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中小企業は、心を動かすコンテンツメーカーNo.4

2020/12/09

元バンカー、銀行辞めてまで懸けた中小企業支援の“場”

中小企業のコンテンツメーカーとしての魅力や可能性を探る本連載。

今回は、横浜信用金庫で中小企業向け経営支援プラットフォーム「Big Advance」を企画・開発し、その後ベンチャー企業のココペリに転職して、プラットフォームのさらなる拡大にチャレンジしている田島達也氏にインタビューを行いました。

これまで数千社の中小企業と関わってきた田島氏が感じる、コンテンツメーカーとしての中小企業のポテンシャルや課題とは?そして、銀行員を辞めてまで、その支援に懸けた思いとは?

中小企業にフォーカスした企画・コンテンツ開発を手がける、電通の森本紘平が話を聞きました。

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中小企業には、経営者の人生が詰まっている

森本:田島さんとは横浜信用金庫(以下:横信)で、Big Advanceの源流となる「Yokohama Big Advance」のPR戦略や発表会のお手伝いをしてからのお付き合いです。

田島:その節は本当にありがとうございました。とっても助かりました。

森本:こちらこそありがとうございました。その後、田島さんはバンカーを辞めてフィンテック企業のココペリに転職し、ご自身が生み出したBig Advanceを全国各地の金融機関に拡大。今や51行が導入し、3万1000社以上の中小企業が活用するプラットフォームに成長しています。

まさしく中小企業の活性化に大きな貢献をしている田島さんですが、そもそもなぜ金融機関で働き始めて、そして中小企業の支援を始めたのでしょうか?

Big Advance
Big Advance:日本初となる、全国の金融機関が連携して取引先企業の経営支援を行うプラットフォーム。取引先企業にはITを活用した業務効率化、販路拡大、人材確保、情報提供といった各種サービスを月額3300円で提供し、金融機関は取引先企業の利用状況を基にした経営支援や融資活動が行える。

田島:原体験は学生時代まで遡ります。当時、私は刺身などに使われる細切りの大根、いわゆる“ツマ”を作る企業でアルバイトをしていました。従業員数人の小さな会社だったのですが、ある時、全国チェーンの大手スーパーからカット野菜の仕事を受注し、これはチャンスだと大きな工場をつくり、従業員も50人ほど増やして大成功したんです。

その急成長を支援していたのが地元の銀行でした。このように、中小企業のサクセスストーリーを支える仕事に大きな魅力を感じて、横信に就職したんです。

森本:そうだったんですね。実際に就職してみて、どうでした?

田島:とても楽しかったです。中小企業といっても規模はさまざまで一概にはいえませんが、経営者の人生や人となりが色濃く反映されているのが魅力だと思うんです。ストーリーや個人の人生が詰まった企業が単純に好きでしたし、一人の人間として学ばせていただくことも、たくさんありました。

森本:すごくいい話ですね。組織なのに、どこか人情味や親しみやすさがあるところは、間違いなく中小企業の魅力のひとつだと思います。

田島:横信でBtoB向けの営業に携われたことで、ありがたいことに3000社ぐらいの中小企業と出合うことができました。本当に一社一社が個性的で、経営者の思いが詰まっていて、誰かに語りたくなるようなストーリーがあるんですよね。ただ一方で、その魅力が世の中に伝わっていない、中小企業が持っているポテンシャルが発揮しきれていないとも感じていました。

森本:どんなところに課題があると思いましたか?

田島:一つには絞れませんが、例えば日本の中小企業は海外に比べて生産性が低いといわれています。私はその原因のひとつとして、支援体制の問題があると思っています。中小企業の経営者は孤独で、なかなか従業員からアドバイスをもらえる機会もありません。一人のアイデアでは成長に限界がありますよね。それを支援する場づくりができていないことが課題でした。

森本:地域活性化を担う金融機関の元バンカーならではの視点ですね。

田島:まさしく、本来は地域の金融機関がその地域の経営者を支えるべきです。しかし、金融機関が経営者に本気で寄り添い、成功させようとしているかというと、必ずしもそうではありません。旧態依然とした“お願いセールス”や、自分たちの都合を最優先したプロダクトアウトの発想が根強く、このままでは地域の金融機関も中小企業も成長できないと思いました。

孤立無援の状態から700社に営業。地道な活動で仲間を増やす

森本:そのような経験から生まれたのがBig Advanceですね。

田島:はい。生産性向上を中心とした中小企業の経営支援 をITの力で実現し、同時に、金融機関の営業スタイルをお願いセールスからお客さまファーストに変えるためのプラットフォームとして企画しました。

森本:正直、最初の周囲の反応はどうでした?

田島:鼻で笑われました(笑)。実績がないですし、費用対効果の確証もなく、なにより他の金融機関がどこもやっていないビジネスだったので、当然ながら反応は渋かったですね。

森本:その状態からローンチまでどのように持っていったのでしょうか?

田島:取引先企業のビジネスマッチングが、バンカーにとっても分かりやすいメリットだと思ったので、東京の企業を700社ほど回ってネットワーク形成に奔走しました。毎朝始発で出社して通常業務を終わらせて、そこから東京に行って7〜8件の企業を回り、帰社して終電まで働いて、1日頑張ったご褒美に家系ラーメンを食べて寝る。そのような生活を続けた結果、見事に太りました(笑)。

森本:疲れているときの家系ラーメンは間違いないです(笑)。

田島:そうやって地道に活動しているうちに、少しずつ周りに理解してくれる人が増えてきました。特に直属の部長が「これは面白いかも」と協力してくれるようになり、そこから一気にスピードが上がりましたね。役員へのプレゼンを何回も重ねて、最終的に理事長が「成功したら面白いかもしれないですね」と言ってくださり、「じゃあ、やらせていただきます」と。

森本:発表会の時は、横信の皆さんが本当に生き生きとされていました。その状態まで持っていったのは田島さんの力ですよね。僕自身も田島さんの熱意と人柄に引かれて、この人のためなら自分ができることは全部やろうという気持ちになりました。

初めて話をお聞きしたとき、アイデア自体は似たようなことを思いつく人もいると思いましたが、実際に形にするのはめちゃくちゃ難しいと思ったんです。でも、田島さんなら本当にできるんじゃないかと思うほど、熱意やパワーがすごかった。人の魅力が逆境や大きな壁を乗り越える原動力になることを、田島さんから学ばせてもらいました。

田島:それはよかったです。ローンチまで寝不足になるほどしんどかったのですが、電通にサポートしてもらったおかげで最高のスタートダッシュを切ることができました。

森本:寝不足だったんですね。発表会前日から、田島さんだけなぜか目がうつろなのが気になっていました(笑)。

田島:あの後、家系ラーメンを食べたら元気になりました。おなかがすいていたのかもしれないですね(笑)。

Yokohama Big Advance

中小企業と金融機関に本気で寄り添うために転職を決意

森本:ローンチ後、金融機関側の反応はいかがでしたか?

田島:最初は箸にも棒にもかかりませんでしたよ。そもそも、金融機関同士で協働する文化がない時代ですから、「横信の人が何しに来たの?」と身構えられる状態でした。それでも営業活動を続けていたら、ある時、静岡の静清信用金庫が賛同してくれたんです。やっぱり同じ思いを持っている人はいたんだと、とても救われた気持ちになりました。

森本:静清信金さんとは以前、「社歌と企業ブランディング」というテーマで、取引先企業向けの講演をさせていただきましたが、私も温かいイメージを持ちました。

それにしても、現在では51行が利用するプラットフォームにまで成長させたというのが、またすごいですよね。

その後、田島さんは横信を退職し、Big Advanceの開発パートナーであるココペリに転職されるのですが、どうしてバンカーというキャリアを捨ててまでBig Advanceをやろうと思ったのでしょうか?

田島:最初は一人で始めたプロジェクトでしたが、森本さんや社内のメンバーなど仲間が増えてきて、応援してくれる人もいて、金融機関や導入企業の方々からも感謝の言葉を頂くようになりました。その人たちのために、Big Advanceを全力で育てることが自分の役目だと思ったんです。

森本:横信に残るという選択肢はなかったのですか?

田島:他の金融機関に導入いただいても、こちらも金融機関という立場上、先方は競合他社。導入後の支援には大きなハードルがありました。横信にも直接的なメリットはないですしね。でも、それだと中途半端で、金融機関の構造を変えることも、中小企業を元気にすることもできないと思ったんです。

森本:その生き方、とても勉強になります。

田島:あまりお勧めできません(笑)。リスクが大きいですからね。でも、自分の中では、やりたいこととやるべきことがリンクしたので、あまり迷うこともなく自然な流れで今に至ります。

説得力のあるコンテンツが、中小企業のビジネスを前進させる

森本:Big Advanceはこれからどのように拡大していくのか、展望を教えてください。

田島:Big Advanceという場をもっと広めていくことで、日本の中小企業の生産性を上げたい。そのために、毎日使っていただいて、企業経営に役立てていただけるよう機能強化をしていきます。今はまだ中小企業にとって欠かせないツールにはなれていないと思うので。

もう一つ、このプラットフォームは全国各地の企業同士が簡単につながる“コネクト”という部分が大きな強みなので、そのネットワークを海外へと広げたいと思っています。コロナ禍でグローバルビジネスが苦戦する中、海外と日本のビジネスをつなぐプラットフォームになることで、中小企業の成長に少しでも貢献していきたいです。

森本:めちゃくちゃ楽しみです!僕らもぜひ協力していきたいです。

田島:心強いです。中小企業の課題のひとつがブランディングとPRです。リソースもノウハウもなく、経営支援を行う金融機関もそこは専門外ですからね。だからこそ、電通のようなコミュニケーションのプロが中小企業を応援するのは、日本経済にとってすごくプラスだと思うんです。

実際、森本さんの手がける「社歌コンテスト」も中小企業のブランディングやPRの一助になっていると思います。これからも中小企業支援はどんどんやっていただきたいですし、ぜひ一緒に活動してもらえたらうれしいです。

森本:ありがとうございます。僕が思うのは、いきなり中小企業のビジネスマッチングを考えるよりも、まずは中小企業で働く方々の思いや夢を知る方が大事だということ。

コンテンツ制作に関しても、現場に居て実際に肌で感じたものから生まれる企画には、説得力やリアリティーがあります。それを中小企業の方々と一緒に見つけ出して、面白いコンテンツを生み出すことで、副次的に企業の課題解決につながるのではないかと思っています。

田島:作っていただいた横信のプロモーション動画がまさにその好例ですよね。社員巻き込み型の面白いコンテンツが、結果的に企業のブランディングにつながるという。

信金に親近感はあるのか
https://www.youtube.com/watch?v=lzQe3hAQbZI
横浜信用金庫「信金に親近感はあるのか!?」:横浜信用金庫の職員に上司がさまざまなドッキリを仕掛け、親近感を感じる対応ができるかを検証した動画プロモーション企画。

森本:田島さんもノリノリで参加してくださいましたよね(笑)。

田島:楽しかったです(笑)。このようなコンテンツ制作や経営支援などを通して、結果として中小企業の方々が明るく元気に働ける世界をつくりたいですよね。

森本:そうですね。一人でできる仕事なんてほとんどないですし、いつだって人との出会いがチャンスを与えてくれます。田島さんの言葉を借りるなら、Big Advanceを中心に、たくさんの人の“人生”や“生きざま”が出合い、素晴らしいプロジェクトが生まれることを願っています。ぜひ今後もご一緒させてください!本日はありがとうございました!

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