採用課題は、経営課題。採用にもクリエイティビティを。No.11
47都道府県の学生が企業と地域課題を考えたインターンシップとは?
2022/03/10
就活環境が激変している昨今。企業と学生の両者にとってインターンシップの形骸化が課題でした。そこに新型コロナウイルスのまん延が重なったことによって、インターンシップのリアル開催が難しくなったことも絡み、キャリアの考え方や企業に関する情報の獲得に悩む学生は少なくないようです。
この課題に対し、電通若者研究部(電通ワカモン)(※1)は、新しいインターンシップを提案。エンカレッジ(※2)と共同で2020年に「47 INTERNSHIP」を開発・実施しました。
「47 INTERNSHIP」は、各都道府県から大学生(または大学院生)をそれぞれ1人ずつ選出、計47人の学生が参加できるオンライン形式のインターンシップで、就活の地域格差に一石を投じる狙いがあります。複数社の合同開催の枠組みにすることで、全国の学生は、日本をリードする企業群と、自宅にいながらにして接点を持ち、理解を深めることができます(詳しくはこちら)。
2021年は、8月25日から9月22日にかけて、第2回となる「47 INTERNSHIP」を開催しました。本記事では、インターンシップの内容とともに、参加した学生たちが得た学びや地方就活の現状について、電通ワカモンの三浦優氏が伝えます。
※1電通若者研究部(電通ワカモン):若者と社会の関係性をデザインすることをミッションとして掲げているプランニング&クリエイティブユニット。就職活動のリデザインを通して、若者と企業の新しい出会い方のプロデュースを行っている。
※2 エンカレッジ: 47都道府県の100を超える大学支部で活動するキャリア支援NPO法人。学生が運営の中心メンバーとなり、1対1で行うキャリア面談などを各大学支部が開催している。
学生と企業が手を組んで地域課題解決のアクションを見つける
「お住まいの地域、またはこの国が抱える社会課題で、あなた自身の経験や視点を踏まえ、心の底から取り組みたいこと/取り組んでいること」をエントリーシート(以下、ES)で問うた2021年度の本インターンシップ。日本全国約2200人の学生から応募が寄せられ、その中から都道府県ごとに各1人、計47人を選出しました。
本インターンシップには、各業界のリーディングカンパニーである、旭化成、岩谷産業、エイベックス、エヌ・ティ・ティ・データ、サイバーエージェント、ポーラ、三井住友銀行の7社が参加。「地域課題解決のためにできること」をテーマに、8月末から約1カ月間、学生と共に考えました。
この3日間以外でも、学生チームが行うディスカッションにはエンカレッジのメンターや参加企業の担当者が並走。最前線で仕事をしている現場からのフィードバックによって1カ月という短い期間でありながら、当初はディスカッションにあまりなれていなかった学生も活発な議論を交わし、新しい発見を得ている姿が見受けられました。
課題の言語化を精緻化できたインターン
インターンの集大成として、47人の参加学生それぞれが解決したい課題として掲げたものをマップにした「47都道府県課題MAP」と、インターンシップを通して考えたアクションをマップにした「47都道府県アクションプランMAP」をまとめました(下図は、MAPの一部です)。
いくつか例を挙げて紹介しましょう。
愛媛県代表の学生は、解決したい課題として「日本酒に潜むジェンダー意識」を挙げ、それに対するアクションとして、「カクテル専用の日本酒開発」を設定しました。
この学生は、インターンに参加する際のESに「国内の日本酒消費量減少を受けて、認定販売システムを構築し、消費量増加にむけて取り組んでいる」と記入。この学生に、「インターンを通じて、自らが掲げる課題に対し、どのような発見があったか」を尋ねたところ次のようなコメントが返ってきました。
岩手県代表の学生は、解決したい課題として「環境問題の意識へのハードル(の高さ)」を挙げ、それに対するアクションとして、「(岩手県内のフードロス解決に貢献する)クラフトビールのSNS発信」を設定。
この学生にも同様に、「インターンを通じて、自らが掲げる課題に対し、どのような発見があったか」を尋ねたところ次のようなコメントが返ってきました。
今回の「47 INTERNSHIP」は、学生が自分ごと化しやすい「自分の地域の課題」をテーマにすることで、積極的なディスカッションと深い思考が生まれました。結果、これまであまり地方学生に関わりのなかった大企業と地方学生の情報交換の機会になっただけでなく、学生自身にとって新しい発見や成長を感じてもらえることにつながったのではと考えています。
切磋琢磨し、刺激し合える全国の同期と出会える。就活格差を埋める貴重な機会に!
就活において、地域格差は大きな問題となっています。実際に学生たちはどのように感じているのか、インターシップに参加した学生たちに、「地方における就職活動に対する不満」を聞いてみると、
など、都市と地方では多くの面で格差が生じているようでした。
またほかにも、本インターンシップに参加する前の気持ちとして、
といったように、個性豊かな全国の学生と交わることに対して、多くの学生が不安を感じていたようです。
このように、インターネットやSNSの発展によってどこにいてもあらゆる情報が手に入る世界になったとはいえ、就活やキャリアなど自己実現に関わる意思決定に対してはまだまだ十分な情報が提供できておらず、地方の就活格差を埋めるまでには至っていないことがわかりました。しかし、「47 INTERNSHIP」に参加した学生からは、下記のような声が聞かれました。
私たちは学生にとって実りあるインターンにしたい、学生の考えに寄り添いたい、という思いをもって、プログラムの設計・実施をしました。インターン参加後にはどの学生も以前より自信を持たれているように感じました。
「47 INTERNSHIP」は地方就活生にとって、各業界のリーディングカンパニー7社と出会える場であることにとどまらず、直面する課題を自ら解決したいという強い熱量を持つ学生が全国から集うからこそ、より一層切磋琢磨できる同期と出会える機会になっていたようです。また、就職活動に直結する情報を提供することで、地方と都市の就活格差是正の一端を担うことができたのでは、と考えています。