音楽ライブ配信時代、到来。「DENTSU音楽がかりONLINE」DEBUT!No.3
オンラインライブ配信、困りがちなポイントとテクニカルなお話。
2021/03/26
<目次>
▼「配信プラットフォーム」を選ぶ際に見るべき6つのポイント
▼オンラインライブ最大のキモは「インターネット回線」……ってどういうこと?
▼「安全」で「安定」した配信を行うための事前準備は、ぜひ音楽がかりに!
「DENTSU音楽がかりONLINE」で“テクニカルプロデューサー”を担当している、電通テックの栗原です。
前回は、クリエイティブチームの石原から「オンライン配信のプラットフォームや演出方法は多種多様だ」ということをご紹介しました。
そこで今回は、「ではそのプラットフォームはどうやって選択すべきか?」「配信手法はどれがいいのか?」「そもそもオンライン配信には何と何が必要なのか?」といったことを考えるヒントをご紹介します。
「配信プラットフォーム」を選ぶ際に見るべき6つのポイント
通常、音楽ライブイベントの実施には、以下のようなステップがあります。
- イベント企画
- キャスティング
- 演出、進行
- 映像、照明、音響などの機材、スタッフ手配
- ライブハウスやホールなどの会場手配
- 会場運営、人員計画
オンライン配信の場合は、上記に加えて、
- 配信プラットフォーム
- ユーザーエンゲージメント
- 配信機材
を検討する必要があります。
さて、オンライン配信をおこなう配信プラットフォームは非常に多様です。
大手プレイガイドが提供するサービスから、音質にこだわるもの、ユーザーとインタラクティブにコミュニケーションができるもの、インタラクションに優れているもの、ARやVRに対応できるもの、当選者を伴うキャンペーンに適しているもの、権利処理に対応できるものなど。
イベントの企画内容や規模にマッチした、適切なプラットフォームを選ばなければなりません。
プラットフォーム選定のポイントは、主に以下の6つです。
①配信バックエンドシステム
②ユーザーコミュニケーション
③チケット決済方法
④キャンペーンとの連携方法
⑤システム使用料と発券手数料
⑥著作権の権利処理
配信バックエンドシステム(①)は、大別すると「AWSなどの配信ソリューションを活用しているプラットフォーム」と「独自開発で運用しているプラットフォーム」の二つがあります。
それぞれ「同時アクセス時の冗長性」に代表されるサーバースペックや、ユーザーとのインタラクティブなコミュニケーション手法である「チャット」「アバター」などの機能(②)が異なるため、まずはこのバックエンドシステムがどういうものかを確認すべきです。
プレイガイドごとに異なるチケット決済方法(③)も、ユーザーにとっての「参加のしやすさ」に直結するため、重要です。
次にキャンペーンとの連携ですが(④)、最近では「音楽ライブ配信のチケット」をインセンティブとするプレゼントキャンペーンも増えてきています。当選者にどのような視聴方法を提供できるか、またキャンペーン事務局との連携、個人情報保護の観点も合わせた「設計と運用」が必要になります。
続いて、費用面です。プラットフォームに支払う「システム利用料」にプラスして、8%~20%ほどの「チケット販売発券手数料」がかかります(⑤)。参加人数に応じて変動する費用ですので、事前にしっかりシミュレーションします。
最後に音楽著作権やデジタル著作権の権利処理ですが(⑥)、配信プラットフォーム側で「包括利用許諾契約」をしている場合や、都度使用申請が必要な場合があるので、これも確認しておきましょう。
オンラインライブ最大のキモは「インターネット回線」……ってどういうこと?
オンラインライブの概要が決まってきたら、実施に向けた準備に進んでいきます。本稿では特に「配信機材」「配信技術」といったテクニカル面のポイントをお話しします。
まず、アーティスト機材やマイク、音をまとめるPA機材、歌ったり演奏したり踊ったりなどのライブパフォーマンスを撮影する映像機材は、通常の音楽ライブで使うものとほとんど変わりません。
これらに加えて、音楽ライブをオンライン配信するために必要なことは、「番組づくりとしての考え方と、チームビルディング」です。
音楽ライブ配信では、届ける相手が目の前だけではなく「プラットフォームの先」にもいます。ですので、配信画面上でどのように見せたいか?その設計は、配信画面づくりのできるディレクターと一緒に検証を重ねていきます。
演出によっては、たくさんの映像ソース・音声ソースをひとつにまとめることとなり、そのまとめ方も、配信画面上での画をつくっていく上で重要なポイントです。
最後に、一つにまとめたもの=映像と音声を、ストリーミングサーバーに送る「ライブエンコーダー」を使用し配信プラットフォームに送ります。
さて、こういった「配信機材」の中でも最も重要なものとはなんでしょうか?その答えは、会場からサーバーに音や映像を送るための「インターネット回線」環境です。
「え、何言っているの?オンラインライブだから当たり前じゃん」
と思われたかもしれませんが、皆そう思っているからこそ、おろそかになりがちなポイントだったりします。どういうことか、解説します。
ライブハウスやホールなど、会場に付帯されているインターネット回線やWi-Fiを使用しても、ライブ配信はできるかもしれません。しかし、そのインターネット回線が、さまざまな人が利用している「共用回線」である場合、リスクが生じます。つまり、他所で大きく帯域を使用されていると、速度不安定な状態が起こることがあるのです。
ライブストリーミングは「アップロード」に大きく帯域を利用する必要があるため、せっかく送っているライブ映像・音声が、共用回線の混雑からサーバーに届かず、ユーザーの見ている画面上では配信が中断してしまう、などということが起こりかねません。
また、リモートワーク普及や在宅時間の増加にともない、現在世界的にインターネット回線帯域の逼迫が起こっており、時にネットワーク全体が“落ちる”ケースもあり得ます。会場から生の演奏をリアルタイムでユーザーに届けるライブ配信では、こうしたさまざまな「回線トラブル」に対処できるような知識や、体制確保が必要なのです。
もちろん、共用回線やモバイル通信環境下での配信も可能ですし、その手軽さが現在のオンラインライブ文化を支えている面はあります。これから5G環境が普及すると、モバイル通信環境下でも安定的にストリーミングできるようになるでしょう。
とはいえ、インターネット回線が不安定になることで、せっかくのオンラインライブを台無しにしてしまうケースは少なくないのは、ここまで述べてきたとおりです。
会場の状態や、準備期間や予算規模によってさまざまなケースがあると思いますが、インターネット回線を増設することで、より安定的かつ安全な配信ができます。配信会場となるライブハウスやホールなどのインターネット回線状況を理解し、必要であれば増設することをオススメします。
「安全」で「安定」した配信を行うための事前準備は、ぜひ音楽がかりに!
私たち音楽がかりは、音楽業界が苦境を迎えている中で、テクノロジーを活用し、平時と同じようにユーザーが音楽エンタテインメントを楽しめるようにしていきたいと考えています。
そして、そのためにはオンラインライブのまだ見ぬ可能性を模索し、今よりも音楽ファンが物理的にも心理的にも“距離”を感じずにライブに参加できるようになっていく必要があります。
これまで大小さまざまなオンラインライブ配信を手掛けてきた音楽がかりでは、企画内容にあわせて、さまざまなソリューションや、表現方法のご提示、キャンペーン設計、テクニカルやネットワークサポートまで、ワンストップでご提案できます。
私たちはオンラインライブの企画から実施までのさまざまなハードルや検討すべきポイントを、
「クリエイティブ」
「プロデュース」
「テクニカル」
それぞれのメンバーが持つアイデアとケイパビリティーでサポートします。
上記三つの中でも、オンラインライブの実施で一番困りがちな要素が「テクニカル」部分でしょう。今回ご紹介したポイントを押さえてしっかり事前準備することで、「安全」で「安定」した配信を行うことができ、結果としてユーザーにストレスなくライブを届けられます。
些細なご質問から、こんなことやってみたい、技術的に困ったなどなど、まずは音楽がかりにお気軽にご相談ください。