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【グローバル】加速するサステナビリティ&サーキュラーエコノミーNo.12

エシカル消費をリードする日本の若年層。その消費と価値観に迫る!

2021/11/19

─最新調査から読み解く!12カ国のサステナブル・ライフスタイルって?③─

電通グローバル・ビジネス・センターと電通総研は、2021年7月、12カ国(日本、ドイツ、イギリス、アメリカ、中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)を対象に「サステナブル・ライフスタイル意識調査2021」を共同で実施しました。今回は電通グローバル・ビジネス・センターの高橋ゆり氏と電通総研の馬籠太郎氏が、日本の若年層(本記事では18~29歳の調査対象者)の消費と価値観に迫ります。

主な国における若年層の特徴
※社会活動の高関与者の定義はこちらをご覧ください。
<目次>
日本・欧米の若年層に共通する「人種差別」に対する課題感
若年層で高い「エシカル消費」マインド
若年層から「選ばれる企業」と「選ばれない企業」
若年層がリードする新しい消費トレンド
 

日本・欧米の若年層に共通する「人種差別」に対する課題感

冒頭の表に示したように、日本の若年層に集計対象を絞った場合、国全体計では上位に上がってこなかった「人種差別」が一番大きな関心事項という結果になりました。他の国を見ると、同じ傾向があったのはドイツ、イギリスの欧米圏でした。アメリカは、全体でも上位でしたが、若年層では一番大きな関心がある社会課題になりました。ちなみにアジア圏で「人種差別」が上位になるのは日本の若年層だけの特徴です。

関心がある社会課題

上のグラフは、「人種差別」と「経済停滞」について性別、年齢別に関心があると答えた割合を比較したものです。若年層では「人種差別」に関心があると答えた割合が、「経済停滞」に関心があると答えた割合より約30ポイント多く、「経済停滞」に関心を示した若者は18%にとどまりました。

日本において、なぜこんなにも「人種差別」が若年層の関心を集めているのでしょう。理由の一つとして考えられるのは“Black Lives Matter”や“Stop Asian Hate”など、海外のムーブメントを、SNSでリアルタイムに知る機会があることです。「社会課題に関心を持つきっかけ」として若年層の上位に上がるのは、どの国でもSNSであり、重要な役割を果たしています。

他の世代よりもグローバルな価値観が早く浸透したため、数年前までは大きく問題視されなかった表現や言動が若年層を中心に日本でも急速に見直されるようになり、「人種差別」に対する感度が高まったのではないでしょうか。

特にテニスの大坂なおみさんが試合出場時にマスクを通して思いを訴えた出来事は世界中でSNSの話題となり、日本の若年層が「人種差別」の問題を自分ゴトとして捉えるきっかけとなりました。「サステナビリティ」に対するイメージとしても、日本の若年層が挙げたワードの3位に「多様性」がランクインしました。

では「経済停滞」についてあまり関心がない理由は何でしょうか。当然、若年層は学生が多いためそもそも経済に触れる機会が少ない、という理由があげられます。加えて物心ついた頃から景気低迷や不況が続いた若年層にとって、経済の停滞は当たり前の日常であり、目の前にさし迫る社会課題とは意識されていないように思います。逆に40代以降で高い関心事となるのは、経済成長の勢いのあった日本と今の違いが分かり、将来に不安を感じているからかもしれません。

若年層で高い「エシカル消費」マインド

では、消費という観点では若年層の関心はどこに向かっているのでしょうか。

エシカル消費意識の高い若年層

上のグラフは「商品購買時に環境への負荷を意識するか」について、若年層と全世代の日本人の回答を比較したものです。若年層は日本平均と比べて、環境に配慮したエシカルな消費を心がけている人の割合が高いことが分かります。

若年層から「選ばれる企業」と「選ばれない企業」

商品を販売している会社の活動や倫理観を考慮

次に、どのような企業の商品が若年層に支持されているのかを見てみます。上のグラフが示すように、日本の若年層は商品の購買時に、企業の社会課題への取り組みや倫理観を意識しています。興味深いことに、60代でも関心が高いため、U字カーブを描いています。

商品を購入する際に価格よりも環境を考慮

同じく、「価格が高くても、トレーサビリティがわかる商品を選ぶ」や、「気候変動の影響減のため、肉よりも野菜中心のメニューを選ぶ」、という項目においてもこのU字カーブが現れました。

日本の若年層においては、「企業の倫理観に問題がある」「商品が気候変動などへ悪い影響を与える可能性がある」と考えて商品の購入を敬遠する人の割合が他の年代より高くなっているのかもしれません。30〜50代でエシカル消費意欲が低いのは、家族や仕事についての責任が増し、精神的、経済的な余裕が他の世代に比べて少ない、という理由が挙げられます。一方、60歳以上は自分の価値観を消費行動に取り込む余裕があり、価格だけでなくその商品が世の中に与える影響にまで意識が及んでいるのではないかと考えられます。

若年層は好きなインフルエンサーや身近な友達がどういう行動をとっているかをSNSで毎日のように知ろうとしています。また受信だけでなく、いつでも自分のライフスタイルや意見を発信できる環境にいます。SNSが若年層の価値観に大きな影響を与える傾向は日本だけでなく各国で見られます。価値観や行動が年齢を重ねても変わらないとすれば、社会や経済の将来像を左右することになると思われます。

環境プレミアムが許容できる層は6割
※環境プレミアム=環境への負荷を低くするために他の商品より余分に上乗せされる金額

最後に、「エシカル消費」マインドがビジネスに与える影響について考察します。上の図はカテゴリごとに、「環境負荷を半減する商品開発に企業がかけたコストが現行商品の2倍だった場合、どの程度購入価格が上がることを許容できますか」と聴取した結果です。商品カテゴリの差は大きくはなく、およそ3割程度は大幅な値上げも許容できると回答しています。

若年層がリードする新しい消費トレンド

今回の調査から、若年層が日本における「エシカル消費」マインドをリードしていることが分かりました。若年層を中心に地球環境問題やサステナビリティについての意識が高まりを見せていることは世界共通のトレンドです。

日本では、人口に占める若年層の割合が低く、若年層が消費や産業に与えるボリュームインパクトは軽視されがちです。しかし、企業にとって、若年層に確かに芽生えている「エシカル消費」マインドを育てていくような商品・サービスの開発やマーケティングが重要であることは間違いないように思います。

「いいものをより安く」「技術革新によって同じ値段でさらに便利に」といった価値の提供だけでなく、これからは「社会的価値があるから価格が高い」というような説明をすることも、若年層のファンの獲得や定着につながるのではないでしょうか。若年層がリードするサステナブル・ライフスタイルがトリガーとなり、日本に新しい消費文化や経済の活力が生まれてくることを期待します。

【調査概要】
タイトル:「サステナブル・ライフスタイル意識調査2021」
調査手法:インターネット調査
実施主体:株式会社電通、電通総研
調査時期:2021年7月8日~20日
対象国:12カ国(日本、ドイツ、イギリス、アメリカ、中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)
サンプル数:4,800人
対象条件:18~69歳男女500人、ASEAN6カ国は18~44歳男女300人
日本500人、ドイツ500人、イギリス500人、アメリカ500人、中国500人、インド500人、
インドネシア300人、マレーシア300人、フィリピン300人、シンガポール300人、
タイ300人、ベトナム300人
 
※構成比(%)は小数点以下第2位で四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合があります。
 
詳細はこちら

 

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