D2Cブランド開発の極意No.1
ブランドビジネスの大変革!「D2C」を成功させる三つの鍵は?
2021/01/08
D2Cとは「Direct To Consumer」の略称。
企業や個人が小売店舗や流通を介さずに、自社サイトで生活者に直接商品やサービスを販売するビジネスモデルのことです。
ビジネス界で近年、最も話題になっている言葉のひとつではないでしょうか?
しかしながら、
実は何をもってD2Cブランドと定義されるのか、理解が追いついていない
人も少なくないかもしれません。
本連載では、電通と共に企業のD2Cブランド開発を支援するパートナー、インフルエンサー・マーケティング会社タグピクのファウンダー兼会長にして、D2C専業マーケティング会社マルシェのブランドプロデューサーでもある泉健太氏に、D2Cビジネスの全体像を解説してもらいます。
今回は、従来型のECとは異なるD2Cブランドの本質や、日本企業ならではのD2C市場の攻め方、D2Cビジネスに欠かせない事業開発のプロセスや必要人材など、これから始めたい企業が必ず押さえておくべきポイントを聞きました。
<目次>
▼D2Cの本質は①世界観への共感②ユーザーへの利益還元③SNSインフルエンサーの拡散力
▼D2C流行の背景にある、「消費行動の民主化」とは?
▼アメリカと日本のD2C事情。「体験価値を損なわない物流」が、日本のD2C発展を後押しする!
▼中国と日本のD2C事情。日本の“伸びしろ”を握るインフルエンサー
▼「ネットでも売る」ではなく「完全な新規事業」として捉えるべし
▼D2Cは「総合格闘技戦」!…そのココロは?
・泉健太氏とは?
タグピクのファウンダー兼会長。自身のSNSアカウント「@nikuterrorist」ではInstagram/TikTokを中心にフォロワー46万人超を有する美食家インフルエンサーの顔を持つ、ハイブリッド系経営者。
金融業界と上場企業のプロ経営者の経験を生かし、ブランディングと戦略コンサルティングで数多くの企業価値を向上させてきた“上場請負人”でもある。
・タグピクとは?
日本およびアジア圏に5000人のインフルエンサーを抱え、SNSブランディングによる共感形成の領域でトップクラスの実績を持つインフルエンサー・マーケティング会社。
泉氏や共同創業者の代表取締役・安岡あゆみ氏ら、役員や社員も現役インフルエンサーとして活躍し、SNSやD2Cの成功法則を知り尽くしている。2020年9月、D2C専業子会社「マルシェ」を設立。https://tagpic.jp/
・電通とタグピク
電通は、タグピクおよびそのグループ子会社でD2Cブランド開発を専門とするマルシェと業務提携を結んでいる。(詳しくは広報リリースを参照)
D2Cの本質は①世界観への共感②ユーザーへの利益還元③SNSインフルエンサーの拡散力
D2Cというビジネスモデルは、近年はバズワード的に大きな盛り上がりを見せています。
アメリカではここ数年で、いくつものD2Cブランドが巨額の資金調達を達成し、「ユニコーン企業」(※)となっています。日本でもスタートアップを中心にD2Cビジネスを始める企業が急増しており、投資家や企業から熱い視線を浴びています。
※ユニコーン企業=時価総額10億ドルを超える未上場のベンチャー企業のこと。
D2Cとは端的にいえば、「生活者に直接モノを届けること」です。
「以前から、自社サイトで商品・サービスを売るEコマース(EC)はあったけど、何か違うの?」
と思われるかもしれませんが、私は現在確立されつつあるD2Cブランドには、従来型の自社サイトにはない三つの特徴があると考えています。
D2Cブランドの特徴①世界観を伝えるUX設計
D2Cブランドの特徴は、「ブランドストーリーをオンライン上で伝える」ことを大事にしている点にあります。
モノが出来上がるまでのストーリーや、原材料や素材に対するこだわり、つまり「何を背景に」「誰が」「何のために」つくった商品・サービスなのかを伝えるUX設計が求められます。
従来型の自社サイトは、商品・サービスの機能の特徴や成分など、ファクトを訴求する場として活用するケースがほとんどでした。それが今、大きな転換点を迎えています。
D2Cブランドでは、SNSを中心としたあらゆる接点を通してブランドの世界観を提示し、その全ての接点で一貫したユーザー体験を提供します。そして、それに「共感」した生活者は、商品と共に、いわばその世界観を手に入れます。
さらに購入後も、SNSやメールマガジンなどのデジタル接点で繋がりを持つことにより、共感度の高いユーザーとのコミュニケーションは続き、リピートやインフルエンスを促すためのファン形成が重視されます。
これまでは、メルマガ配信や広告施策による“発信者主体”のコミュニケーションが多かったのに比べ、あくまでファン形成を目的に、“ユーザー主体”で一連の購入前・後の体験価値がしっかりとデザインされているところが、従来のネット通販との大きな違いです。
D2Cブランドの特徴②ユーザーへの利益還元
D2Cブランドでは店舗を持たず、流通を介さないケースが多いため、コストを抑えることができ、その観点では利益が出ます。
その余剰利益を、ユーザーに対し「価格で還元し、安く設定する」か、「価値を還元し、店舗では手に入らないものを売るor付加価値を増やす」かの2択になります。
特に、後者の「余剰利益を高付加価値に転換する」仕組みが重要です。
例えば原材料や素材にこだわれば、ユーザーは原価率の高い商品を手に入れられますし、箱のデザインに注力すれば、開けるときの高揚度が上がり、より上質な体験価値を提供できます。
D2Cブランドの特徴③SNSインフルエンサーの拡散力
従来のブランドはメディアを活用したプロモーションが主流でした。D2Cブランドのプロモーション戦略では、個のインフルエンサーを起点としたSNSでの情報発信が重要な鍵を握ります。
近年は生活者がSNSを“情報収集ツール”としても使うようになったことで、特にミレニアル世代以降を中心に、インフルエンサーによるSNSでの発信は影響力を増しています。
テレビや雑誌で一度も見たことがないブランドでも、信頼しているインフルエンサーがSNSでレコメンドした商品なら購入する、という購買行動も起きているのです。
こうしたインフルエンサーをD2Cブランドのエバンジェリストとして捉え、その拡散力を最大限に活かすことで、従来型の広告に依存しないプロモーション展開が可能になります。
昨今、時流に乗っているD2Cブランドの中には、商品化される前の開発段階からインフルエンサーをアサインし意見交換するブランドや、インフルエンサーをプロモーションの主軸に置いたブランドも増えてきています。
ブランドのストーリーや世界観を伝えるUX設計、ユーザーへの利益還元、SNSインフルエンサーの拡散力、この3点がD2Cブランドの根幹にあることを、まず押さえておきましょう。
D2C流行の背景にある、「消費行動の民主化」とは?
D2Cが急成長を遂げている理由のひとつに、生活者による「消費行動の民主化」が挙げられます。
2000年代以降、大手ECプラットフォームの隆盛によってインターネットでモノを買うことが当たり前となりました。やがてモノやお店を評価するサイトや口コミ機能が一般化し、生活者の消費行動が少しずつ変化してきました。
もちろん現在も、大手ECプラットフォームは強い影響力を持ちますが、ここ数年間で、さらに生活者は変化しています。
評価やレコメンドをうのみにするのではなく、例えばInstagramでおいしいお店を見つけ出すなど、生活者が自分で「発見」したり、「検証」したり、一連の消費行動プロセスに価値を見いだしてモノを買う消費スタイルが、ミレニアル世代以降を中心に急増しています。
一方的に与えられたモノを購入するのではなく、生活者が自分でモノを選んで購入する。あるいは、自分が信用する友人やインフルエンサーがレコメンドするモノを購入する。
その判断基準が、
ブランドのストーリーや世界観に自分が共感できるかどうか
なのです。
従来は受け身だった生活者に起こった変化は、極端にいうと「消費行動の民主化」です。「みんなが持っているモノ」よりも「自分の価値基準で選ぶコト」を大切にする生活者が増えたことで、消費はより“生活者主体”へとシフトしています。
そして情報収集の手段も変化しています。4マス(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)しか存在しなかった時代と比較すると、生活者が検索サイトを使うようになり、さらに進んで今ではSNSが影響力を増しつつあります。
企業の意向が反映された広告や評価サイトの情報よりも、SNSで友人やインフルエンサー、あるいは他の生活者によって発信される情報の方が、ニュートラルで信用できるものだと認識されているのです。
既に述べたように、D2Cブランドの本質は、SNSを中心に、商品のストーリーや世界観への「共感」を生み出すことと、店舗を持たない/流通を介さないことで生まれる余剰利益を、ユーザーの体験価値向上に還元できることです。
ブランドはまずSNS上で生活者に「発見」され、ストーリーに「共感」してもらい、上質な「体験価値」を提供します。そして、ブランドに共感した生活者は、個人のうそ偽りのないレコメンドを「発信」する。その発信を見た別の生活者が、また新たにブランドの世界観に触れて「共感」するというサイクルが確立されていきました。
D2Cブランドが、SNSを主戦場として発展を遂げてきたのは必然だったといえそうです。
アメリカと日本のD2C事情。「体験価値を損なわない物流」が、日本のD2C発展を後押しする!
D2Cはアメリカで産声を上げ、近年は中国でも流行しつつありますが、ここで日本とアメリカ・中国との違いを整理してみましょう。
まずアメリカと日本の比較ですが、大きく「国土・店舗・物流」という条件に違いがあります。
国土はアメリカの方が圧倒的に広く、その分、ヒトやモノの移動に時間がかかることが多くなります。
店舗についても、日本ではコンビニエンスストアや総合スーパーなど、何でも揃う店が全国各地の住宅地で充実していますが、アメリカでは多くの場合、都市部でない限りは、自動車を遠くまで走らせないと、そういったお店にはたどり着けません。
また、日本の小売店は接客やサービスに均一性があり、国内のどこの店舗に行ってもある程度同じサービスが期待できるなど、小売の利便性は日本の方が高いといえるでしょう。
そして日本の最大の強みが、高度に発達した物流ネットワークです。日本はアメリカなど他国と比べて、冷蔵・冷凍の管理も含めた配送の品質管理レベルが非常に高いのです。
ブランドとデジタルで接点を持って、購入まで至った生活者は、自宅に届いた商品を受け取り開封するときにも、一貫した世界観やユーザー体験を期待します。
その点、日本の優れた物流網は、「商品が届いたときの体験価値」を損なわない点で、D2C市場の発展において非常に優位性があるのです。
ご参考までに、マルシェで展開しているブランシェ・ショコラの、以下のブランドサイトとSNS投稿動画をぜひ見てみてください。
[まるでハイブランドのジュエリーBOXのような体験価値のデザイン]
https://branche-chocolat.jp
[化粧箱の開封イメージ]
https://www.instagram.com/p/CFrPxfBDu6X/
中国と日本のD2C事情。日本の“伸びしろ”を握るインフルエンサー
続いて中国と日本を比較してみましょう。最大の違いは、中国では、ECにおけるインフルエンサー(Key Opinion Leader、KOLと呼ばれます)の影響力が強く、ライブ配信の比率も高いことです。
企業とタイアップしたインフルエンサーがライブ配信しながら商品を販売する「ライブコマース」の文化も、中国ではすっかり根付いた感があり、その市場規模は、2021年には2兆元(約31兆円)に達するといわれています(※)。しかし日本では、まだ市場の創造期の段階でしかありません。
※ 日本貿易振興機構(ジェトロ)資料よりhttps://www.jetro.go.jp/biznews/2020/10/a96bbe55659f00d6.html
その背景には、もともとの文化や習慣の違いがあります。例えば日本だと、街中でボイスメッセージで友人とコミュニケーションをとったり、自分のスマホから音声を流す習慣はありません。このような違いから、中国ではライブ配信からのコマースが非常に発展し、“しゃべれてモノが売れる”インフルエンサーが急増しています。
日本でもコマース領域で活躍するインフルエンサーが徐々に登場していますが、中国とは異なる、日本ならではの形態が生まれるのではないかと思っています。
今はYouTubeが最もインフルエンサーにとって稼げるプラットフォームですが、今後のInstagramやTikTokのマネタイズプログラムによっては大きく変化する領域なので、プラットフォーム側の動向を注視しておく必要があります。
ここまでをまとめると、日本市場はD2Cブランドを展開するに当たって、
- 小売や物流など、ユーザー体験に大きく影響する要素のレベルが高い
- インフルエンサーの台頭など、成長の余地が大きい
といったメリットがあると考えられます。
現状、日本のD2Cブランドは、一部のスタートアップ企業によるラグジュアリー商品、ニッチ商品、コンプレックス商品などが先行しています。
しかし、アメリカではD2Cブランドを大手ブランド企業が買収するフェーズに差し掛かっており、アメリカや中国での急速な市場の広がりは、当然日本企業にも影響を与えます。
これからは、ナショナルブランドや大手ブランド企業も確実に参入し始め、D2Cで扱われる商品ジャンルも多様化していくことでしょう。
「ネットでも売る」ではなく「完全な新規事業」として捉えるべし
さて、実際に日本企業がD2Cブランドを始める上で何が必要なのでしょうか。その心構えから整理しましょう。
●ユーザー体験価値の設計
まず、ブランドとして考えるべきは、とにかく「ユーザー体験価値の設計」です。生活者がブランドに「接触する前」「購入時」「購入後」全ての体験価値をデザインする必要があります。
どのように生活者の目に触れて、どのように注文され、どんな状態で届き、どう開けられて、どう食べられて、どんな写真が撮られるのか。その後、どのタイミングでリピート購入するのか。ユーザー体験のすべてを計算して、商品設計やUI・UX設計を行うのが、D2Cです。
中でも実際の売り場となるブランドサイトのデザインやUIは重要です。ストーリーや世界観をつくり込むためには、コンテンツ構成、キャッチコピー、写真など、一つ一つのクオリティーにこだわらなくてはなりません。
ときどき、D2Cブランドを立ち上げようとしている企業から
「商品写真はカタログや大手ECサイトで使っているものがすでにあるので、それを使えませんか」
と言われる残念なケースがあり、お断りする場合もあります。紙に合ったクリエイティブと、SNSで映えるクリエイティブはそもそも異なりますし、既存の素材の使い回しでは世界観を十分に伝えることはできません。
D2Cを始めるのであれば、もともとのブランドを、「新たなD2Cブランド」として完全にイチから立ち上げ直すマインドセットが必要なのです。
ちなみに当社のブランシェ・ショコラにおいては、独自の世界観を表現するため、フォント自体をオリジナルで開発し、サイトや印刷物のディテールの表現の一つ一つにこだわっています。
また、企業には「そもそもD2Cにふさわしい商品なのかどうか」の判断も求められます。日本は小売や流通が発達しているので、低単価商品などは、駅前のコンビニやカテゴリーショップで販売した方が圧倒的に効率よく売れることもたくさんあります。流行しているからと、なんでもD2Cに切り替える必要はありません。
そして、後述しますが、D2Cをビジネスに取り入れるとしても、今までの店舗・チャネルは当然ながら重要です。
●ユーザーへの利益還元
そして、D2Cには「ユーザーへの利益還元」が欠かせません。そもそもオンラインでモノを購入するということは、送料がかかります。小売店や送料無料の大手ECプラットフォームでも購入できるものを、生活者はわざわざ送料を自己負担してD2Cブランドで買いたいとは思わないでしょう。
そこで、D2Cブランドにおいては、流通や小売の手数料をカットした分、生活者が送料を負担してでも買いたくなるような「付加価値」の提供が必須です。
つまりD2Cにふさわしい商品やサービスとは、高付加価値型の商品の方が向いています。生活者の共感を生むようなストーリーや世界観を構築できるもの、品質へのこだわりがあるものです。
必ずしも「品質の良さ」だけでなく、生活者の立場で考えて「送料を負担してでも買いたくなる要素」は全て付加価値となります。
先に述べたように、現在のD2Cは美容・ファッション、嗜好品やラグジュアリーブランド、コンプレックス商材などが主流です。本来は冷凍で輸送できるケーキ・スイーツなど「サイズがあり持ち運びにくい商品」や、水・お酒などの飲料、米、ドッグフードなど「小売店で買うと重たくて持ち運びにくい商品」もD2Cとの相性が良いでしょう。
まとめると、D2Cは「今までの商品を、自社のネットショップでも売る」という思考ではなく、「新規事業」として捉えることがポイントです。
D2Cにふさわしい商品を新しく開発する
既存商品であれば、D2Cブランドにふさわしいものとして完全に再設計する
D2Cは「総合格闘技戦」!…そのココロは?
D2Cで大事なのは、ブランドに共感してくれた生活者との長期的なコミュニケーションです。
つまり、単に商品を開発して売って終わりではなく、
- 生活者の共感を集めるためのコミュニケーション設計
- 認知から購入までの導線設計など、ECソリューションの実装
- SNSマーケティング・戦略PRの実施
- データマーケティング(CRM、顧客管理)
といった一連のサービス設計が必要になります。
そのためには、まず市場やターゲットの選定から始まり、リサーチャーやコピーライターを交えてブランドコンセプトを策定します。
その後、外部パートナーの選定も含めたプロジェクトチームの組成を行い、プロダクトの内容に応じて、その領域に詳しい専門家を入れながらプロダクト企画・開発を行います。
ブランドの世界観を左右するデザイナーやコピーライター、顧客体験価値を設計するUI/UXデザイナー、SNSマーケティングの専門家は外部のスペシャリストをチームに迎え入れることをお勧めします。
今回はD2Cの概要を伝えることが目的なので、具体的なプロジェクトの進め方や必要な人材などについては、別の回でまた触れます。
最後に、D2Cオーダースーツブランドの「FABRIC TOKYO」の森社長も記事でそう発言されていましたが、私たちは、D2Cビジネスの難しさを「総合格闘技戦」と呼んでいます。
SNSがD2Cにおける“主戦場”であることは今回解説した通りですが、マスメディアや小売、ECプラットフォームといった既存チャネルの存在を無視していいわけではありません。
タグピクで扱っているD2Cブランドも、商材に応じて雑誌社などマスメディアとのリレーションを大切にしています。また販売チャネルも、自社サイト一本とは限らず、大手ECプラットフォームを活用することもあります。
また、D2Cではリアル店舗の位置づけも変化します。マットレスのCasperや眼鏡のWarby Parkerなど、アメリカのD2Cブランドがこぞってニューヨークのソーホー地区に店舗を出店したように、リアル店舗でしかできない「体験価値」の提供ができるからです。
これまでのリアル店舗は「売り上げ」が主な指標となっていましたが、D2Cではブランドの世界観やストーリーを体験する場として店舗があり、実際に購入するのはオンラインでもよかったりします。
店舗の役割が変化するなら、店舗オペレーションも再設計する必要があります。例えば、
- SNSへの誘導率やLINE@への登録率を店舗のKPIに設定する
- ソーシャル力やインフルエンス力が高い人材を店舗スタッフに登用する
など、店舗へのインセンティブを設計するために、人事部門も巻き込んだ戦略構築が考えられます。
ちなみに、「リアル店舗における体験価値の提供」は、スタートアップ企業よりも既に自社店舗や流通ルート、知名度を備えている大手ブランド企業やナショナルブランドに優位性があると考えています。
ただ、忘れてはならないのは、ブランドのストーリーや世界観を伝えられないECプラットフォームや小売店に露出すると、ブランド全体の価値を損ねてしまう可能性もあることです。
このようにD2Cブランドといっても、商品の特性や世界観に応じて、マルチメディア、マルチプラットフォーム展開の予算をどう振り分けるのか、ブランディングを考えながら戦略を練る必要があります。
世の中全体のデジタルシフトは進んでいますが、決してデジタルだけで勝ちきらないといけないわけではありません。既存の資産を生かしながら、ユーザー体験価値を軸にしたブランド戦略の設計/再設計を行う。考えれば考えるほど、やはりD2Cビジネスは「総合格闘技戦」ではないかと思うのです。