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「People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020」レポートNo.3

ブランディングの未来はどうあるべきか。DX推進に必要な四つの視点

2020/12/01

電通による“人”基点のマーケティング「People Driven Marketing(※)」(ピープル・ドリブン・マーケティング)も、4年目を迎え、「PDM4.0」として大きく進化しました。 

本連載では、電通人と企業のゲストたちが、マーケティングとデータの未来を語った「People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020」3日間の模様を、ダイジェストでレポートします。

今回は、数々の「ブランド体験」を創造してきた、電通デジタルのエグゼクティブクリエーティブディレクター・佐久間崇氏が、「クリエイティビティーが拓くブランドの未来」について語ったセッションを紹介。

デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で、ブランドの未来はどうあるべきか。社会の変化に伴うブランドの在り方を示し、ブランド変革に必要な視点を提示します。

※People Driven Marketing
https://www.dentsu.co.jp/business/pdm/
電通が提唱する、データ&デジタル時代に対応した“人”基点の統合マーケティング・フレームワーク。課題を人(People)基点で捉え直し、電通グループが持つ最先端のマーケティング手法を統合して、顧客の持続的な成長を支援していく。
 
PDM実践ウェビナー2020
※課題解決マーケティング情報サイト「Do!Solutions」でも、本ウェビナーの特集ページを開設しています。より詳細なレポートはこちらへ

 


DXを推進する前に、ブランドの本質に立ち戻る

佐久間崇

デジタル化が加速する昨今、人々の価値観は大きく変容しています。消費動向は「所有価値から使用価値へ」「モノからコトへ」「製品からサービスへ」とシフトし、企業のDXもさらに重視されるようになりました。

こうした変革期において、重要なのがクリエイティビティーです。クリエイティブディレクターとして、企業のブランディング立案・実施に取り組んできた佐久間氏は、企業がDXを推進する前に、まずは本質に立ち返る必要があると指摘します。

「DXの目的は、デジタルツールの導入ではありません。それでは手段の目的化になってしまいます。改めて自社の製品、ビジネス、ブランドを未来に向けてトランスフォームしていく意味を見つめ直し、その本質を理解した上でDXを考えていくことが必要です」

「People」「Purpose」「Creativity」「Data/Tech」の4視点で、ブランドのDXを促進

その上で、ブランドをトランスフォームするために、以下の「四つの視点」を挙げました。

PDM実践ウェビナー2020


1. People ターゲットや顧客の視点

デジタルシフトやグローバリゼーション、新型コロナウイルスの拡大に伴い、働き方やライフスタイルが多様化し、生き方の選択肢も増えています。佐久間氏は、「これからは、人々が自分ならではの物語、自分らしい生き方を模索しながら生きていく時代」だと分析します。つまり、ますます“人”が主役になっていく時代です。

その時、ブランドの役割はどうあるべきでしょうか。佐久間氏は、発想を転換し、「個人の人生を輝かせること」を考えるべきだと述べます。

「ブランドには、“高級”“憧れ”などのイメージがあります。そのため、これまでブランドと個人の関係性は、“ブランドが描く世界観を個人が享受する。その世界観に参加させてもらう”というものでした。しかし、これからは一人一人が主役になる時代。ブランドの役割は、“人=LIFEを輝かせること”になっていきます。大切なのは、人が輝く舞台を整えること。その意識を持つことが、DXを進める上で大前提になるでしょう」

2.Purpose 目的を明確にする視点

ブランドをトランスフォームするには、事業の目的を再定義すること、つまり「何を、何のためにするのか」を突き詰めることも重要です。

これまでは、商品の存在を知ってもらうための手段として広告がありました。そして、販促や商品をプロモートするためにPRがあり、商品を届ける手段として販売がありました。つまり、企業活動のすべてが“商品を売ること”が中心になっており、その他は手段だったのです。

しかし、目的を中心に置くと、企業活動はすべて目的のための手段だと気づきます。すると、企業活動も製品からサービスへと必然的にシフトしていきます。佐久間氏は、「商品ではなく目的の実現を中心に据え、そのための手段を再発明・再解釈することがDXの本質」だと述べ、事業の目的や商品が生まれた経緯、そこにある意思をもう一度探るよう促しました。

3. Creativity サービスやプロダクトの視点

では、目的を規定した上で、どのようにサービスやプロダクトを生み出していくべきでしょうか。佐久間氏は、「クリエイティビティーの解放」が重要だと指摘します。

「クリエイティビティーというと、難解なイメージを持たれるかもしれません。しかし、大事なのは子どものような発想。『これ、よくない?』『これ面白くない?』という無邪気な感覚こそ、クリエイティビティーです」

ビジネスにおいては、直感やひらめき、「なんとなくいい」という感覚は、表に出さない傾向がありますが、佐久間氏は「一人一人のセンスを信じることがクリエイティブ思想」だと言います。

「自分の直感、ひらめき、イメージを解放し、常識を疑って言語化していくこと。あるいは『何か変だ』という感覚や違和感を掘り下げること。それが、多様化が進む社会にマッチする新たなクリエイティブにつながるのではないでしょうか」と佐久間氏。

こうして生まれたクリエイティブアイデアを評価する軸として、佐久間氏が大事にしているのは「ハッとして、グッとくる」かどうかです。

PDM実践ウェビナー2020

「ハッとする」は驚きや新しさ、ビックリマークがつく状態を指します。さらに、共感や好感を抱かせる「グッとくる」要素も必要です。こちらはハートマークがつくような状態を指します。つまり、「ビックリマークとハートマークをつけたくなるクリエイティブアイデアこそが、新しさと普遍性を兼ね備えている」と、佐久間氏は述べました。

4. Data/Tech 実現方法の視点

こうして生まれたクリエイティブアイデアを実現するために、活用するのがデータやテクノロジーです。その好例が、シリコンバレー発のD2C(Direct to Consumer)シューズブランド「allbirds」だと佐久間氏は言います。

allbirds

このブランドのコンセプトは、「世界で最も快適なシューズ」。機能性が優れているだけでなく、羊毛やサトウキビなど肌にも地球にも優しいサステナブルな素材を用いているのが特徴です。「“サステナブルな靴を選んで履くことはかっこいい”という価値を提供している点が新しい」と、佐久間氏は同ブランドの方向性に賛意を寄せます。

また、公式サイトでは、素材調達から商品廃棄までのプロセスにおけるCO2排出量を“見える化”した動画も公開。さらに、グローバルな顧客データ管理や在庫調整を瞬時に行ったり、ユーザーからのフィードバックを取り入れ、細やかにプロダクトリニューアルを行ったりする点でも快適性を追求しています。

「ユーザーの快適性向上やサステナビリティーのためにデータを活用する。この点に新しさを感じます。データドリブンを否定するつもりはありませんが、やりたいことを実現するためにどんな手段があるのか考え、その上でデータを活用するという順番の方がスムーズではないでしょうか」

個人のライフを輝かせるために、ブランドにできること

視点1で述べたように、これからは人が主役です。個人のライフを輝かせるために、ブランドに何ができるか。ブランドの未来を切り開くには、その役割を追求する必要があります。

ブランドのDXに必要な「四つの視点」を紹介しましたが、必ずしも順番通りに行う必要はありません。2番目の「目的を明確にする視点」から始めるとスムーズですが、どれを起点にしてもすべての視点で考えることが大事だと佐久間氏は指摘します。

その上で「優れたクリエイティブアイデアは、どの視点からも説明でき、さらにアイデアを上乗せできます。その繰り返しにより、ブランドが輝き、人に親しまれ、必要とされるのだと思います」と締めくくりました。

※本ウェビナーのより詳細なレポートは、「Do!Solutions」の特集ページをご覧ください!