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未来の難題を、こう解いていく by Future Creative CenterNo.15

社員の創造性を開花させるオフィス、ゼブラの「kaku lab.」とは

2022/04/22

電通のクリエイティブ横串組織「Future Creative Center(FCC)」は、広告の枠を超えて、未来づくりの領域をクリエイティビティでサポートする70人強による集団。この連載では、「Future×クリエイティビティ」をテーマに、センター員がこれからの取り組みについて語ります。

ゼブラといえば、さまざまな筆記具をつくってきた会社。そんなイメージを抱く人は多いかもしれません。しかし、同社が掲げているのは “筆記具をつくる会社”ではなく、 人間の“創造性の促進”です。それはゼブラのスローガンである「Open your imagination.」にも表れています。

創造性を促進する会社になるためには、まずはゼブラ社員が創造性を発揮する集団にならなければならない。そこで目をつけたのがオフィスのあり方であり、社員の創造性やアイデアを生む空間として、2021年9月に「kaku lab.」(カクラボ)が誕生しました。

kaku lab.の特徴は、ゼブラの事業を支える「書く」「描く」「画く」といった、さまざまな「kaku」を誘発するオフィスデザインです。

 

FCCは、このオフィスプロジェクトを推進。本記事では、ゼブラホールディングス 研究本部本部長の濵田知実氏と、オフィスデザインを担当したStudio Tokyo West代表取締役で建築家の瀬川翠氏、そして電通FCCグループ・クリエーティブ・ディレクターの吉川隼太氏が、kaku lab.プロジェクトを振り返りました。

濵田氏、瀬川氏、吉川氏
     ※この取材は、オンラインで行われました。

ミッションは「社員の創造性を開花させること」

濵田:kaku lab.のプロジェクトがスタートしたのは、2020年9月のことです。きっかけは、ゼブラの研究開発部門がゼブラホールディングスに移管すること。これを機にゼブラの社員がもっと創造性を発揮するにはどうすればよいか、考えていました。

その根底にあったのは、私たちの仕事は「筆記具製造」ではなく「文化創造」だという思いです。それはゼブラのスローガンである「Open your imagination.」にも表れています。筆記具は、人間の特性である“創造性”を刺激するきっかけを提供してきました。ものをつくるとき、必ずその手には筆記具があったはずです。それはデジタル化の進んだ今も同じで、書くことによって脳や視覚、あるいは聴覚などが刺激され、何かが生み出されることも多いのではないでしょうか。

ゼブラは創造性を担う会社だからこそ、まずはゼブラ社員の創造性を開花させなければなりません。どうすべきか検討しているタイミングで、FCCの皆さんからいろいろな提案をいただいたのが始まりでしたね。

吉川:奇跡的にタイミングが合致しましたね。FCCからはゼブラの企業理念を体現するために、どんな企業活動を行えばいいのか、具体的なアクションをいくつか提案させていただきました。その一つに、オフィスのリニューアルがありました。

オフィスリニューアルを提案したのは、人間の創造性を開花させる場所として、オフィスが重要だと思ったからです。2020年9月はシェアオフィスやリモートワークが普及した時期ですが、いろいろなメンバーが集い、創発する場所としてのオフィス機能は欠かせません。オフィスが「Open your imagination.」を体現する場所になればいいな、と提案したのです。

提案したら、「まさにリニューアルにぴったりの場所がある」とそのオフィスにご案内いただいて、すぐにプロジェクトが動き始めました。

瀬川:そこからオフィスのデザインを考えはじめて、さまざまな「kaku」を誘発するオフィスをつくることになりましたよね。このデザインの原点となったのは、濵田さんの「『書く』を真ん中にしたオフィスにしたい」という言葉だったんです。

濵田:そんな話をした背景には、ゼブラの社員がちょっとしたメモでもPCやモバイルに入力する状況が増えていたこともあります。もちろんその方が便利な場合もあるでしょうが、ゼブラこそが「書くことで人の創造性を開花できる」と信じている会社であるべきであり、それを実践している会社であるべきだと思いました。

そんな思いから、テーブルや壁など「ありとあらゆるところに書けるオフィスにしてほしい」とむちゃなお願いをしてしまいました(笑)。ただ、そうやってできたオフィスは、きっと会社から社員に対しての、「書く力を信じよう」というメッセージにもなると考えたのです。

紙のような巨大テーブルに託した、オフィスの意味を伝えるアイコンの役割

瀬川:それからは、社員の方が書きたくなるオフィスのデザインを考えていきました。テーブルや壁を「書ける」ようにするだけでなく「書きたくなる」にはどうすればいいか。FCCのチームと突き詰めていきましたよね。

その中で出たのが、オフィスのコンセプトでもある「writing communication」という言葉です。例えば異なる部署の社員同士が立ち話をするとき、そこについ書きたくなるような仕掛けが用意されていれば、その場でアイデアを伸ばしていける。それが創造性の発端になるのではと。そんな場所をオフィスのあらゆるところにつくれれば、と思いました。

デザインラフ

吉川:writing communicationのほかに、「社員はペン、オフィスはノート」という考えもあって。社員がアイデアを生み出すペンだとしたら、オフィスはノートのような場。これもkaku lab.の重要な考え方ですよね。

瀬川:今回、社員の方にもたくさんヒアリングしたのですが、皆さん本当にアイデアに富んだ方ばかりで。それもあって、このオフィスはノートとしてデザインするのがいいね、という話になりました。「こういう書く場所があれば」と、どんどん提案いただきましたよね。その議論を手がかりに、空間に落とし込んでいった形です。

吉川:そうして、1年後の2021年9月にオフィスが出来上がりました。入り口には、このオフィスへの思いを明文化しています。また、オフィスエントランスにあるカラフルなシマウマは、ゼブラの従業員のみなさまが描いたものになっています。シマウマはゼブラの企業ロゴになっていますが、そこには創業者の、「このシマウマのように、全社員が固く団結する」という思いが込められています。

入口画像

瀬川:オフィスは神楽坂にあるので、カラーとライティングは街の情緒あふれる雰囲気と調和したデザインに。歴史・文化の重なりの見える地域だからこそ、できるだけ元の建物の個性を残し、新たなデザインと共存するように設計しました。

デザイン 神楽坂風

吉川:そしてオフィス内は、ありとあらゆる場所で書けるように、いろいろな「kaku」を分散しています。その象徴が、紙をモチーフにした巨大な「ノートテーブル」ですね。

ノートテーブル

ひとくちに書くといっても、座って書いたり立って書いたり、さまざまですよね。また、テーブルが斜めの方が良いこともある。そこで、多様なkakuに適するテーブルを作ったんです。このテーブルにも直接書けますし、周囲の壁にも書けます。

瀬川:実はこのテーブルが一番苦労しましたよね。1枚の紙のように薄くなめらかなテーブルを実現するために、構造や溶接、搬入といった技術的なハードルがあって。

吉川:もちろん、シンプルなテーブルなら苦労はないのですが、kaku lab.としてのメッセージを強く打ち出すには、象徴的なアイコンが必要だと思いました。社員の方がこのオフィスの意味を受け取るアイコンです。とはいえ、ゼブラさんがこのテーブルの案をOKしてくださるかは不安でしたが……(笑)。

瀬川:でも実際は、濵田さんから「このテーブルでいきましょう」と言っていただいて。「ただシンプルで使いやすいことと、創造性を高めることはイコールではない」という濵田さんの言葉がとても印象的でした。

濵田:このテーブルを見た瞬間、社員や外部の人にひと目で何かを感じていただけると思うので。このテーブルを置くことに大きな意味があると思いました。

筆記具もオフィスも、ものづくりの“芯”となるものは変わらない

吉川:オフィスが出来上がって、社員の方々の行動や仕事の仕方はどうですか。

濵田:壁にメモを書きながらミーティングしたり、立ち話のメモに壁を使ったりする社員もいますね。ホワイトボードは1枚が長く横につながっているものもあり、ボードいっぱいにメモしながら議論しているチームもいます。最近は、ボードのメモを写真に撮ってパワーポイントの資料に貼り付けている人もいて。それはいい使い方だな、と。

ラウンジ

吉川:僕が個人的に気に入っているのは「ノート壁」です。収納機能のある壁で、引き出すとベンチになって書きながら考えられるし、すべての収納を引き出せば商品を並べることもできます。メディア取材など、外部の人を呼ぶときも、この仕掛けでゼブラが創造性を大切にしていることを伝えられるかな、と。

ノート壁

濵田:まさに今は学生の就活時期で、このオフィスを使っています。kaku lab.を通じて学生にゼブラの理念を伝えられると思いますし、今後は、ここで社外の方とアイデアを出し合うなど、オープンイノベーションの場にもしていきたいですね。

吉川:お仕事する中で知ったのですが、ゼブラの持つ技術はいろいろな産業に使える可能性があるんですよね。例えば、ペンの機構を他の商品に応用するなど、kaku lab.が、そういった創発の場にもなればうれしいですね。

濵田:ゼブラとしても、kaku lab.は今回つくったオフィスのみを指すのではなく、ゼブラ共通の創造拠点の名称としています。日本各地にあるゼブラのネットワークにもkaku lab.は存在しますし、海外の支店や工場にもkaku lab.がある、という位置付けです。

吉川:僕らクリエイターにとって、作ったものが未来に残るのはうれしいですし、何より、このオフィスは企業そのものの成長の原動力になります。そこに意義を感じながら、この仕事を進めてきました。

瀬川:私も、人の創造性を促進する会社の未来を一緒にデザインできたのが楽しかったですし、思いの詰まったプロジェクトになりました。今後、kaku lab.ならではの創造が生まれることを願っています。

濵田:ありがとうございます。オフィスをつくるという仕事は私にとって初めてで、勉強することもたくさんありました。ただ、対象がオフィスでも、ものづくりの“芯”となる考え方は変わりません。それは「使う人が誰かを考える」ということです。

その誰かを思い浮かべて、その人の生活をより良くしたいと自分の創造性を働かせる。これがものづくりです。kaku lab.も、そんなものづくりのプロセスで行うことができたと思っています。

kaku lab.

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