音楽ライブ配信時代、到来。「DENTSU音楽がかりONLINE」DEBUT!No.4
音楽は“不要不急”なんかじゃない!その熱量を、次のステージへ。
2021/04/21
<目次>
▼「Sold Outという概念がなくなり、キャパシティーが無限になった」
▼アイデアとテクノロジーで、テレビやDVDで見るのとは違う付加価値を!
▼リアルライブとオンラインライブの「ハイブリッド」が新しい当たり前に
▼音楽ライブ配信を全面的にプロデュースするユニット「DENTSU音楽がかりONLINE」
「Sold Outという概念がなくなり、キャパシティーが無限になった」
緊急事態宣言が発令されているとき夕方のニュース番組で見た、ある飲食店の店主の言葉が印象的でした。
テイクアウトが増え、満席という概念がなくなり、客席が無限になった
つまりこれまでは満席になれば、お客さんはお店に入れなかったのが、テイクアウトすることでお店のキャパシティーが無限大になったというのです。この状況を前向きにとらえており、とても印象に残りました。
音楽ライブにも同じことがいえると思います。昨年末の嵐の休止前最後のライブ「This is 嵐 LIVE 2020.12.31」は、リアルで実施されていれば東京ドームで5万人のファンしか共有できなかった時間を、オンライン開催により、希望する人全員で共有することができました。
しかし、年が明けると、オンラインライブに飽きてきた、チケットの売上も当初ほどじゃない、という声も聞こえ始めました。まだしばらくWithコロナの状況が続くと考えると、オンラインライブの楽しみ方を工夫していかねばならないと思います。
DENTSU音楽がかりONLINEの連載ではこれまでクリエイティブチーム、テクニカルチームからオンラインライブの現状についてお話しさせていただきました。最終回の今回は、日ごろからアーティストサイドや企業の声を聞いているコンテンツプロデューサーの視点で、オンラインライブのこれからについて考察します。
アイデアとテクノロジーで、テレビやDVDで見るのとは違う付加価値を!
今回、筆者周辺の若手社員を中心に、オンラインライブについてのアンケートをとってみました。狭い範囲での調査なので、本当に参考程度ですが、130人以上の回答を得ているので、一定の声の傾向は反映しているといっても良いかと思います。
これまでに、約半数が有料のオンラインライブを視聴したことがあり、
その中の約3人に1人が「有観客ライブ再開後も利用したいとは思わない」と答えています。今後利用したいと思わない理由を掘り下げてみると、
「会場のような一体感が感じられない」「テレビやDVD/Blu-rayを見るのと変わらないから」という意見が多くを占めました。
最初はリアルなライブが開催されない中、好きなアーティストの最新のパフォーマンスを見られるということで試しに視聴してみたものの、テレビやDVDで見るのと変わらなかった……という意見は、確かに理解できます。
オンラインならではの工夫がなされているならともかく、通常のライブのようにアリーナやホールの様子を配信するだけだと、代わり映えがなく、続けて参加する意欲が少なくなってしまうのでしょう。
少しずつ有観客ライブも開催されるようになりましたが、コロナ禍以前の状況に戻るにはまだまだ時間がかかると思われます。やはり、長期的な視点を持ち、「テレビやDVDで見るのとは違う、新しい価値」を付けることが、今後も課題になるのではないでしょうか。
5Gの大容量回線を使えば、遠く離れた国のアーティスト同士がセッションできるかもしれない。XR(AR、VR、MRなどの総称)を使って、リアルタイムで新しい映像体験ができるかもしれない。
リアルでのライブが「当たり前」だった時には思いもつかなかったエンターテインメントが生まれ、それがこれからの「当たり前」になる可能性だってあります。
リアルライブとオンラインライブの「ハイブリッド」が新しい当たり前に
多くの企業でテレワークが「当たり前」になり、対面での会議とリモート会議を使い分けることが日常になりましたが、この便利なワークスタイルは、アフターコロナでもスタンダードになっていくはずです。音楽ライブも同じように、コロナ禍が終息しても、リアルと配信の「ハイブリッド」型になっていくと考えます。
だって、地方にいる人たちが東京ドームのライブを自宅にいながら同時刻に体験できたり、仕事や家庭の都合で会場まで足を運べなくても大好きなアーティストのライブを生で見ることができる、という経験を一度したら、忘れられませんから。
先ほどのアンケートでも、リアルなライブが復活したら、会場で見たい人が圧倒的に多いですが、136人中50人が「会場での参加とオンラインで使い分けたい」と答えていました。
「DENTSU音楽がかりONLINE」というプロジェクトの原型ができてちょうど1年。2021年1月にウェブ電通報で連載を始めましたが、この連載をきっかけにたくさんの出会いがあり、クライアントからのオンラインライブの相談から、アーティストサイドの課題の相談まで、さまざまなお声がけをいただきました。
それらはまだ世に出ていない段階ですが、近いうちに新しいエンターテインメントの形として皆さまにお届けできるよう、関係者と共に磨き込んでおります。
最後に一つだけ、お伝えしておきたいことがあります。それは、音楽は決して“不要不急”のものではないということです。私たちには音楽ライブが“必要”です。
私のある友人は、「コンサートまで頑張る」「コンサートで元気をもらったからまた明日から頑張れる」と言っていました。つらい時も、音楽ライブに救われた経験を持つ人はたくさんいると思います。
DENTSU音楽がかりONLINEはこれからも音楽のために、エンターテインメントのために、微力ながら貢献していきます。