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エシカル消費 意識調査 2020No.2

企業のビジネスチャンスはどこにある?消費者が実践したい「エシカル消費」とは

2021/06/28

先日、電通は「エシカル消費 意識調査2020」(以降、本調査)の結果を発表しました(リリースはこちら)。本調査の結果を踏まえ、これから企業や社会が「エシカル消費」に取り組んでいく意義や方法について連載形式で説明していきます。

今回は、調査結果から見えてきたエシカル消費に関する消費者の意識を紹介しながら、企業にとってのビジネスチャンスを探っていきます。

<目次>
エシカル消費は、企業と消費者をつなぐビジネスチャンス
「エシカル度」が高いのは、食品・自動車・日用品業界
消費者が買いたいエシカルな商品・サービスはどんなもの?
エシカル消費は、「身近さ」と「メリット」がキーワード

 

エシカル消費は、企業と消費者をつなぐビジネスチャンス

前回の記事でお伝えしましたが、私たちはエシカル消費を、「消費者それぞれが社会的課題の解決を考えたり、社会的課題に取り組む事業者を支援するなどして、消費活動を行うこと」と定義しています。ちなみに「エシカル(ethical)」とは、「倫理的な」という意味を持つ形容詞です。私たちの生活に欠かせない消費という行動は、最も身近なエシカルにつながる行為の一つと言えます。しかもエシカル消費は、SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる17の目標のうち、12番目の「つくる責任つかう責任」に直結するものです。

しかし、「エシカル消費を実践したい!」と消費者が思っても、そのような商品・サービスが企業から提供されていなければ買うことができません。一方で企業の視点に立つと、エシカルな商品・サービスを提供することで、売り上げはもちろん、社会的責任を果たしている企業としてのイメージ向上にもつなげることができます。今回の調査結果を見ても、全体の54.0%が企業イメージの向上につながると回答。中でも40~59歳女性の数値が最も高く、64.0%にも上ります。

エシカル消費調査2020
では、企業がエシカル消費をビジネスチャンスとして捉え、企業イメージを高めつつSDGsに貢献するためには具体的にどうしたらいいのでしょうか?そのヒントを探るために、
・業界ごとのエシカル消費の実態
・消費者が買いたいと思うエシカルな商品・サービス
について、本調査から見えてきたことを紹介します。

「エシカル度」が高いのは、食品・自動車・日用品業界

まず、消費者から見た業界ごとの「エシカル度」の実態を見てみましょう。調査結果から、食品業界、自動車業界、日用品業界が、「エシカル消費に積極的に取り組んでいる」と思われていることが分かりました。一方で、電力・火力・水道といったエネルギー/インフラ業界、金融業界、旅行業界は、現状の取り組み度と消費者の期待度に差があり、今後の取り組みへの期待が大きいことが分かりました。

エシカル消費調査2020

エシカル度が高いと思われている前述の3つの業界は、有機食品、エコカー、環境に優しい洗剤など、身近な商品・サービスが多い業界です。一方で今後の取り組みへの期待度が高い3つの業界は、社会へのインパクトや環境への影響が大きいイメージが先行していることが考えられます。

次に、「実際どのくらい買っているのか?」「買いたいと思っているのか?」というエシカル消費の実態について見てみましょう。調査結果から、購入意向・購入経験ともに最も割合が高いのは食品業界、購入意向の割合はかなり高いものの購入経験が少ないのは電力・火力・水道といったエネルギー/インフラ業界ということが分かりました。

エシカル消費調査2020

日常生活で購入機会が多い食品業界では、「エシカル消費」という言葉の定義をよく知らなくても、無意識のうちにエシカル消費をしている人が多いことがうかがえます。また、調査結果からは、業界ごとに差はあるものの、全般的に「まだ買ったことはないが、買ってみたい」と思う、つまり、エシカルなベネフィットが「買う理由」になり得る消費者が一定数いることが読み取れます。これらのことから、適切に商品・サービスを提供することで、他社に先行してエシカル消費につなげられるといったことが考えられます。

消費者が買いたいエシカルな商品・サービスはどんなもの?

「エシカルな商品・サービスを届けたい!」と一口に言っても、対象となる社会課題はさまざま。そこで、食品、日用品、衣料品、家電、化粧品・美容関連品、自動車、電力・火力・水道、旅行、家具、住宅、金融の11業界において、消費者がエシカル消費を実践したいと思う商品・サービスについて調査しました。

エシカル消費調査2020
全体のトップは「エコ・省エネ家電製品」で、38.8%の人が買ってみたい・興味があると答えました。環境への影響はもちろん、節電・節約など、自分へのメリットが分かりやすいことが理由として考えられます。2位は「再生可能な容器に入った食品」、3位は「再生可能な容器に入った商品」と続きました。最近、メディアなどで「海洋プラスチックごみ」や「脱プラスチック」という言葉を耳にする機会が増えたことや、購入頻度が高い身近な商品であることが理由として考えられます。

次に、購入意向・購入経験ともに最も割合が高い食品業界について見てみます。「再生可能な容器に入った食品」「食品ロス削減につながる食品」「遺伝子組み換えではない食品」が上位。「フェアトレード食品」「動物福祉に配慮した食品」「ヴィーガン・ベジタリアン対応食品」は下位でした。下位の商品は、以前よりは認知されつつあるものの、購入したいと思う人は限定的であるといえます。

エシカル消費調査2020

最後に、衣料品業界の結果も紹介しましょう。先日、クールビズに次ぐキャンペーンの展開を目指して、環境省とアパレル・繊維業界の11社が「ファッションと環境に関する企業コンソーシアム(仮称)」を立ち上げるなど、エシカル消費の観点で話題となっている衣料品業界では、「国産の衣服」「自然由来素材の衣服」「資源節約に配慮した衣服」が上位。

一方で、「地域の伝統技術が使用された衣服」「サステナビリティーをコンセプトとした衣服」「レンタル衣服」が下位となりました。「サステナブルファッション」や「サブスクファッション」という言葉を耳にする機会も増えているものの、実際に購入したいと思うのはムーブメントに敏感な一部の消費者にまだ限られていることがうかがえます。

エシカル消費調査2020



 


 

エシカル消費は、「身近さ」と「メリット」がキーワード

今回の調査から、消費者が実践したいエシカル消費は、「メディアや実際の店頭などで知っていて自分にとって身近なもの」「自分と社会、両方のメリットが理解できるもの」であることが示唆されました。

エシカル消費へのアプローチは、業界によってさまざまな切り口が考えられると思いますが、
・メディアなどで注目度が高まっている社会課題から取り組みをスタートすること
・自社の事業と親和性が高く、消費者にとって納得感のあるプロダクト・コミュニケーションになっていること
・消費者と社会にとってのメリットについて丁寧なコミュニケーションを行うこと
などが、消費者に受け入れられていくための第一歩となるでしょう。

「エシカル」というエッセンスを取り入れたからといって、すぐに大ヒット商品となり、企業イメージが向上する、といったことは難しいかもしれません。しかし、サステナブルな社会の実現に向けて世界がさまざまな取り組みを進める中で、エシカル消費が今後より浸透し、商品・サービスの購入の大きな決め手の一つになっていく可能性があります。企業は早めに取り組みを始めることで、社会貢献につながることに加え、長期的には、「エシカルな企業」として消費者の心をつかむことができるのではないでしょうか。

次回は、本調査から見えてきた消費者の傾向について、クラスター分析の結果を紹介し、企業がエシカル消費に取り組む際の重要なポイントを探ります。

【エシカル消費 意識調査2020の概要】
・対象エリア:日本全国
・対象者条件:10~70代の男女
・サンプル数:性年代別に各125人ずつ、計1000人を人口構成比でウエイトバック集計
・調査手法:インターネット調査
・調査期間:2020年11月18日~25日
・調査機関:電通マクロミルインサイト
※構成比(%)は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合があります。

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