セカイメガネNo.3
善意があるから、創造がある
2013/06/05
クリエーティビティーによって顧客に製品を買いたいと思わせられるなら、クリエーティビティーによって人々に良い行動をしようと働き掛けることもきっとできるでしょう。
クリエーティビティーの力をよく知るタイのクリエーティブ・ディレクター(CD)たちの善意によって多くの公共広告が制作されています。世の中のためになる行動を促し、そうでない行動を改め、社会に取り残されている恵まれない人々の手助けをしています。
公共広告に創造的視点を取り入れると、退屈そうなテーマでも世の中で取り上げられ話題になります。人々が啓発されて参加したり、口コミでメッセージを広げるのです。
こうしたキャンペーンは、これまでは伝統的なメディアを使って制作されてきました。しかし、デジタル時代に入ると、話題づくりやブランドとの絆の強化にソーシャルネットワークが重要な手段になってきました。バイラル動画やフェイスブックのアプリケーション、バナーなどを使った公共広告が増えてきたのです。
興味深い事例を二つご紹介しましょう。タイ健康促進財団が大人たちに喫煙の害を訴えるバイラル動画「Smoking Kid」です。ユーチューブで60万回以上視聴されています。無頓着にたばこを吸う大人たちに2人の子どもが近づき「火を貸してくれる?」と自分のたばこを差し出します。驚いて喫煙をやめさせようとする大人たちにメッセージが渡されます。「僕たちの健康を心配するならどうして自分の体は心配しないの」と書いてあるのです。
Naiin.com書店の「See from Sound」キャンペーンでは、デジタル技術を活用して録音可能なバナー広告を制作しました。人々が新刊本の内容をリレー式に録音し、目の不自由な人にも楽しめるようにしたのです=写真。
実はこうしたキャンペーンの多くは、政府や特定の公共団体・組織がお金を出して実施しているとは限りません。ブランドが通常の販売促進のためでなく、社会のためになるキャンペーンを自発的につくり出しているのです。
クリエーティビティーの懸け橋は、ビジネスと善意という二つの異なる世界をつなぎます。CDとブランドが善意で協力し合えば、世界をより良い場所に変えるキャンペーンがもっと増えていくと私は信じているのです。
(監修:電通イージス・ネットワーク事業局)