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中小企業は、心を動かすコンテンツメーカーNo.8

経営者SKY-HIの挑戦。信念から見えた、仕事の本質

2022/01/06

ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーなど幅広く活動を続けるアーティスト、SKY-HI。2020年、マネジメント&レーベルの新会社BMSG(ビーエムエスジー)を設立し、翌年にはオーディション番組「THE FIRST」を展開。同番組から誕生した7人組ボーイズグループ「BE:FIRST」は、ハイクオリティな歌・ダンス・ラップに加え、メンバー一人ひとりのドラマと楽曲センスが話題となり、各種チャートを席巻しています。

今回は、社歌コンテスト等企業と連携したコンテンツ開発や、“世界一安全なブラウザ「Brave」”のプロジェクトにも携わる電通のプランナー森本紘平が、経営者としてのSKY-HIさんに、仕事の本質について伺いました。

sky-hi

アーティストが抱える孤独や不安を取り除きたい

森本:BE:FIRSTのメジャーデビュー、おめでとうございます。今回はメジャーデビューに合わせて“世界一安全なブラウザ「Brave」”でのコミュニケーションを実施していただいたご縁で、SKY-HIさんが経営者として大切にしていることや、組織づくりの秘訣をお聞きしたいと思います。

SKY-HI:ありがとうございます。よろしくお願いします。

森本:BMSGは「才能を殺さないために。」をスローガンに掲げていますが、経営者としてどのようなスタンスでアーティストの方と向き合っているのでしょうか?

SKY-HI:やっぱり自分自身が現役のアーティストでもあるので、アーティストが持つ孤独や不安はすごく分かるんです。どんなに才能があって信念を強く持っている人でも、ささいなきっかけで自信が大きく揺らいでしまったり、一度ブレイクしてから停滞した時に、気持ちを保てずに辞めてしまう人も多い。

音楽は無形物ですから、アーティストは作り続けることでしかスタイルを確立できません。だからこそ、「自分は大丈夫だ」と自信を持てるようにサポートすること、または不安を抱えたりそれを吐露したりするのは決して悪いことではないと思わせてあげること、これを一番大切にしています。

森本:アーティストをサポートする上で、特に課題を感じていることはありますか?

SKY-HI:日本はメンタルヘルス後進国だとすごく感じます。会社経営のために日々いろいろなところから知見を集めているのですが、メンタルヘルスの領域に関しては即効性のある解決策が見つかっていません。これは自分たちで作らないといけないと思いました。

例えば、アメリカの友達と話していると「どこのメンタルクリニックが良かった?」「今日20時からメンタルクリニックの予約が入ってるんだ」といった会話が日常的に交わされます。日本は気軽に話せるような環境じゃないですよね。芸能界に限らず、世の中のメンタルヘルスへの意識がもっと向上すべきだと思いますし、特に不特定多数の人に自分を曝け出すアーティストやアイドルに対して、メンタル面のサポートは絶対に欠かせないと思っています。

森本:なるほど、その中でBMSGはどのようなサポートを行なってきたのでしょうか?

SKY-HI:僕らの場合、たまたま合宿で1カ月間アーティストと一緒に過ごし、自分が本気でやっていることを彼らに信じてもらえたから、「この人は裏切らない」という信頼関係で何とか成り立っていると思っています。日頃から電話でも直接でもよく話をして、不安や悩みが大きくならないうちに解消や消化をできるように取り組んではいますが、彼らが信頼してくれていることに甘え続けるわけにはいかないので、3年以内にアーティストの孤独や不安をサポートする体制を明確につくり、完成させたいと考えています。

BMSGが「嘘なし」を追求し続ける理由

森本:全国の中小企業経営者の方とお話しする中で、やはり社員とのコミュニケーションやモチベーション維持に悩まれている方は多いと感じます。SKY-HIさんがアーティストと信頼関係を構築するために心がけていることはありますか?

SKY-HI:アーティストに対して嘘を付かないことですね。例えばクラウドファウンディングで4億5000万円の支援金が集まったことを数多くのメディアに取り上げていただきましたが、アーティスト活動においては本当に使い方を冷静に考えないと一瞬でなくなってしまう金額です。でも、アーティストからすると会社にすごくお金があるように感じるじゃないですか。だから、ミュージックビデオの制作費や広告費、オフィススペースの設立などにどのくらいかかるのかをできる限り丁寧に説明するようにしています。

森本:ありのままを伝えるってすごく大切ですよね。社員との距離感に悩まれている経営者の方も少なくありませんが、何事も正直に曝け出すのは有効な解決策の一つなのかなと。

SKY-HI:会社経営自体が初めてのチャレンジで、日々学びながら試行錯誤している段階。そんな自分に今すぐできることは、とにかく信じてもらうことしかないと思うんです。そのためには、常に正直であることがとっても大切です。

森本:オーディション番組「THE FIRST」の審査基準である「クリエイティブファースト、クオリティファースト、アーティシズムファースト」にも通じる考え方ですよね。

SKY-HI:はい、視聴者との信頼関係においても、「嘘がない」ということを突き詰めたつもりです。オーディションの過程でも嘘のない本気の姿を見せてきましたし、楽曲も何かに迎合して表現の敷居を下げるといったことは一切しておりません。だからこそ、多くの反響を頂けた時は「世の中が嘘のないコンテンツを求めている」と感じて嬉しかったですね。

夢を追いかけて必死に頑張る人たちに、悪い人がいるはずない

森本:同時に、SKY-HIさんの言動から“演出のプロとは、配慮のプロである”ということを学びました。合宿中みんなが少し緊張しているシーンでお揃いの水筒をプレゼントしたり。本当に細かい部分なんですけど、そこにいる人たちが自然に心を開きたくなるような配慮をされているなと。

SKY-HI:やっぱり合宿中は寒いし、楽しいことばかりじゃないのですが、一人でも「帰りたいな」って思ってしまったら自分の責任じゃないですか。どうすればみんなが不安を感じずにモチベーションを高く保てるかを常に考えて行動していましたね。

森本:オーディションは選ぶのも大変だと思いますが、選ばれなかった人にもできる限り声をかけていらっしゃって、その配慮にも感動しました。

SKY-HI:企業の採用活動も同じだと思うのですが、スポーツのように点数でメダルを競い合うのとは少し性質が異なるんです。もし選ばれなかったのが何らかの部分で他の人たちより劣っていたからだとしても、3カ月後だったら違う結果になるかもしれない。まずこんな実績もない会社のオーディションに応募してくれたことが本当にありがたいですから、成否以上に今回のオーディションが3カ月後や1年後の成長のきっかけになってほしいと思っていました。

森本:やはり、コンテンツが生まれる過程で皆さんの人間性が見えるからこそ、見ている側の心を動かすものがあるのだと感じました。

SKY-HI:性善説みたいな話になっちゃうんですけど、全部を曝け出して、夢を追いかけて必死に頑張る人たちに、本質的に悪い人がいるはずないというか(笑)。不満や不安、嫉妬を生み出す環境が悪いのであって、ありのままで本気で取り組む姿を誰も馬鹿にしない空間を作れたことが、THE FIRSTの一番大きな成功だと思います。

森本:その考え方は仕事でも通じる部分があると思います。例えば、会社で近寄りにくいと思っている人も、実は口数が少ないとか、表情が硬いだけであって、よく話してみたら意外と良い人だった、というケースも少なくないですよね。

SKY-HI:人は他人を簡単に諦めがちですよね(笑)。この人は合わない、この人はダメだと思っても、諦めずに向き合い続けることで見えてくるものがあったり、新しい関係性が生まれたりすることもあります。もちろん、理想ばかり言っていられないのが現実だけど、その理想を本気で言い続けることで、本気で付いてきてくれるスタッフもいるので、とにかく自分の理想を信じて、言い続けようと思っています。

世の中は「善性」に向かって変わりつつある

森本:今回、プライバシーを守る、次世代高速ブラウザBraveの「New Tab Page」というデバイス全画面広告を提案し、メジャーデビューに合わせてご出稿いただきました。Braveはユーザー視点に立ち、“インターネットの世界をより良くする”という社会課題に挑む企業です。分野は違いますがBMSGと通じるところがあると感じたのですが、Braveをどのように捉えていますか?

bmsg:brave
Brave…Java Script 考案者・Mozilla/Firefox 共同創業者のブレンダン・アイク氏が立ち上げた世界一安全なブラウザ(ダブリン大学研究結果)。世界で4,600万人が利用(21年12月時点)。個人情報を守り、同意のない広告をブロック(ユーザーの意思で表示も可能)。高速なブラウジング、通信料・バッテリー消耗も防ぐ等ユーザー視点に立った画期的プロダクト。
https://try.bravesoftware.jp/ref/ja-traffic-apr-2021/w.html?refcode=IYW203

SKY-HI:今、世の中は“善性”に向かって変わり始めていると思うんです。差別や分断の問題と向き合う人や、即物的な欲望の解消だけでなく、持続可能性を自分ごととして考える人たちが増えています。ひと昔前のように、とにかく儲ければいいという考え方は徐々に受け入れられなくなっているのではないでしょうか。

おそらく、インターネットには功罪の両方があると思うのですが、Braveはその中で善性を打ち出していることが今の時代にマッチしていると感じました。世の中は善と悪が入り混じって成り立っているとは思うのですが、それでもクリエイターやプラットフォーマーが向かうべきは善性だと思うんです。その意味で、自分たちの思想とも通じるものがありますね。

森本:共感いただきありがとうございます。今後もBMSGの活動に注目していますが、SKY-HIさんご自身の心身の健康も大切にしてください。今後ともよろしくお願いします。

SKY-HI:ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。

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