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【グローバル】加速するサステナビリティ&サーキュラーエコノミーNo.10

For Goodな世界に必要なのは、自他を分けないウェルビーイング

2021/10/26

─最新調査から読み解く!12カ国のサステナブル・ライフスタイルって?② ─


電通グローバル・ビジネス・センターと電通総研は、2021年7月に12カ国(日本、ドイツ、イギリス、アメリカ、中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)を対象に「サステナブル・ライフスタイル意識調査2021」を共同で実施しました。

調査結果を読み解く3回シリーズの2回目はウェブマガジンIDEAS FOR GOODを創刊した加藤佑氏と編集部の相馬素美氏とのオンライン対談形式でお届けします。聞き手は、電通グローバル・ビジネス・センターの田中理絵氏と電通総研の山﨑聖子氏です。


加藤佑氏(ハーチ  代表取締役)
 加藤 佑氏(ハーチ  代表取締役)
2015年 ハーチ を創業、世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン「IDEAS FOR GOOD」を創刊。
2020年に第1回ジャーナリズムXアワード受賞。
 
 相馬素美氏(ハーチ)
 相馬 素美氏(ハーチ)
WEBマガジン「IDEAS FOR GOOD」、「Circular Yokohama」編集部(2021年入社のZ世代)

<目次>  
ASEANの人々の環境関連の消費と社会活動の意識が高い理由は?
サーキュラー・エコノミーと循環型社会、自分ごと化しやすい用語は?
炭素は置き場所を変えて、カーボンニュートラルへ
サステナビリティの次にくる用語は?
Z世代が環境関連の価格プレミアムを受け入れるのはなぜ?
Z世代で社会活動とボランティアが盛んになった理由は?
社会が未熟であることが助け合いと信頼を生む?

ASEANの人々の環境関連の消費と社会活動の意識が高い理由は? 

──まずは、環境関連の消費と社会活動(寄付や署名など)の二軸で見てみたいと思います。どちらも日本とシンガポール以外のアジアが活発で、ドイツ・イギリス・アメリカでどちらにも無関心という割合が3-4割と高めでした。もちろん「ASEAN・中国・インドの人々は意識調査でポジティブな回答傾向があり、調査対象者が都市部の年収も意識も高い層に偏りがちなため、実体よりスコアがあがりやすい」という回答特性の影響もあるでしょう。しかし、どうもそれだけでもなさそうなんです。

環境関連の消費と社会活動

例えば6月に発表された2021年のWorld Giving Index (寄付、ボランティア、他人の手助けを1カ月以内にどれだけしたか)を見ても、インドネシアが1位で、日本は最下位の114位でした。そしてスコアが大きく上がった国に中国・インド・ベトナム、反対に下がった国にアメリカやドイツが入っていました。

日本は、西欧からはルール作りや商品開発を学び、アジアからは市民の相互扶助意識を高めるヒントを得られるかもしれません。加藤さんは、これらの調査の結果をどうご覧になられましたか?

加藤:まったく違和感はありませんでした。インドネシア、フィリピン、ベトナムは環境関連への意識は高いだろうと予想していました。現地NGOとやりとりし、ツアーで現地を訪れる機会もありますが、特に若い世代のソーシャル意識は高いと感じています。

これらの国では、目の前に環境課題・社会課題が見えています。道にたくさんのゴミが落ちており、ウェイスト・ピッカー(発展途上国において廃棄物の最終処分場などで有価物を収集する人々)もいます。インドネシアの社会起業家から「政府主導ではなかなか環境は変わらないから、外の先進国から言ってもらいたい。インドネシアの河川がゴミで埋まっている情報を英語で伝えてほしい」と聞いたこともあります。FacebookやInstagramの利用も進んでおり、グローバルな潮流も意識して活動していると感じます。

──先進的な動きをしているイギリスとドイツで消費と社会活動が低いことはどう考えたらいいでしょう?

加藤:日本もドイツもイギリスも環境対策が進んでおり、すでにシステム化されています。人々が無関心でも、道にゴミはあまり落ちていません。焼却そのものの是非はありますが、日本のゴミ回収や焼却システムは世界の中でも優れています。だから、逆に捨てることに抵抗がなくなり、自分がなんとかしなくてはという消費や社会活動が低く出た可能性があります。

また、格差や人種差別が問題となっているアメリカでは社会問題に目がいくという調査結果もありましたが(前回参照)、やはり人は「目の前に見えているもの」に関心がいくのだなと感じました。

サーキュラー・エコノミーと循環型社会、自分ごと化しやすい用語は?

サーキュラー・エコノミー浸透度

加藤:この用語認知ですが、質問する時に「サーキュラー・エコノミー」と聞いたか「循環型経済」と聞いたかで変わってくると思うのですが、中国ではどのように聞いたのでしょうか?

──中国では中国語で、日本ではカタカナで聞きました。他の国も現地語で聴取しています。

加藤:中国は世界に先駆けてサーキュラー・エコノミーを法制化した(2008年「循環経済促進法」公布)こともあるでしょうが、設問を漢字で聞くのでなじみやすいのかもしれません。日本人も「循環」の方がすっと入ってくるので。

ちなみに、ヨーロッパでは「Circular Economy」から「Circular Society」へシフトしようという議論もあります。循環の概念を資源循環や経済の話に閉じるのではなく、社会全体に開いていくために、「Economy」から「Society」だと。そして日本を振り返ると、環境省では最初から「循環型社会」という用語を使っていました。

SDGsのウェディングケーキ(※1)でも一番大きいのは環境で、社会、経済の順となり、経済と環境の間には「社会」の話がある。環境と経済だけでなく社会も含めて包括的に循環を捉えているという点で、「サーキュラー・エコノミー」より、日本の「循環型社会」の方が概念的に進んでいたかもしれません。

SDGsも含めて横文字の自分ごと化はなかなか難しいですが、日本人になじみのある「循環」という概念は、自治体や市民の間でもすっと入っていくと感じます。「サーキュラー・エコノミー」という言葉としての響きの良さとどちらがよいのかはメディアとしても考えていかないといけないですね。

SDGsのウェディングケーキ
※1=SDGsウェディングケーキ
SDGsの17の目標を「ウェディングケーキ」によって説明したモデル。生物圏(Biosphere)の基盤があることで、私たち人類社会、そして経済が成り立っていることを表している。

炭素は置き場所を変えて、カーボンニュートラルへ

──確かに10年前も、循環型社会(Recycling Society)という用語を使って調査をしました。ちなみにカーボンニュートラルより、脱炭素という用語が日本で浸透していることはどう考えますか?他の国では、ゼロエミッションという用語で知られています。浸透する用語が違うことで推進意識が変わることはあるのでしょうか。

加藤:ゼロエミッションとカーボンニュートラルはよいと思いますが、脱炭素は少しリスクがあると感じます。炭素が悪者に見えるという意味で。

「Carbon is not a problem, the problem is carbon in the wrong place.(炭素が問題なのではなく、問題なのは炭素が間違った場所にあること)」

という言葉があります。炭素の循環そのものは大事で、炭素がなければ私たち人間を含む有機物は生きられません。問題は、炭素の場所です。本来は地中にあるべきだった炭素が、大気中に放出されてしまっていることが問題だという考え方です。「炭素=悪」ではなく、そうした循環の概念を正確に伝えられるかが大事ですね。脱プラも同じです、プラスチック全てが悪に思えて排除に向かってしまう。使う用語が意識や行動に影響してしまう。ただ、「脱炭素」「脱プラ」という分かりやすさが人々の背中を押すプラスの面もありますので、一概にそれがよくないとも言えません。

カーボンニュートラル認知度ゼロエミッション認知率脱炭素認知率



 

 

サステナビリティの次にくる用語は?

加藤:用語の話でいうと、「Sustainable(持続可能)ではなく、Responsible(責任)と捉えてコミットメントを高めるべき」という考えもあります。「サステナブル」は解釈次第で正解もないため、ウォッシュ(取り組んでいるように見えて、実態が伴っていないこと)につながりやすいリスクがあります。「レスポンシブル」は姿勢であり、より強い意志を感じます。しかし、今は日本でもようやくサステナビリティという用語が浸透してきているので、用語自体は否定しない方がいいと思っています。

──SDGsという用語もそれに似た論点があります。掛け声だけで、実態が伴わないリスクは確かにあるのですが、基準を高くしすぎると、ついてこれない企業が増えてしまう。裾野を広げて「自分たちにも何かできることがある」と幅を持たせた方が実態としては大きく進むのではないかと考えています。ところで、ちらほら「サステナブルの後にくる用語」の問題も出てきていますが、まだ定着してないですよね。どこに落ち着くと思いますか?

加藤:ヨーロッパの動きを見ているとウェルビーイングが大きなテーマですね。ノルウェー、フィンランド、アイスランド、ニュージーランド、スコットランドなどは「wellbeing economy」という用語を使っています。

──日本でもウェルビーイング経営やGDPに代わるGDW (Gross Domestic Well-being)など、ウェルビーイングが企業や社会の究極目標として注目されるようになってきましたね。

Z世代が環境関連の価格プレミアムを受け入れるのはなぜ?

──環境負荷の低い商品の価格がいくらまでなら許容できるかをカテゴリごとに聞いています。特に18-29歳で「通信費」「ファッション」「食品・飲料」では高価格が許容されていました。若い人が価格が高くてもサステナブルな方を選びたいと考えるのは、それが格好いいという原動力があるためでしょうか?

相馬:そういった側面はもちろんあると思いますが、一方で、安さを重視する人も多いです。親世代から一部のぜいたく品をのぞいて、「安いことはいいことだ」という価値観を受け継いでいる人も多く、日本企業も「安くする努力」をいい商品・サービスの条件としてきましたし、「安くあるべき」という思い込みは若い人にも根強いです。

ただ「価格が安いってどういうことなのか」「なぜ価格が高くなっているのかを知っているか」と背景情報をSNSで見つけるという情報行動をとる人がいて、その意識が高い人がSNSで見える化することで、全体が底上げされているのかもしれません。

環境負荷の低い商品の価格がいくらまでなら許容できるか

加藤: 20代と60代が高いのですが、可処分所得の問題もあるのではないでしょうか。20代は払うといっても自分ではない人が払っていたり、元々の購入単価が安かったり、子育て世代より経済に関する感覚がシビアではないという可能性もあります。

──実はドイツ、アメリカ、イギリスは、「食品・飲料」に関してみると、30代のミレニアルズから価格許容度がグッと高まり、44歳以下から高価格が許容されています。日本だけU字カーブ(20代と60代が高く、30-50代が低い)なのです。ちなみに、幸せや希望の意識も聞いていますが、そこにもU字カーブが表れています。余力には経済力・体力・精神力などありますが、環境によい消費への意欲については、可処分所得だけでなく、精神的な余力の影響も強いと見ています。

価格許容度


 

Z世代で社会活動とボランティアが盛んになった理由は?

──社会活動のリーダーが多いのは18-29歳で、冒頭に見たようにボランティア参加などの社会活動が最下位の日本でも、18-29歳だけボランティアきっかけでの社会課題関心が高い。これは東日本大震災以降からボランティアが大学単位認定された影響もあると考えています。その後も大学生ではボランティアは当たり前なのでしょうか?

社会活動への関与
社会活動に関心を持つきっかけ

相馬:こちらも、興味を持つかどうかは個人差があると思いますが、学生支援課でボランティアを募集する窓口があったり、実施した後にSNSで投稿する人も多いので、ボランティアがより身近なものになっているとは思います。「社会的意義のあるところに就職したい」と考える学生も多数派なので、そういう人たちが学生時代にボランティアをしているのは自然な流れと感じます。

──ここ3年ほど、温暖化の影響で日本も大規模水害が多くなり、自然災害が身近な問題として認識されるようになりました。災害のたびに大学生のボランティアや寄付団体ができるので動きは近年も活発でしょうね。また海外では昔から、ボランティア必修という中学校からの教育もあるようです。早くから教育として根付かせていくことも効果がありそうです。

社会が未熟であることが助け合いと信頼を生む?

──最後に、コロナもあって助け合おうとアジアの国々で公的意義が優先される中で、日本だけが逆に私的満足が優先に変化しました。また全体で見ても経済先進国は私的満足優先でした(前回参照)。仮説としては「経済的な安定を得ると、それを失わないよう保守的になる」あるいは「成熟した国はこの先変わることを期待できず、人口構成上若い人が多く経済成長しているアジアは未来が良くなると信じて団結できる」のではと考えているのですが、他の要因はあるでしょうか。

加藤:これはびっくりしました。まず日本については、パブリックへの信頼が低いので、守ってくれない不安で自分でなんとかしなきゃというところが意識として出てきていると思います。

──経済的成功に向かうと利己的になることが見えていても、アジアでみんなが夢中になるのは経済発展というのがデータにも出ています。そして日本でもAIに仕事を取られてしまう経済不安は想像できるのに、7人に1人が貧困ということは想像できていません。

本来は一律で税金を取るより、自主的に気前よく他者に寛容である方が、寄付をする方もされる方も幸せだと思うのですが、そんなFor Goodな社会を作る鍵になるのはどんなことでしょうか?それは将来の期待値でしょうか、一人一人の希望や想像力の底上げなのでしょうか。

加藤:国としての長期ビジョンが大きいと思っています。日本では、経済成長をしたいのか、それとも成長以外の豊かさを指標とし、ウェルビーイングを重視したいのかが分かりません。SDGsで2030年、カーボンニュートラル宣言で2050年までのビジョンが出ると、どれだけ多くの企業がやる気になるのかが見えましたし、長期的ビジョンがあると安心して投資もできます。ヨーロッパは30年先までビジョンを示すから、社会全体としてそちらに向かっておけば大丈夫という形で信頼が生まれるのではないでしょうか。実際にその方針がよいか悪いかよりも、ビジョンがあることでトラストが生まれ、それが人々の安心や希望につながるのだと思います。

相馬:ヨーロッパ諸国の多くは、競争からこぼれた人のための福祉のシステムや社会保障が充実している傾向にあります。 For Goodな社会を作るには、日本もそういった国家を参考に、社会福祉への予算の割き方を見直す必要があると思います。また、個人としては、まずは「自分のことを大切にする」ことが必要だと思います。それが、他人を受け入れることにつながります。「IDEAS FOR GOOD」はイシューよりソリューションというコンセプトなので、ソリューションにつながるアイデアが生まれやすくなる場を作り発信していきたいです。

──実際の経済成長だけでなく意識の問題は大きそうですね。精神論という意味ではなく、アジア的な、ロジックで割り切らない部分、例えば「自他を分けずにつながりを感じよう」「判断しようとせず、失敗してもいい」とする、思考優位でないレジリエンス(変化への適応能力)を大事にするウェルビーイングには、個人単位でも国単位でもブレイクスルーになる鍵がありそうです。この調査は、実は国と個人のウェルビーイングについても聞いているのですが、まだ分析しきれていないので、今後この観点からも、分析を深めたいと思います。本日はありがとうございました。

【調査概要】
タイトル:「サステナブル・ライフスタイル意識調査2021」 
調査手法:インターネット調査 
実施主体:株式会社電通、電通総研 
調査時期:2021年7月8日~20日 
対象国:12カ国(日本、ドイツ、イギリス、アメリカ、中国、インド 、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)
サンプル数:4,800人
対象条件:18~69歳男女500人、ASEAN 6カ国は18~44歳男女300人
日本500人、ドイツ500人、イギリス500人、アメリカ500人、中国500人、インド500人、
インドネシア300人、マレーシア300人、フィリピン300人、シンガポール300人、
タイ300人、ベトナム300人
 
※構成比(%)は小数点以下第2位で四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合があります。
 
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