデアでもっと進化できるように、これからもCLIENをバージョンアップしていきたいと思います。