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企業がメディアになる時代にNo.1

メディア環境の変化を受けて生まれた

コンテンツマーケティング

2014/02/13

1月27日、電通iPR局郡司晶子さん、八木慎一郎さん、坂本陽児さん、徳永希さん、大八木元貴さん、関口嶺さん、電通パブリックリレーションズ阿部達典さんが翻訳を手がけた『~編集者のように考えよう~コンテンツマーケティング27の極意』(レ ベッカ・リーブ著、翔泳社)が発売された。「今、企業のメッセージを適切に伝えようとすると、おのずと“編集者”の視点が求められるのではないか」と、翻 訳チームを率いた郡司さんは語る。日本でもすでに動き出している、コンテンツマーケティングが成し得ることとその可能性を聞いた。

左から大八木さん、阿部さん、八木さん、郡司さん、坂本さん、徳永さん、関口さん
左から大八木さん、阿部さん、八木さん、郡司さん、坂本さん、徳永さん、関口さん
 
 

広告だけにはもう頼れない?!

──本書では“コンテンツマーケティング”の意味や技術が実例を交えて体系化されていますが、まずは本書を翻訳された背景をうかがえますか?

郡司晶子さん

郡司:今、マーケティングコミュニケーションにかかわる多くの方々が、コミュニケーション環境が大きく変化していることを感じていると思います。FacebookやTwitterなどのSNSの登場により、企業や製品に関する情報が人から人へと伝わっていく力がより強くなりました。いっぽう生活者は、知りたいことがあると検索して探します。これまでは広告やPR、セールスプロモーションだけをやっていればよかったけれど、それだけでは足りなくて新しいやり方を探さなければならなくなっています。企業の側に立ってみると、SNSを活用したり、自社サイトと連携させたりすることで情報発信は以前よりずっとしやすくなり、新たなチャンスが生まれています。

そのような新しいコミュニケーション環境のもと、ソーシャルメディア関連のサービスを提供するために2012年4月に設立されたのが、私たち翻訳チームが所属しているiPR局です。これからの優れたコミュニケーションとは何か?を探ることから始まったのですが、その過程で出会ったのが本書です。まだコンテンツマーケティングの分野では日本に関連書が少なかったので、翻訳し出版する運びとなり、現在もう1冊この領域の本の翻訳を進めています。

──昨今、○○マーケティング、といった新しい言葉が日々登場していますが、コンテンツマーケティングはそうした新手法のひとつなのでしょうか?

郡司:いいえ。「コンテンツマーケティングは新しいものではない」とこの本でも冒頭から語られています。そもそも企業はこれまでもずっとコンテンツはつくってきましたし、生活者の欲しい情報を企業が自ら提供するケースもありました。

先に事例を紹介したほうが分かりやすいですね。例えば米バーガーキングが行ったWEBキャンペーン「The Subservient Chicken(チキンはあなたの言いなり)」は、サイト上に映し出された着ぐるみのチキンに「踊れ」「歌え」などと命令すると何でもやってくれ、大流行したそうです。結果、バーガーキングのチキンサンドの売上は急上昇しました。

こうしたエンタテインメント系の内容だけでなく、実用的なものもコンテンツマーケティングの一種です。トイレットペーパーブランドのCharminが提供する、GPSを使ったアプリ「Sit Or Squat(座るかしゃがむか)」は、今いる場所に一番近いきれいなトイレを教えてくれます。どちらも本書の中でコンテンツマーケティングの事例として紹介されているものです。

コンテンツマーケティングとは、
今欲しい人に欲しい情報を提供すること

──書き下ろしの27章では日本の事例を取り上げていますが、無印良品が10年以上展開しているオンラインコミュニティーも、コンテンツマーケティングの一例なのですね。

郡司:ええ。無印良品のコミュニティー活動は、商品開発に生かされていますね。ほかにも27章では、東京マラソンのランナーコミュニティー「ONE TOKYO」なども紹介しています。ここでさまざまな情報発信や交流が行われ、当日だけでなく年間を通じて東京マラソンを楽しむことができます。

──今挙がっただけでも、目的や内容がとても幅広いように感じます。

郡司:そうなんです。コンテンツマーケティングというとつい、「エンタテインメントコンテンツをつくってバズらせる」と考えがちですが、それはあくまでもたくさんある活用方法のひとつです。コンテンツマーケティングは、IRやCRM、クライシス対応など様々な目的に活用できる考え方なのです。

「相手にとって価値があるコンテンツを発信し、自社のビジネス目的につなげる活動全般のこと」というと、少しわかりやすいでしょうか。

それぞれ章立てのひとつにもなっていますが、コンテンツマーケティングは広告的に使ったり、広報的に使ったりもできます。ただ究極的には、本文の中にあるとおり「コンテンツマーケティングとはカスタマーサービス」だといえます。

──カスタマーサービスですか?

郡司:ええ。ピンとこないかもしれませんが、お客様サポート部門での対応は常に一対一ですよね。一人ひとりのニーズに向き合い、その人が求める価値を提供して満足してもらうことがミッションです。コンテンツという単語には、be content withで“満足する”という意味もありますが、コンテンツマーケティングではまさに「今向き合っている相手が満足しているか」という点が非常に重要になるのです。

かつて企業のコミュニケーションは、商品やサービスの利点など企業サイドが一方向的に発信し、広く知ってもらう方法が中心でした。今もそうしたやり方が必要な場合はありますが、それだけではなかなか振り向いてもらいにくくなっています。

人々はいま常時ネットにつながって、おびただしい量の情報に触れています。その中で情報を届けたい相手と接触するためには、その人をよく知って、ほしいと思われるものを適切なチャネルで提供する必要があります。コンテンツマーケティングという言葉はさておき、日本でもこのような考え方でのコミュニケーションを模索する企業が増えてきていると感じています。

次回は、2月27日に更新予定です。