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電通BX/DXウェビナー2021「Disruptive & Sustainableな生活者視点の事業変革」No.1

【電通BXウェビナー】
大きな社会の変わり目に求められる、破壊的変革とは?

2021/11/08

社会が大きな変革期を迎える中、企業の在り方そのものや、顕在化していない課題に目を向け、ビッグアイデアとともに非連続な変革を実現可能なものにするために必要なことは?

電通グループならではの「BX(ビジネストランスフォーメーション)」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」のアプローチを、各分野のプロフェッショナルや外部ゲストを交えてさまざまな論点から考察した、ウェビナーの様子をリポートします。

本記事では「BX」パートより、4つのプログラムをダイジェストで紹介します。

Disruptive(破壊的)な変革の設計図をどう描くか

山原氏

登壇者は、企業の中期経営戦略/事業戦略の策定、新規事業のアイディエーションと実行プラン作成などを手がける電通ビジネスデザインスクエアの山原新悟氏。電通ビジネスデザインスクエアの共創型の変革手法「Disruptive Approach」に基づき、企業の内部からDisruptive(破壊的)な変革を起こすための設計図の描き方を紹介しました。

Disruptiveな変革の設計図では、「3つのP」を軸に考えることが重要です。

・Purpose:目指すべき企業像の再規定とゴール策定
・Picture:ビジョンの解像度を高めるための未来の事業構想図作成
・Process:未来の事業構想の実現に向けた、具体的なシナリオと実行プランの作成

これらを軸に設計図を描く上で、ベースに置くべきなのが「Value」(顧客価値)の視点です。「“今更Value?”と思う方もいるかもしれませんが、近年あらゆる企業でDXが推進されると同時に、“何のためにDXをやるのか?”という目的が問われるようになり、改めて“われわれはどんな価値を提供すべきなのか”を考え直す経営者が増えているのです」と山原氏。「Value:お客さまが享受する価値」という観点を最初に考える、「Value Driven」(顧客価値起点)で変革の設計図を描くことが欠かせないと言います。

山原氏は「3つのP」それぞれの特徴を述べたのち、Valueを生み出し変革を起こす「人の力」を引き出す2つのポイントについて語りました。一つは、「内発的動機を高める」こと。社内で変革や新しいことにチャレンジしたい人を見つけ、その思いをモチベートする仕組みをつくることが重要になります。

もう一つが、「“超法規的”人事・組織対応」。大企業においてはしばしば、現行の制度が従来の本業に「最適化されすぎていて」、Disruptiveな変革を生み出しにくいプロセスになっているケースも多く見られます。新領域の事業創造においては、大胆な人事制度や評価制度を導入して、新しい仕組みを構築することが必要になります。

最後に、山原氏は「変革の実行レバーを引き続けること」の重要性を述べました。

「変革を推進する上では、現行の組織文化・制度などとコンフリクトを生むことがしばしばあります。その企業が大切にしている思想・哲学は大事にしながら、その企業独自の変革のゴール像とその道筋を、社内横断でつくることが大切なのです」(山原氏)

BXに貢献するクリエイティブとデザイン

森氏 廣瀬氏

続いて紹介するのは、BXCC(ビジネストランスフォーメーション・クリエーティブ・センター)のクリエーティブディレクター/事業開発ディレクターの森直樹氏と、クリエーティブディレクター兼コピーライターの廣瀬大氏によるセッション。テーマは、「BXにクリエイティブはどのような価値を提供するのか?クリエイティブの期待される役割は何か?」です。

BXCCは、BXに電通ならではのクリエイティブのリソースを提供する役割を持ったチーム。コピーライター、アートディレクター、CMプランナーといったクリエイターと、ビジネスコンサルタントやUXデザイナー、エンジニアといった新しい人材とのコラボレーションで価値を創造することを目指しています。

そもそも、電通のクリエイティブチームは何をしているのか?クリエイティブに対する考え方とBXCCにおけるクリエイターの役割を廣瀬氏が紹介しました。

廣瀬氏は大前提として、人は心が動いたときに物事を記憶し、行動が生まれるため、ビジネスにおいても「人の心を動かす」ことが欠かせない、と述べました。

では、どういうときに人は心が動くのか?それは、物事の“本質”に触れたときです。クリエイターの役割は、商品と世の中の人の重なり合う部分の“本質”を見つけ、そこから、人の心を動かすアイデアを生み、課題解決に導くことです。しかし、「人の心を動かすアイデアは、実はロジックの積み上げではなかなか出てきません。なぜなら、アイデアには“驚き”が必要だからです」と廣瀬氏。

特に、積み上げ型の思考では解決できない課題が多い現代に求められるのは、“本質”を発見し、“驚き”を生み出し、クリエイティブジャンプする力です。「BXの領域でも、人の感覚に働きかけ、課題を解決するアイデアが入る。ロジカルを土台に考え、アイデアで飛躍する。それが、私たちクリエイターがBX領域で発揮できる力です」と廣瀬氏は述べました。

後半、Q&A形式のトークセッションが行われたので、その一部をお届けします。

Q. コピーライターが事業変革で果たす役割とは?

廣瀬:改めて感じるのは、事業戦略を考える中で、どうしてもパッションや遊び心、人が持っているエネルギーが書類から抜けてしまうことがあります。そこに対して、コピーライターがステートメントやスローガンを書くとか、最初に広告表現を書いて逆算して考えるとか、そのような形でクリエイティブが入ることで、体温のある戦略を描けるのではないでしょうか。

森:ビジネスコンサルタントの戦略アプローチは、3〜5年後のゴールを羅針盤にしてプロジェクトを進めますが、クリエイターは、情緒的に気持ちが盛り上がるような共通目線のゴールを示してくれますよね。言われてみれば、確かに、“冷たい文章”にクリエイティブが入ることでアクションにつながるモチベーションが生まれるシーンは、何度も見てきました。

Q. クリエイティブの表現物はなぜ人の心を動かすのか?ビジネスで活用できるのか?

廣瀬:やはり、“驚き”と“本質”が入っているからではないでしょうか。ビジネスは人の心を動かすことで物事が動くので、その役割においてビジネスで活用できると思います。

Q. クリエイターは、どのような訓練をしているのか?

廣瀬:とにかく大量の感動を体にインプットするようにしています。地道にたくさんアイデアをストックすることに尽きると思います。

森:クリエイターは、インプットとアウトプットをする訓練を日々積み重ねていますよね。この発想力は、BXなどのロジカルな領域でも役立つと思っています。新しいことを創造するとき、ロジカルな積み上げだけではアイデアに限界があり、かといって、アイデアだけだとフィジビリティ(実現可能性)がないケースもあります。ロジカルとアイデアのスペシャリストが一緒にワークすることで、2乗にも3乗にも価値が生まれると思います。

カーボンニュートラル時代に、いかに事業機会を見いだし企業価値を高めるか?

野邊氏 山原氏 渕氏

続いて登壇したのは、電通ビジネスデザインスクエアの山原新悟氏と渕暁彦氏。戦略コンサルティングファームのドリームインキュベータ・野邊義博氏を迎え、カーボンニュートラル時代の事業変革について語りました。

2021年5月より、ドリームインキュベータと電通は業務提携を行い、8月にSustainable Business Transformationチームが発足しました。これは2社の強みを掛け合わせて、サステナビリティ経営時代におけるクライアント事業のトップライン拡張や市場創造を支援することを目的としたチームです。

カーボンニュートラルが経営アジェンダになった今、この大きな潮流をどのように追い風に変えていくかが、企業にとって大きな課題なのです。

野邊氏は、「コロナによる社会変化も大きなインパクトがありましたが、カーボンニュートラルはそれ以上に、さまざまな企業に対応・適応が求められる環境変化です」と言います。

渕氏は、「本質を突き詰めていくと、事業運営の条件が厳しくなる」と解説した上で、単にカーボンニュートラルをうたっても独自の価値にはならず、再生可能エネルギーへの代替や資源循環コストを上回る価値創造をすることが求められる難易度の高い課題だからこそ、経営課題として手探りでも早めに取り組まなければならないと、企業にとっての必要性に言及しました。

山原氏は、「これまで、企業の成長とサステナビリティは反比例の関係になるとすら考えられていましたが、今後は、両立させるための新たな機会発見とValue創出がポイントになります」と述べています。

では、どうDisruptionを起こしていけばいいのでしょうか?ポイントは、「機会の発見」です。従来の事業サイクルを維持しながらカーボンニュートラルを変数として加えるだけでは、コストアップなどのリスクにしかなりません。そこで、現行の事業サイクルに非連続の「機会」を見つけ出し、カーボンニュートラルを契機とした新規事業創造を行うことが重要なのです。

ただ、実際には「環境投資は短期間で回収できない」「前例がない=需要がないから意思決定できない」といった“壁”が立ちはだかり、そこに苦しんでいる企業の方も多いと、渕氏は実践知をもとに解説しています。

野邊氏も、「本当にクリティカルな課題だと思います。ただ、やはり、きれいに解決できるソリューションがあるわけではなく、答えがないこと、前例がないことに挑むフェーズなので、私たちもクライアントの皆さまと一緒に試行錯誤しながら、少しずつ前進させていくしかないと考えています」とコメント。

山原氏は、「実際に、私たちは前例がない領域のご相談をいただく機会が多いです。新しいことを事業に取り入れるだけでも大変ですが、生活者側の意識改革や需要創造を考慮するなど、あらゆる局面でゲームチェンジに挑まなければなりません。簡単ではありませんが、そこを乗り越えれば大きな市場が開ける可能性があることも事実です」と重ねました。

「まさに、正解がない難しい課題をどう解いていくのかがポイントです。私たちは企業内部にある不確実性と市場の不確実性を二分し、双方を同期させながらこまめに意思決定を行い、事業機会と事業戦略をアップデートするプロセスを構築しています。事業課題やフェーズに応じた柔軟なプロジェクトデザインができますので、ぜひご相談いただけるとうれしいです」(渕氏)

「ブランドビジョンコンサルティング」 20年先も社会から必要とされる会社であり続けるために

畑江氏

最後に紹介するのは、電通コンサルティングの畑江尚郎氏による講演です。電通コンサルティングは電通グループが出資するコンサルティングファーム。電通が持つ生活者インサイトやクリエイティビティ、実行力などの強みと、コンサル業ならではの客観性や分析力、事業計画化などのスキルを掛け合わせながら、クライアントの事業成長や価値提供を支援しています。

本セッションのテーマ「ブランドビジョンコンサルティング」は、電通コンサルティングのソリューションの一つで、畑江氏は「まさに電通とコンサル業の交点を象徴するメニューであり、Disruptiveな事業変革にもふさわしい」と言います。

不要不急の外出の自粛が叫ばれるコロナ禍を機に、生活者は身の回りの商品・サービスが本当に必要なのかをシビアにジャッジするようになりました。その結果、コロナ禍以前から着目されていた「パーパス(存在意義)」の重要性が急速に高まっています。

「ブランドビジョンコンサルティング」は、クライアントのパーパスを最上位概念として目標に掲げながら、お題目に終わらせることなく、実現への道筋を具体的に導出し、伴走するもの。具体的には、以下の3つのプロセスでアウトプットを創出します。

1. 「かなえたい未来」を描き出す存在意義の規定
重要なのは、どの企業でも言える「客観正義」ではなく、自分たちにしかできない「主観正義」を確認すること。そのためには、「社会や顧客が何を望んでいるか」からではなく、「自分たちが事業を通じてどんな未来をかなえたいのか」から考える、ことです。そして、そこに向かって社会や顧客をリードしていく。「“こうせねばならぬ”を強制してもワークしないケースがほとんど。人を動かすのは主体的でポジティブな使命感や欲求です。私たちはファシリテーションによってクライアントの経営層や社員の中にある意思としての主観正義やかなえたい未来を引き出し、社員間で齟齬があればすり合わせし、さらに、導き出されたビジョンを社内外に効力を発揮するレベルの言葉で規定します」と畑江氏。

2. 「自らを何屋/何者と称するのか?」
「クライアントからは、“パーパスやビジョンは既にあるけれど、それをどう実現するのかが難しい”というご相談も多い。確かに具体化は、目標設定より難しい側面もあります」と畑江氏は述べます。そしてその難しさは、「自分たちはどんな未来をかなえたいのか?」という抽象度の高い問いと、「明日、何から手を付けるのか?」という具体的な現業との間にある大きなギャップからきているとして、「この差を埋めるためには、“私たちの事業はどのような市場で(Where)、どんな役割を担う存在になるのか(Who)”を問い直すことが大切です。“かなえたい未来”実現の大方針として、“何屋/何者”を規定できれば、そこから、さらにそれを実現するための方法論として、中計や事業ポートフォリオを具体的に議論しやすくなるでしょう」と畑江氏。

3. 「明日の業務」に落とし込む具体化/具現化
いよいよ、中計や事業ポートフォリオ、新商品、新規事業などの具体的な方法論の段階です。「この具体化フェーズも、電通のアイデア・発想力と、コンサルの事業性検証・計画化の力の掛け合わせが生きる部分だと思います」と畑江氏。具体化/具現化のフェーズでは、クライアントのニーズやお悩みに応じて、全社的な事業ポートフォリオや人事・組織の機能戦略から、個別の新商品/サービスの開発まで、幅広いメニューを用意しているのも特徴です。電通TFP局と連携し、濱口秀司顧問の方法論を活用することも、今後精力的に進めていきたいと畑江氏は構想しています。

このように、「ブランドビジョンコンサルティング」では、3つのプロセスを通して、他の企業にはないクライアント固有の成長戦略導出を支援します。畑江氏は、「電通の強みとコンサルの素養を掛け合わせ、20年先も社会から必要とされる会社になるためのお手伝いをさせていただきます。ぜひご活用ください」と締めくくりました。

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