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“顧客体験”を軸に、DXは加速するNo.4

自社DXの遅れに対する懸念を言語化。 “次の一手”の足掛かりに~DX診断活用事例~

2021/08/05

さまざまなチャネルの顧客接点がデジタル化し、“one to oneコミュニケーション”によるデータの活用が広がっています。電通は、これまでに培ってきた“人”基点のマーケティングの知見を生かし、クライアントの顧客接点に関する領域のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を「マーケティングDX」と定義して支援しています。

そのアクションの一つとして電通は、「Dentsu Digital Transformation診断」(以下、DX診断)を2020年9月にリリース 。これは、企業のDX課題をスコアリングして、企業や事業のDXがどのくらい進んでいるか “現在地”を示すものです。診断結果を提示することに加え、要望に応じて課題解決のソリューションも提案しています。 

本記事では、実際にDX診断を受けたロート製薬の事例を紹介。同社のDX戦略デザイン本部・小杉明子氏に、電通 トランスフォーメーション・プロデュース局の三浦旭彦氏がインタビュー。診断を通して見えてきた課題や気づきについて伺います。

Dentsu Digital Transformation診断

診断を受けるプロセスで課題を自覚。新たな視点で自社のDXの“現在地”が考えられる

三浦:「DX診断」はリリース以降、60社を超える企業に問い合わせをいただきました。非常に反響が大きく、私たちとしても、さまざまな業界でDXの必要性が高まっていることを改めて感じています。貴社はなぜDX診断を受けようと考えたのでしょうか?

小杉:ロート製薬は1899年、胃腸薬「胃活」から始まり、目薬や皮膚用薬などのOTC医薬品、スキンケア化粧品、食品などの製造を行ってきました。近年では再生医療事業や食事業など、一人一人が身も心もイキイキとすごせるように幅広い事業を展開しています。効率化のためだけでなく、より顧客を理解して一人一人にフィットする新しい商品やサービス、価値を提供していくためにもDX化は欠かせない施策だと考えています。

「DX診断」を受けた当時、私はマーケティング部門のデジタルチームに所属していました。そこではDXに関するインプットの機会が多くあり、世の中のテクノロジーの進化スピードを肌で感じていました。同時に、「うちの会社はこの改革の波についていけるのだろうか」と、当社の状況とのギャップに不安を覚えていた時期でもありました。そんな中、「DX診断」をご紹介いただき、「良い成績は出ないだろう」という予感がありながらも、受けることにしました。

三浦:「DX診断」は、自社の事業をDX化していかないといけないと漠然とでも思っている全ての方々に一度トライしてほしいと思っています。アンケート形式で、①顧客体験変革、②システム変革、③データ・人材変革、④組織・業務変革の各診断項目に、全体概要を聞く項目を加えた、計32個の質問を用意。企業や事業の現状について選択式で回答していただきます。

Dentsu Digital Transformation診断
診断項目の一部。クラアイントのDXを多角的に分析するため、三つの視点と四つの領域で合計32項目からなる質問を用意。クライアントの回答からDX課題を数値化、診断する。
Dentsu Digital Transformation診断


小杉:診断を受けることによって、質問票に回答している時点から、当社に足りていないところを自覚し始めました。例えば、DX化を全社レベルで進めていこうと思ったときは、やはりトップのコミットメントや対外的な発信も必要、など、気づきが本当に多かったです。診断を受けている途中に「DX戦略デザイン本部」という全社的にDXを推進するための部署が新設され、そこに異動になったので、タイミングとしてもちょうど良かったですね。

三浦:私も、貴社がまさに「これからDXを推進していこう」というタイミングだったからこそ、課題感を強くもっていた印象を受けました。そういったタイミングで、DXにおける“自社の現在地”への理解や発見を提供したいと考えていました。

回答をいただいた時に、小杉さんが細かな部分までしっかりチェックをして考えていただいたことが伝わってきました。診断に利用する質問票への回答は、具体的にどういったプロセスで行いましたか?

小杉:現在、マーケティング&コミュニケーション部のリーダーを務めている者と何度も話し合い、それぞれで考え、また調整をして……ということを繰り返して回答していきました。「DX診断」の質問票に回答していると、必然的に自分たちの状態としっかり向き合うことになります。質問票の内容がいくつもの領域に分解されているため、これまで考えたことのない軸も含め、自社のDX推進がどう動いているのか多彩な視点で考えられました。その経験ができて、本当に良かったと思っています。

質問の中でも、「顧客」の定義に関わる部分がとりわけ難しかったのですが、DX推進において“顧客体験変革”というところをちゃんと考えていける企業にとっては、非常に有効な診断だと感じました。

三浦:ありがとうございます。まさに、小杉さん、ロート製薬の皆さんが真剣に取り組んでくださったからこその気づきではないかと思います。われわれのDX診断の意義は、この診断を受けるプロセスにもあると思っています。われわれのノウハウに基づいて体系立てて整理した診断票に基づき、悩み、考え、議論する、このプロセス自体が大きな提供価値だと思っています。

「自社にとってのDXとは何か?」の重要さに気づいた診断結果

三浦:私たちの「DX診断」は、“人”基点のマーケティングの知見を生かして開発を進めましたので、まさにそこが特色だと考えています。実際の診断結果を見て特に気づきが大きかったところや、小杉さんが強く課題意識を持った部分を教えてください。

小杉:診断結果の全体総評で、まだまだ試行錯誤中のマーケティングDXの現状を「野生の勘型」という形で評され……予想はしていながらも、衝撃を受けました。中でも特に強い課題感を持ったのは「定義」の部分です。質問票には、先ほどの顧客に限らずあらゆる「定義」についての質問が冒頭からたくさん出てきますよね。自社は、特にそこが弱い、という結果が出ました。

自発的にDXを進めている部門もありましたが、全社レベルで、「ロート製薬のDX」とは何か?どこに向かうべきなのか?といった着地点や、重点領域として人やパワー、費用をかけていかなくてはならないポイントが定義されていなかったのは、大きな課題と捉えています。

「野生の勘型」という診断結果が言い当てている通り、システム変革やツール導入をそれぞれに進めている部門はある。しかし、「会社」を主語にしたときに、何をゴールにして進めていくのかが定まっていないから力を集結することもできないし、推進力も上がらないのだと感じました。

三浦:読者の皆さまにご説明させていただきますと、「野生の勘型」とは、名前の通り、ビジョンやありたき姿を社としてあまり(きちんと)設定できていない傾向の企業様に診断結果として出るタイプ名になります。これまでの事例でも、診断やその後のソリューションの提案をさせていただくときに、「自社の“ありたき姿”」がきちんと設定されていると、より強くドライブさせることができました。ですから、ビジョンに関する設問は、特に重要視しています。

小杉:なるほど。当事者としては「DX診断」の結果にとてもショックを受けたのと同時に、進めなくてはいけないという漠然とした危機感がきちんと言語化された感覚でした。

診断結果に基づいて、その診断結果のタイプに多い課題感や、その解決していくべき施策事例を、電通さんがたくさん保有していらっしゃるナレッジ、実績から抜粋して、ご説明いただきました。

Dentsu Digital Transformation診断

三浦: その上で、ご提案させていただきながら、業務のお悩みがあるということをお伺いさせていただきましたね。

小杉:当社は部署も多く、どこから手をつけていったらよいのか悩むところがあって……。DX戦略デザイン本部はまだ人数も少ないため、全社へのドライブのかけ方も手探り状態でした。特に、組織と業務変革部分をさらに突き詰めて考える必要があると感じました。

三浦:そのような、同じようなお悩みを、DX診断を受けていただいた企業様から聞くことがありました。そこで、さらなる価値提供ができるよう開発したのが、組織と業務変革部分を深掘りして診断する「DX診断 for インターナル」(リリースはこちら)です。貴社は、こちらの診断も実施されました。次回は、診断を通して気づかれたことを伺いたいと思います。お楽しみに。

われわれは、多くのお問い合わせにお答えして、電通のDX診断ソリューションをシリーズ化して強化しております。今回ご紹介させていただいた「DX診断」は、広く企業のDX課題を可視化するツールです。さらに、社内組織や業務に特化した、「DX診断 for インターナル」、システム領域に特化した「DX診断 forシステム」も今年リリースしました。ご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

【お問い合わせ先】
マーケティングDX診断チーム info.dx@dentsu.co.jp

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